紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
株式投資をはじめてみようと証券口座を開設して、さぁ株を売買するぞ!と意気込んでいるあなた。
ちょっと待ってください。
株の売買というのは、注文を出したらすぐに売買が成立するわけではないのはご存知ですか?
売買成立の仕組みを知っておかないと
- 「なんで注文を出したのに売買が成立しないんだろう?」
- 「こんな値段で売買するつもりじゃなかったのに…」
ということになってしまう可能性もあります。
「どのように売買が成立するのか」という仕組みをしっかり理解して、「どのように注文を出せば良いのか」を学ぶことで思いどおりの売買ができるようになります。
今回は、「株式投資で売買が成立する仕組み」について、初心者の方でも理解できるように、簡単に分かりやすく説明していきたいと思います。
- 株式投資で売買が成立する仕組みがわかる
- 注文の仕方を学べる
- 注文を出すときの注意点がわかる
株の売買はどうやってするの?
まずはじめに、株の売買の基本的なことから説明します。
株の売買は、証券取引所で行われますが、投資家が直接証券取引所に注文を出す訳ではなく、証券会社が間に入って取次ぐという形になります。
そのため、投資家はまず証券会社に口座を開設し、売買するための資金をその口座に入金することによって、注文が出せるようになります。
株が売買できる取引時間
日本には、証券取引所がいくつかあるのですが、上場企業数や取引量が圧倒的に多いのが「東京証券取引所」ですので、ここからは、東京証券取引所をメインに説明を進めていきます。
ちなみに、東証1部、東証2部、マザーズ、JASDAQなどと呼ばれている市場は、全て東京証券取引所が開設している市場です。
東京証券取引所で株を売買できる時間は、平日の9:00~15:00です。
昼休憩(11:30~12:30)を挟んで、午前の取引時間を「前場(ぜんば)」、午後の取引時間を「後場(ごば)」といい、取引ができる時間を「立会時間」あるいは「ザラ場(ざらば)」といいます。
そして、取引時間の開始時を「寄付(よりつき)」、終了時を「引け(ひけ)」といい、詳細は以下のようになります。
注文を出すにあたって
インターネットで株の売買をする場合は、通常は、証券会社が用意している「取引ツール」を使いますので、実際の画面を見ながら説明していきます。
下図は、SBI証券の「HYPER SBI」という取引ツールです。
「板情報」「歩み値」「注文画面」を表示しています。
※ツールによって画面構成が異なります。
板情報とは?
株の売買は、「売りたい人の値段」と「買いたい人の値段」が一致したときに成立します。
板情報は、売りたい人と買いたい人がそれぞれ、「どれくらいの値段でどれくらいの株数の注文を入れているのか」という情報を表示したものです。
下図は、先ほどの画面の板情報の部分を拡大したものです。
- 左側の列「それぞれの値段に応じた売り注文の株数」
- 中央の列「株の値段」
- 右側の列「それぞれの値段に応じた買い注文の株数」
という構成になっています。
この板情報から、例えば
「5385円で株を売りたい人達が、合計で32200株の売り注文を出している」
「5383円で株を買いたい人達が、合計で200株の買い注文を出している」
ということが分かります。
そして、売り注文と買い注文の値段が一致して売買が成立したら、その分の株数が板情報から減っていきます。
したがって、この板情報を見ることによって「どれくらいの値段で注文を出せば売買が成立するのか」ということが判断できます。
歩み値(あゆみね)とは?
先ほどの板情報では「出された注文の値段と株数」を見ることができましたが、歩み値は「成立した売買の値段と株数」を見ることができます。
下図は、同じく歩み値の部分を拡大したものですが、左側の列が「売買が成立した時間」、中央の列が「売買が成立した値段」、右側の列が「売買が成立した株数」という構成になっています。
※売買が成立することを「約定(やくじょう)」といいます。
※売買が成立した株数のことを「出来高(できだか)」といいます。
この歩み値から、例えば「15時に5385円で605000株の売買が成立した」ということが分かります。
注文を出す際の注意点
注文を出す際には、いくつかのルールがあります。
下図は注文画面を拡大したものです。
こちらを見ながら説明していきます。
水色の丸で囲まれた部分には「100株単位」「4385.0 – 6385.0円」と表示されています。
売買単位(ばいばいたんい)
注文を出す際には、銘柄ごとに株数の最低売買単位が決まっており、この最低売買単位のことを「単元(たんげん)」といいます。
上図の場合は「100株単位」となっていますので、100株単位で注文を出さなければなりません。
板情報や歩み値を見ても、100株単位になっているのが分かると思います。
制限値幅(せいげんねはば)
株の売買は、価格が一致したときに成立しますので、注文が「売り」あるいは「買い」に偏ってくると成立する値段が動いていきます。
しかし、1日の売買における株価の値幅には制限があり、この制限を越えた値段での注文は出すことができません。
この値幅の制限のことを「制限値幅」といいます。
制限値幅は、前日の終値などを基準にしており、詳細は「日本取引所」のホームページで確認することができます。
http://www.jpx.co.jp/equities/trading/domestic/06.html
上図の場合は「4385.0 – 6385.0円」となっていますので、4385円から6385円の間の値段で注文を出さなければなりません。
呼値(よびね)
株価には、値段の刻みの幅が決まっていて、その刻み幅を「呼値」といい、詳細は「日本取引所」のホームページで確認することができます。
http://www.jpx.co.jp/equities/trading/domestic/07.html
注文を出す際には、この呼値の値幅より小さい単位の値段で注文を出すことができません。
例えば、呼値が10円だった場合、1円単位での注文は出せないので、5,000円の上の値段は5,010円になるという感じです。
呼値は、株の値段と銘柄の種類(TOPIX100構成銘柄とその他の銘柄)によって決まっていますので、今回ご紹介している取引ツールのように、画面上には表示されない場合もあります。
売買の成立『約定(やくじょう)』について
前項で、「株の売買は、「売りたい人の値段」と「買いたい人の値段」が一致したときに成立します」と説明しましたが、約定にもいくつかのルールがありますので、もう少し詳しく説明します。
約定には、「板寄せ方式」と「ザラ場方式」があり、注文を出す時間によって変わります。
ここでは、それぞれの方式について詳しく説明していきます。
板寄せ方式
取引所では、売買できる時間(立会時間)が決まっています。
立会時間以外の時間に注文を出した場合は、注文は受け付けられますが売買は行われません(注文の受付時間は、証券会社や注文の出し方によって異なります)。
そのため、売り注文と買い注文がいろいろな値段に存在している訳ですが、この状態から売買を成立させるために、以下の3つの条件をあてはめて値段を決定します。
- 成行の売り注文と買い注文をすべて約定
- 約定値段より高い買い注文と、約定値段より低い売り注文をすべて約定
- 約定値段において、売り注文または買い注文のいずれか一方のすべて約定
そして、立会時間になったら上記にあてはまる全ての注文が約定します。
初めての方には少し難しいかもしれませんが、なんとなく頭に入れておいてください。
ちなみに、板寄せ方式は「引けの時(11:30と15:00)」と「特別気配の時」にも適用されます。
※特別気配については「5-3」で説明します。
ザラ場方式
取引所で売買できる時間を、立会時間あるいはザラ場と説明しましたが、ザラ場方式とは、その名のとおり立会時間中に売買を成立させる方式のことで、出された注文について、都度、約定させます。
ザラ場方式には、「価格優先の原則」と「時間優先の原則」があります。
- 価格優先の原則:売り注文の場合は値段が安い方が優先され、買い注文の場合は値段が高い方が優先される
- 時間優先の原則:同じ値段での注文の場合、取引所が受け付けた時間が早い方が優先される
特別気配(とくべつけはい)
立会時間中は、ザラ場方式により出された注文は都度約定しますが、出された注文が、売りあるいは買いのどちらかに偏ってしまい、現在の株価から大きく動きそうな場合、売買が一時停止します。
この状態を特別気配といい、特別気配になった場合、ザラ場方式から板寄せ方式に変わります。
これは、株価が急激に動くのを防ぎ、投資家に、思わぬ値段で売買が成立しないように、考える時間、注文を出す時間を与えるためです。
ザラ場方式で都度約定するのは、直前の株価と比較して一定の値幅の範囲内のときで、その値幅を超えたときに特別気配となります。
この値幅を「特別気配の更新値幅」といい、詳細は「日本取引所」のホームページで確認することができます。
http://www.jpx.co.jp/equities/trading/domestic/05.html
株価に大きく影響しやすいニュースが出た場合は、特別気配になりやすいので注意しましょう。
- 決算発表などで業績が大きく変動
- 新商品の発表や他社との提携
- 不祥事や重大な事故の発生 など
比例配分(ストップ高、ストップ安)
株価が制限値幅に達したとき、上限に達した場合はストップ高、下限に達した場合はストップ安となります。
例えば、1単元1000株の銘柄が、買い注文10万株、売り注文1万株でストップ高になって大引けを迎えた場合、1万株だけ約定になります。
このとき、買い注文の10万株の中から、どうやって1万株のみ約定させるのかというと、証券会社から出されている注文株数の多い順に1単元ずつ配分していきます。
下図の場合、注文株数の多いA社から順にD社→B社→C社に1000株ずつ配分していき、余りがあれば再度A社から順に配分し、これを繰り返します。
これを「比例配分」あるいは「ストップ配分」といいます。
※投資家への配分方法は、証券会社によって異なります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
売買の成立の仕方にはいろいろなパターンがあり、注文を出す場合にもいろいろなルールがあるというのが、なんとなく理解できたでしょうか?
もちろん、すべてを理解しなければ売買できないということではありません。
しかし、重要なポイントをしっかり抑えて、「どのタイミングで」注文を出せば「どのように約定するのか」、自分のやりたいことができるくらいには理解しておきましょう。
売買成立の仕組みが理解できたら、次は注文の出し方について。
こちらで解説しています。
『株初心者が知っておくと便利!株のいろんな注文方法をわかりやすく解説』
注文の出し方にも色々な方法があり、これによって約定する値段が全然変わってしまいますので、こちらもしっかりと学んでみてくださいね。
紫垣 英昭
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