紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
リバランスは、株初心者の方にはあまり馴染みのない用語かもしれませんが、簡単に言うと「ポートフォリオ(分散投資する際の投資先)を構成する銘柄を入れ替えること」です。
リバランスは、個人のポートフォリオでも行われますが、ファンドなどの大口投資家も行います。
大口投資家がリバランスを行うと、銘柄の入れ替えに伴って大量の売買が発生するため、相場が大きく動きがちです。
この動きを利用すれば、利益を上げるチャンスになると思いませんか?
では、どうすればその動きを察知できるのか。
そのヒントは「株価指数のリバランス」にあります。
今回は、株価指数のリバランスとは何なのかといった疑問や、株価指数のリバランスを銘柄選択に役立てて利益を出す方法についてを解説します。
- リバランスとは何かがわかる
- 株価指数のリバランスが行われるタイミングや構成銘柄の調べ方がわかる
- 株価指数のリバランスが行われたときに利益を出す方法がわかる
株価指数のリバランスとは?
日経平均株価やTOPIXといった株価指数は、対象の銘柄を入れ替えや追加を行うことがあります。
それが、「株価指数のリバランス」です。
株価指数のリバランスがあると、相場の状況に関係なくファンドなどの機関投資家が機械的に買いや売りを出します。
この動きに便乗すれば、利益を上げるチャンスともなるわけです。
ただ、具体的な手法を理解する前に、主な株価指数の特徴やリバランスについて知っておく必要があるため、それぞれ説明していきたいと思います。
日経平均株価のリバランス
日経平均株価は、日本を代表する225銘柄が対象の指数です。日本国内でもっとも有名な指数ということもあって、初心者でも知っている人が多いでしょう。
日経平均株価は、225銘柄の平均株価です。そのため、特定の銘柄の株価が上がれば、日経平均に与える影響も大きくなっていくという特徴があります。
少し難しいように思えるかもしれませんが、簡単に言えば、一部の強い銘柄の影響を受けやすいということです。
対象の銘柄は、年1回見直されてリバランスされるため、新しく組み入れられる銘柄と、除外される銘柄が登場します。
リバランスされる銘柄は、毎年9月に日経新聞社によって発表され、10月に入れ替えが行われます。
日経平均株価の構成銘柄は以下から確認できます。
日経平均プロファィル|構成銘柄一覧:日経平均株価
TOPIXのリバランス
TOPIXは日経平均株価と並んで有名な指数です。
東京証券取引所の1部に上場している全銘柄の株価から計算されます。
TOPIXの計算方法は日経平均と違って、それぞれの銘柄の時価総額を考慮して計算しているため、時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすいという特徴があります。
東証1部に上場した銘柄は、すべてTOPIXに組み入れられるため、TOPIXのリバランスは年に何度もあります。
例えば、
- 新規で東証1部に上場する
- マザーズなどの新興市場や東証2部からの東証1部に昇格する
など、さまざまなパターンが存在します。
TOPIXの構成銘柄別ウエイト等の情報は、以下から確認できます。
JPX日本取引所グループサービス|TOPIX(東証株価指数)
JPX日経400のリバランス
JPX日経400は、2014年から始まった新しいものですが、注目度が高まってきているため覚えておきたい指数の一つです。
JPX日経400が日経平均やTOPIXと違う点は、投資家にとって魅力的と考えられる銘柄を選んでいるところ。
株主から受け取った資本を有効活用できているかどうかや、株主を意識した経営ができているかどうかなど、一定の基準をもとに東京証券取引所や日本経済新聞社が約400銘柄を選んでいます。
そのため、株主への還元を大切にする海外の投資家から注目されています。
リバランスは、毎年8月初旬に採用銘柄と除外銘柄が発表され、8月末ごろに入れ替えが行われるのが恒例です。
多いときには、数十銘柄も入れ替えされることもあります。
JPX400の構成銘柄は、以下から確認できます。
日経平均プロフィル|構成銘柄一覧:JPX日経インデックス400日経平均プロフィル
株価指数のリバランスを利用して利益を出す方法とは?
株価指数のリバランスを銘柄選択に利用すれば、利益を上げたり、リスクを避たりすることができます。
なぜかと言えば、先ほども説明したように、インデックスファンドなどによる大量の売買が発生するからです。
そもそもインデックスファンドは、株価指数と同じような値動きをするように作られた投資信託。
構成銘柄もほぼ同じのため、日経平均やTOPIXの対象銘柄が入れ替えられると、ファンドを運用する側もそれに合わせて売買する必要があります。
では、それらの銘柄をどうやって狙うのかを見ていきましょう。
日経平均株価に新しく組み入れられる銘柄を狙う
わかりやすい方法としては、日経平均株価に新しく組み入れられる銘柄を買うことです。
この場合のコツとしては、想定される構成率が大きい銘柄を狙うこと。
構成率とは、日経平均株価を100%とした場合に、その銘柄が何%のウエイトを占めるのかを表した数値です。
この構成率が大きいほど、日経平均連動型のファンドなどの買いが増えることになり、株価が上昇しやすくなります。
例えば、次のようなケースがわかりやすいでしょう。
これは、2017年10月2日に新しく日経平均株価に組み入れられた、リクルートホールディングス〈6098〉の日足チャートです。
日経平均への採用が発表された翌日の9月6日には、買いが大量に入って、勢いよく株価が上昇してスタート。
その後も株価は上昇し続け、発表前に2,200円ほどだった株価が2,800円近辺までになりました。
これには、リクルートホールディングスの想定構成率が大きかったことも影響しているでしょう。
大量に買わなければいけないファンドの買い需要が続いたと考えることもできます。
基準を満たして東証1部に組み入れられそうな銘柄を先回り
新しく組み入れられる銘柄をあらかじめ仕込んでおく方法もあります。
例えば、東証2部やマザーズ、ジャスダックなどから東証1部に昇格する銘柄を先回して買っておくこともその一つ。
東証1部に昇格するということは、TOPIXに組み入れられることになります。
その昇格が発表される前に仕込んでおき、発表後に売れば、低リスクで利益を上げられるわけです。
下のチャートは、2018年11月26日に東証1部への昇格が発表された、サニーサイドアップ〈2180〉の日足チャートです。
東証2部に上場していましたが、1部への昇格が発表された翌日の11月27日には高値でスタート。
その後、年末の売りをこなしながらも、年明け後には約1.5倍まで株価が上昇していきました。
このように1部への昇格が発表される前に仕込んでおけば、その後の株価上昇により利益が出せたことになります。
東証1部へ昇格することを「一部指定」と言いますが、その条件は決まっています。
- 業績や時価総額などの一部指定条件を満たしそうか。
- 企業側が1部昇格を狙っているか。
この2点を重点的に見れば、先回りして予測することは可能です。
一部指定の条件は下記を見ればわかります。
業績面の分析や経営体制の分析など、知識や手間も必要ですが、それだけに先回りが有効です。
実践してみる価値はあるでしょう。
なお、JPX日経400についても採用基準が決まっているので、同じように先回りすることが可能です。
JPX日経400の採用基準は下記に書かれています。
リバランス銘柄投資時の注意点: 除外銘柄の売りを被らないようにする
日経平均やJPX日経400は、リバランスによって除外される銘柄もあります。
そういった除外銘柄にはファンドによる機械的な売りが発生することも多いため、損失を出さないように注意する必要があります。
利益を上げるためには、損失を減らすことも大切です。
指数に組み入れられる銘柄のチェックは大切ですが、指数から除外される銘柄の情報もチェックしておくべきでしょう。
まとめ
日経平均やTOPIXといった株価指指数の銘柄入れ替え(リバランス)は、利益を上げたり、銘柄を選んだりするための大きなヒントになります。
今回紹介したような視点を持って株式相場を観察すれば、手法の引き出しも増えることでしょう。
もちろん、相場に100%はないため、必ず上昇するわけではありません。
ただ、機械的に売り買いせざるをえないファンドの動きは、相場に歪みをもたらします。
そういった歪みを利用するのが、手法であり、株式投資の攻略法でもあったりするのです。
ぜひ、皆さんもこの知識を活用して、取引の幅を広げてもらえればと思います。
紫垣 英昭
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