紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
陸運・空運・海運からなる日本の運輸市場は38兆円の巨大産業となっており、株式市場においても重要セクターの一角となっています。
陸運株はネット通販(Eコマース)の急成長を受けて買われており、海運株は2021年に世界経済の急速な回復を背景に多くの銘柄が急騰しました。
空運株は新型コロナの打撃を受けていますが、アフターコロナの急反発が期待されるテーマ株となっています。
今回は、陸運・空運・海運それぞれの運輸株の特徴と新型コロナ相場での値動きについて解説した上で、陸運・空運・海運を代表する銘柄についてご紹介していきます。
- 陸運・空運・海運それぞれの運輸株の特徴と新型コロナ相場での値動きについてわかる
- 陸運・空運・海運を代表する銘柄についてわかる
- 要チェックすべきテーマ株がわかる
陸運・空運・海運の運輸株(物流関連銘柄)とは?
日本の運輸産業は約38兆円規模、就業者数は約333万人という一大産業です。とりわけ物流が占める割合が多く、物流産業は約24兆円、就業者は258万人と全産業就業者数の約4%を占めています。
出典:国土交通省
日本の運輸産業の市場規模・就業者数
出典:国土交通省
運輸産業は、貨物を輸送する手段によって、陸運・空運・海運の3つに分類されます。
国土交通省の資料によると、物流24兆円市場の内、陸運は約16.8兆円(※1)、空運は約1.3兆円(※2)、海運は約5.2兆円(※3)となっています。
※1:トラック運送16兆3,571億円、JR貨物1,355億円、鉄道利用運送事業2,841億円。
※2:航空貨物運送事業2,909億円、外航利用運送事業3,311億円、航空利用運送事業7,131億円。
※3:内航海運業9,138億円、外航海運業3兆3,360億円、港湾運送業1兆611億円。
陸運とは、トラックや鉄道といった陸路で行う輸送のことです。
ネット通販の宅配便はもちろん、産業用途においても一般的な輸送手段となっています。
運輸産業は、貨物を輸送する手段によって、陸運・空運・海運の3つに分類されます。
国土交通省の資料によると、物流24兆円市場の内、陸運は約16.8兆円(※1)、空運は約1.3兆円(※2)、海運は約5.2兆円(※3)となっています。
※1:トラック運送16兆3,571億円、JR貨物1,355億円、鉄道利用運送事業2,841億円。
※2:航空貨物運送事業2,909億円、外航利用運送事業3,311億円、航空利用運送事業7,131億円。
※3:内航海運業9,138億円、外航海運業3兆3,360億円、港湾運送業1兆611億円。
陸運とは、トラックや鉄道といった陸路で行う輸送のことです。
ネット通販の宅配便はもちろん、産業用途においても一般的な輸送手段となっています。
空運とは、航空機を利用して空路で旅客や貨物を輸送することです。
空運は旅客輸送がメインとなり、物流における比重はあまり大きくありませんが、小型の製品を早く運べることに強みを持ちます。
海運とは、船舶を使って行われる運輸方法です。世界貿易の97%が海運で行われており、日本の貿易にも欠かせません。
重量や距離当たりのコストが安いことから大量・長距離輸送に強く、自動車や資源の輸送は海運で行われることが一般的です。
陸運株・空運株・海運株の特徴と新型コロナ相場での動き
陸運・空運・海運それぞれの運輸株の特徴と新型コロナ相場での動きについて押さえておきましょう。
陸運株はネット通販拡大を背景に成長を続けている
陸運は運輸産業の過半数を占めており、マーケットにおいても陸運株は代表的な運輸セクターおよび物流関連銘柄の最右翼となっています。
陸運株の代表的な銘柄としては、【9062】日本通運や【9064】ヤマトホールディングス、【9143】佐川急便グループホールディングスなどが挙げられます。
近年、陸運株に追い風となっているのが、ネット通販(Eコマース)の拡大です。
ネット通販市場は年率10%弱で成長し続けている成長市場となっており、宅配便の取扱件数も急増しています。
急成長を続ける日本のネット通販市場
出典:国土交通省
日本通信販売協会の発表によると、新型コロナの影響で巣ごもり消費が急拡大した2020年には、通販市場は前年比+20.1%増の成長になったと発表されています。
ただ、ネット通販が陸運をけん引する一方で、再配達の増加や人手不足懸念も高まっており、今後もネット通販が成長する中で効率化の必要にも迫られています。
空運株は新型コロナで打撃もアフターコロナで回復期待
空運は、物流よりも旅客輸送の割合が大きくなっており、マーケットでは旅行やインバウンド関連で注目される傾向があります。
空運株の代表的な銘柄としては、【9202】ANAホールディングスと【9201】日本航空の2大航空会社が筆頭株です。
空運株は、新型コロナの打撃を最も大きく受けたセクターの一つとなっています。
日経平均株価が一時3万円を回復し、TOPIXがバブル以来の高値を付ける中でも、新型コロナ前の水準を取り戻せていない空運株が目立ちます。
ただ、ワクチン接種によって経済正常化に向かうアフターコロナにおいては、爆発的な旅行需要の発生が期待されていることも確かです。
ワクチン接種証明や陰性証明を使って人の動きを解禁していく流れは世界的に広まることが期待されており、空運株はアフターコロナに大反発が期待されるセクターとして注目が集まります。
海運株は2021年に大きく上昇したがトレンド終了の可能性も
海運株は、世界経済回復を背景に2021年に強く買われているセクターとなっています。
海運株の代表的な銘柄としては、国内海運大手3社の【9101】日本郵船、【9104】商船三井、【9107】川崎汽船が筆頭株です。
海運株を見ていく上では、ロンドンのバルチック海運取引所が発表している外航不定期船の運賃指数「バルチック海運指数」をチェックすることが欠かせません。
「バルチック海運指数」は海運株との連動性が高いことで知られています。
2021年には世界経済の急激な回復を背景に、「バルチック海運指数」は大きく上昇しています。
「バルチック海運指数」の5年分チャート
「バルチック海運指数」の上昇に連動するように、2021年の海運株は大きく上昇し、好業績を次々と発表。
商船三井は2021年7月31日、配当金を「1株あたり550円」とする大幅増配を発表し、配当利回り予想は一時9.73%にまで上昇。
これは東証全銘柄の中でも最も高い配当利回りとなり、マーケットにインパクトを与える発表となりました。さらに、8月4日には日本郵船も、配当利回りが10%相当となる増配を発表。
これを受けて商船三井と日本郵船の株価は急騰し、2021年8月には海運株全体が追随して上昇する“海運相場”が到来しました。
ただ、海運株は2021年には大きく上昇し、8月には一段高となりましたが、2021年9~10月に掛けては大きな下落となっています。
海運株は既に大きく急騰してしまったため、新型コロナ相場においては終わったテーマ株になってしまったという見方もあります。
陸運株3選!
代表的な陸運株の株価チャートを見ていきましょう。
【9064】ヤマトホールディングス
宅配便最大手の【9064】ヤマトホールディングスは、代表的な陸運株です。
同社は運輸セクターの中でも、ネット通販拡大の恩恵を受ける物流関連銘柄の最右翼とも言える銘柄です。
【9064】ヤマトホールディングスの月足チャート
ヤマトホールディングスの株価は、2020年3月のコロナショックで安値を付けて以降は大きく反発していることが分かります。
新型コロナ禍での巣ごもり消費拡大の恩恵を受けた格好になったと言えるでしょう。
なお、同社と並んで代表的な陸運株である【9062】日本通運もほぼ同じ値動きとなっています。
【9143】SGホールディングス
佐川急便グループの持ち株会社である【9143】SGホールディングスは、ネット通販拡大の恩恵を受けて買われている陸運株です。
【9143】SGホールディングスの月足チャート
SGホールディングスの株価は、新型コロナ相場で大きな上昇となっています。
2021年に入ってからはやや横ばい気味となってはいるものの、2021年9月には上場来高値を更新しました。
【9086】日立物流
企業物流トップの【9086】日立物流も、陸運株の一角を占める重要銘柄です。
同社はクロネコヤマトや佐川急便に比べると知名度はあまり高くありませんが、企業が物流機能を第三の企業に委託する「サード・パーティー・ロジスティクス」(3PL)において国内トップ企業として知られています。
日立グループの企業でありながら、売り上げの大半がグループ外取引によるものです。
【9086】日立物流の月足チャート
日立物流の株価は、新型コロナ前から成長軌道にあり、新型コロナ禍においても上場来高値を現在進行形で更新中です。
空運株2選!
アフターコロナの反発も期待される空運株の株価動向を見ていきましょう。
【9202】ANAホールディングス
国内線・国際線ともに国内航空トップの【9202】ANAホールディングスは、代表的な空運株です。
【9202】ANAホールディングスの月足チャート
ANAホールディングスの株価は、新型コロナ相場では厳しい状況が依然として続いています。新型コロナ前の株価は遠い状況です。
なお、国内航空2位の【9201】日本航空も同様の値動きとなっています。
ANA・JALともに厳しい株価状況となっているものの、今後、ワクチン接種証明や陰性証明を使って海外との人の往来が本格的に再開されることになれば、アフターコロナ株として急反発することが期待されます。
【9375】近鉄エクスプレス
国内航空貨物大手の【9375】近鉄エクスプレスは、日系フォワーダー大手3社(日通航空、近鉄エクスプレス、郵船ロジスティクス)の一角を占める空運株です。
空運による物流に強い銘柄としては、同社を押さえておきましょう。
【9375】近鉄エクスプレスの月足チャート
物流に強い近鉄エクスプレスの株価は、航空株2社とは異なり、新型コロナ相場においても強い値動きとなっています。
海運株5選!
世界経済の回復を背景に2021年に強く買われている海運株を見ていきましょう。
【9104】商船三井
不定期便に強い国内海運2位の【9104】商船三井は、2021年7月末に配当金を大幅増配したことでも注目を集めた代表的な海運株です。
【9104】商船三井の月足チャート
商船三井の株価は、2020年9月以降からは一貫した上昇トレンドとなっています。
2021年7月31日に配当金の大幅増配を発表してからは一段高となりました(上図赤丸)。
ただ、2021年9月以降は下落しており、さすがに調整局面に入ってきた可能性があります。
なお、同社の配当利回りは、2021年10月11日時点で7.95%と、依然高水準となっています。
【9101】日本郵船
海運トップの【9101】日本郵船も、2021年に大きく買われている代表的な海運株です。
【9101】日本郵船の月足チャート
日本郵船も、商船三井と同様に新型コロナ相場では一直線の上昇となっていますが、直近では大きく下げている状況です。
2021年8月4日に配当金の大幅増配を発表して以降は一段高となっており、2021年10月11日時点の配当利回りは9.09%という非常に高い水準です。
【9107】川崎汽船
コンテナ船に強い国内海運3位の【9107】川崎汽船も、代表的な海運株として2021年に強い値動きとなっています。
【9107】川崎汽船の月足チャート
川崎汽船の株価は、日本郵船・商船三井と同様の値動きとなっています。
なお、川崎汽船の配当金は無配となっていますが、日本郵船・商船三井が大幅増配を発表して急騰した動きに引きずられて、2021年8月には同じく一段高となっています。
【9110】NSユナイテッド海運
日本製鉄の関連会社で、鉄鉱石・石炭などの鉄鋼原料や鉄鋼製品をばら積み貨物船やタンカーで海上輸送する【9110】NSユナイテッド海運は、2021年に大きく買われた海運株です。
【9110】NSユナイテッド海運の月足チャート
NSユナイテッド海運の株価は、2021年に入ってから急騰していることが分かります。
ただ、他の海運株と同様に、2021年9月以降は売られ始めているため注意が必要です。
【9308】乾汽船
外航海運、倉庫、不動産の3本柱を手掛ける【9308】乾汽船も、海運株の一角の位置付けられる銘柄です。
【9308】乾汽船の月足チャート
乾汽船の株価は、商船三井と日本郵船が大幅増配を発表して海運株が全面高となった2021年8月に急騰したことが分かります。
2021年は、海運株は強いテーマ株として買われており、【9115】明治海運や【9127】玉井商船なども大きく上がっています。
ただ、急騰の反動から2021年9~10月には大きく下げている銘柄が目立っており、これから海運株に手を出すのはリスクがある行為であると認識しておくようにしましょう。
まとめ
今回は、陸運・空運・海運それぞれの運輸株の特徴と新型コロナ相場での値動きについて解説した上で、陸運・空運・海運を代表する銘柄についてご紹介してきました。
陸運株は、ネット通販の拡大を背景に、新型コロナ相場でも堅調な値動きをする銘柄が目立っています。
空運株は、新型コロナの影響で航空大手2社は厳しい状況が続いていますが、アフターコロナによる反発が期待されていることから、今後も要チェックしておきましょう。
海運株は、世界経済の回復を背景に「バルチック海運指数」が大きく上昇したことから、2021年には強く買われています。特に、【9104】商船三井と【9101】日本郵船が大幅増配を発表したことから2021年8月には“海運相場”が到来。
ただ、海運株は2021年に大きく上昇した反動から、2021年9~10月には大きく下落しており、注意が必要な状況となっています。
紫垣 英昭
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