通信サービス株は高収益・高配当の優良セクター!「5G」でも成長期待の10銘柄

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

携帯キャリアを中心とする通信サービス株は、高収益・高配当が特徴の優良セクターとなっています。

特に、携帯電話キャリア大手3社(NTTドコモ(NTT)、KDDI、ソフトバンク)はディフェンシブ高配当銘柄の筆頭株となっており、投資初心者の投資デビューにおすすめの銘柄の一つです。

また、通信サービス株は次世代通信規格「5G」が2020年春から始まったことでも成長が期待されます。

一方、菅政権の携帯電話料金値下げは逆風ですが、業績・株価に大きなマイナス面は出ていません。

今回は、通信サービス株の概要について解説した上で、代表的な通信サービス株10銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 通信サービス株の概要についてわかる
  • 代表的な通信サービス株10銘柄についてチャート付きでわかる
  • 必ず押さえておきたい通信サービス株3社がわかる

通信サービス株とは?

携帯電話やインターネットを提供している通信サービス株について押さえておきましょう。

通信サービス株の概要

通信サービス株とは、携帯電話やインターネットといった通信サービスを提供している銘柄を総称するセクター・テーマ株です。

通信サービスを大別すると、携帯電話回線とインターネット回線(光回線)の2つに分けられます。

総務省が2020年12月8日に発表した統計によると、携帯電話回線を含む移動系通信の契約数は1億9,049万回線、インターネット回線を含む固定系ブロードバンドサービスの契約数は4,196万回線となっています。

出典:総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000723924.pdf)

携帯電話回線を含む移動系通信の契約数シェアは次のようになっており、大手キャリア3社の寡占状態であることが分かります。

移動系通信事業者

市場シェア

NTTドコモ

36.9%(MVNO含めると42.5%)

KDDI

27.6%(MVNO含めると31.4%)

ソフトバンク

21.5%(MVNO含めると25.5%)

楽天モバイル

0.6%

MVNO

13.4%

出典:総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000723924.pdf)

格安スマホことMVNOのシェアも13.4%まで増加してきており、契約数で見ると前年同期比+11.2%の2,560万回線に上っています。

MVNOの事業者別シェアは次の通りです。

MVNO事業者

MVNO市場シェア

楽天モバイル

15.2%

インターネットイニシアティブ

14.0%

NTTコミュニケーションズ

11.0%

オプテージ

8.9%

LINEモバイル

6.4%

出典:総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000723924.pdf)

光回線(FTTH)を含む固定系ブロードバンドサービスの契約数は4,196万回線に上っており、事業者別のシェアは次のようになっています。

移動系通信事業者

市場シェア

NTT東日本

30.2%

NTT西日本

23.5%

KDDI

21.6%

オプテージ

3.7%

その他電力系事業者

3.4%

出典:総務省(https://www.soumu.go.jp/main_content/000723924.pdf)

インターネット回線は、NTTとKDDIの2強状態であることが分かります。

通信サービス株は高収益・高配当の優良セクター

携帯キャリア3社を中心とする通信サービス株の特徴を一言で述べると、高収益・高配当の優良セクターであるということです。

携帯キャリア3社の2020年度決算についてまとめると、次のようになっています。

携帯キャリア

売上高

営業利益

利益率

NTTドコモ

4兆7,252億円

9,132億円

19.32%

KDDI

5兆3,126億円

1兆374億円

19.52%

ソフトバンク

5兆2,055億円

9,708億円

18.64%

菅政権による携帯電話料金値下げで通信事業はやや落ち込む一方、Eコマースなどのコンシューマー向けサービスや法人向けサービスが新型コロナ禍で拡大したことから、携帯キャリア3社は増収増益となっており、利益率は各社とも約20%に上っています。

トヨタの利益率は約8%、ソニーの利益率は約10%であることからすると、携帯キャリア3社の高収益体質は明らかです。

また、携帯キャリア3社は高収益を株主にしっかりと還元しており、配当利回りは次のようになっています。

通信キャリア株

配当利回り

【9432】NTT(NTTドコモを傘下)

3.80%

【9433】KDDI

3.65%

【9434】ソフトバンク

5.92%

※配当利回りは2021年6月29日終値時点で算出

いずれも高配当株と呼ばれる配当利回り3%を大きく上回っていることが分かります。

そして、もはや現代社会に欠かせない社会インフラとなった携帯キャリアは、どのような不況が到来しようと業績が大きく落ち込むことはないことから、安定したディフェンシブ銘柄でもあります。

携帯キャリア3社は高収益・高配当の優良セクターであり、値下がりリスクが小さいディフェンシブ銘柄であることから、投資初心者の投資デビューに最もおすすめできる銘柄の1つです。

通信サービス株関連の注目ニュース

通信サービス株の注目ニュースについて押さえておきましょう。

次世代通信規格「5G」

2020年春から、日本でも次世代通信規格「5G(ファイブジー)」のサービス提供が始まりました。

通信産業の成長テーマとして、次世代通信規格「5G」は必ず押さえておかなければいけないトピックです。

5Gでは、高速・大容量・低遅延・多数同時通信が可能となり、前規格の4Gに比べて100倍以上の高速通信が実現されます。

5Gが実現する高速で大容量の安定した通信は、新型コロナ禍で広まったテレワークや遠隔教育でも欠かせないものです。

5Gに対応している5Gスマホは10万円以上の高価格帯スマホが並ぶため、消費者にとってはやや手が出しづらいことも指摘されています。

ただ、2020年10月にはアップルから初の5Gスマホ「iPhone12」が発売されており、売れ行きは好調です。

2021年以後は、社会のIoT化がさらに進むことは確実であり、IoTに欠かせない通信環境として、5Gは通信産業をけん引することが期待されます。

携帯電話料金の値下げ

2020年9月に発足した菅政権は、携帯電話料金値下げを目玉政策の一つに掲げたことから、2020年8月から9月に掛けて、通信サービス株は一時的に大きく売られる展開となりました。

その後、携帯キャリア各社は、携帯電話料金値下げに対応したプランを次々と発表し、大きな話題となりました。

NTTドコモの「ahamo」、auの「povo」、ソフトバンクの「LINEMO」、さらには携帯キャリアに参入した楽天モバイルは1GBまで無料となるプランを発表。

また、携帯電話料金値下げの余波はMVNO各社にも影響しており、格安スマホもさらに安くなっています。

携帯電話料金の値下げは、通信サービス各社にとって逆風となったことは間違いありませんが、各社の企業努力によって、業績や株価に大きな影響が出る事態にはなっていません。

通信サービス株10選!

携帯キャリア3社を中心に、代表的な通信サービス株を10銘柄見ていきましょう。

【9432】NTT(日本電信電話)

国内通信最大手の【9432】NTT(日本電信電話)は、日本株を代表する通信サービス株です。

同社は光回線で圧倒的な国内シェアを誇っており、2020年11月にはNTTドコモを完全子会社化しました。

【9432】NTT(日本電信電話)の月足チャート

NTTの株価は、この5年間は横ばいです。

ただ、配当利回り4%弱の高配当株であるため、仮に保有していれば配当金で大幅なプラスになっていました。

ディフェンシブ・高配当・高収益と3拍子揃った銘柄です。

投資初心者の投資デビューにも絶好の銘柄と言ってよいでしょう。

【9433】KDDI

総合通信企業の【9433】KDDIは、携帯キャリア「au」で知られる代表的な通信セクター株です。

同社は、携帯キャリア「au」が広く知られていますが、インターネット回線でもNTTに次ぐ高いシェアを誇っています。

【9433】KDDIの月足チャート

KDDIの株価は、この5年間は横ばいと、NTTとほぼ同じ値動きとなっています。

とはいえ、直近では上昇しており、上場来高値を更新中です。

配当利回り4%弱の高配当株であり、NTTと並んで投資初心者にもおすすめの銘柄です。

【9434】ソフトバンク

携帯キャリアの一角である【9434】ソフトバンクは、携帯キャリア3社の中でも高配当が特徴の通信サービス株です。

なお、同社は2018年12月にソフトバンクグループからIPOした銘柄となっています。

この上場以後、【9984】ソフトバンクグループは世界的投資会社、【9434】ソフトバンクは携帯会社という位置付けになったことに注意しておきましょう。

【9434】ソフトバンクの月足チャート

ソフトバンクの株価は、2018年12月には公募価格1,500円でIPOとなりましたが、その後は公募価格をなかなか超えられない展開が続いています。

とはいえ、同社の配当利回りは6%弱となっているため、IPOから保有していれば配当金でトータルプラスになっていた計算です。

IPOが公募割れとなったことから、あまり良くないイメージを持つ個人投資家も少なくありませんが、日本株の中でも屈指のディフェンシブ高配当銘柄であることは間違いなく、投資初心者におすすめの銘柄です。

【4755】楽天グループ

ネット通販「楽天市場」や金融サービス「楽天カード」「楽天証券」などを展開する【4755】楽天グループは、第4の携帯キャリアとして参入したことで通信サービス株としても注目の銘柄となっています。

ただ、同社の2021年度第1四半期決算は、売上高が前年同期比+18.1%の3,915億円となったものの、営業利益は-373億円の赤字となっており、通信事業への先行投資が響いている状況です。

【4755】楽天グループの月足チャート

楽天グループの株価は、長期的には厳しい状況となっています。

配当金も無配となっており、携帯キャリア3社に比べると配当金や株価の安定性において難があると言わざるを得ません。

【3774】インターネットイニシアティブ

NTT系のネット接続サービス大手【3774】インターネットイニシアティブは、MVNO市場で存在感がある通信サービス株です。

同社は、MVNO市場では楽天モバイルに次ぐシェアを誇っており、MVNO関連銘柄の代表的な銘柄となっています。

【3774】インターネットイニシアティブの月足チャート

インターネットイニシアティブの株価は、MVNOの利用者増をなぞるような成長曲線となっています。

【9503】関西電力

西日本最大の電力会社【9503】関西電力は、MVNO・光回線で根強いシェアを持つオプテージの株式を100%保有しています。

同社の完全子会社であるオプテージは、光回線サービス「eo(イオ)」、MVNOサービス「mineo(マイネオ)」を提供していることで知られています。

【9503】関西電力の月足チャート

関西電力の株価は厳しい状況が続いています。

同社はオプテージ社を傘下に置いているものの、市場では電力株としてみなされており、通信サービス株として買われているとは言えない状況です。

【4689】Zホールディングス

ネットポータル最大手「Yahoo!JAPAN」を中心にネット事業を展開する【4689】Zホールディングスは、2021年3月にLINEを傘下にしており、MVNO「LINEモバイル」を展開している通信サービス株でもあります。

【4689】Zホールディングスの月足チャート

Zホールディングスの株価は、2019年までは停滞していましたが、2020年の新型コロナ相場で大きく買われました。

【9419】ワイヤレスゲート

モバイルインターネットサービス「WiMAX」を展開する【9419】ワイヤレスゲートは、かつて急騰していた通信サービス株です。

【9419】ワイヤレスゲートの月足チャート

ワイヤレスゲートの株価は、2014年7月に6,580円の高値を付けてからは暴落し、2021年6月時点では約440円となっています。

【9424】日本通信

MVNOサービスのパイオニア企業【9424】日本通信は、かつてMVNO関連銘柄として急騰していた通信サービス株です。

【9424】日本通信の月足チャート

日本通信の株価は、MVNOが登場したばかりで注目されていた2014年7月には1,268円まで急騰しました。

しかし、その後、同社はMVNOのシェア争いに敗北し、株価も大暴落となっています。

【9436】沖縄セルラー電話

沖縄県で携帯電話シェアトップを誇る【9436】沖縄セルラー電話は、成長を続けている通信サービス株です。

【9436】沖縄セルラー電話の月足チャート

沖縄セルラー電話の株価は、右肩上がりの成長を続けていることが分かります。

まとめ

今回は、通信サービス株の概要について解説した上で、代表的な通信サービス株10銘柄についてチャート付きでご紹介してきました。

通信サービス株としては、【9432】NTT(NTTドコモを傘下)、【9433】KDDI、【9434】ソフトバンクの携帯キャリア3社を必ず押さえておきましょう。

携帯キャリア3社は、日本株の中でも高収益・高配当・ディフェンシブの代表的な銘柄であり、投資初心者にもおすすめの銘柄です。

第4の携帯キャリアとして参入した【4755】楽天グループにも注目が集まりますが、携帯キャリア3社に比べると、業績・株価ともにまだ不安定な状況と言わざるを得ません。

また、【3774】インターネットイニシアティブを始めとするMVNO事業者もシェアを拡大しており、株式市場でも注目される通信サービス株の一角となっています。

紫垣 英昭