VIX指数はコロナ相場など暴落相場で上昇する恐怖指数!連動型ETFも紹介

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

世界中の株式市場が大暴落に見舞われた2020年2~3月のコロナショックでは、恐怖指数ことVIX指数が大きな注目を集めました。

VIX指数はアメリカの株価指数「S&P500」と逆相関があり、リーマンショックやコロナショックといった世界経済リスクが表面化する場面で大きく上昇します。

また、日本の証券取引所にはVIX指数に連動するETFとして【1552】国際のETF VIX短期先物指数が上場しており、暴落相場時の短期投資におすすめのETFです。

今回は、恐怖指数ことVIX指数について解説した上で、VIX指数に連動する【1552】国際のETF VIX短期先物指数の特徴についてもご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • プロが見ている株式投資での買いの判断基準がわかる
  • 株式投資で買いの判断をする際に参考にしている情報がわかる
  • 株式投資で買いの判断材料をどのように利用して買っているかがわかる

VIX指数とは?

恐怖指数ことVIX指数の基本概要や特徴について抑えておきましょう。

VIX指数の基本概要

VIX指数とは、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、アメリカの代表的な株価指数である「S&P500指数」のオプション取引の満期30日のインプライド・ボラティリティ(※)を元に算出しているボラティリティ指数です。
※インプライド・ボラティリティとは、オプション取引におけるテクニカル分析指標の一つで、将来の価格変動率を予測したもの。「予想変動率」とも呼ばれる。

VIX指数は、「S&P500指数」の今後30日間の予想変動範囲を示しており、予想変動率が高ければVIX指数は高くなり、予想変動率が低ければVIX指数は低くなります。

「S&P500指数」が下落するとVIX指数は上昇し、「S&P500指数」が上昇するとVIX指数は下落する逆相関関係にあることから、VIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれています。

実際のチャートから「S&P500指数」と「VIX指数」の関係を見てみましょう。

「S&P500指数」の月足チャート

(引用:https://jp.tradingview.com/symbols/SPX/)

VIX指数の月足チャート

(引用:https://jp.tradingview.com/symbols/CBOE-VIX/)

この5年間では「S&P500指数」は右肩上がりとなっており、「VIX指数」は10~30の間で安定していました。

しかし、2020年2~3月のコロナショックで「S&P500指数」が暴落したときに、VIX指数は急騰していたことが分かります。

過去のVIX指数の高値

過去にVIX指数が大きな値を付けた出来事について振り返っておきましょう。

なお、VIX指数は、1993年当初は「S&P100指数」から算出されていましたが、2003年9月22日からは「S&P500指数」から算出されるようになり、計算方法なども修正されています(「S&P100指数」から算出されていた過去のVIX指数は「VXO指数」に改名されています)。

このため、実質的な比較ができるVIX指数は2003年9月22日以降のものです。

2003年9月22日以降、VIX指数が大きな値を付けた出来事とその値は次のようになっています。

年月日

出来高

VIX指数

2008年10月24日

リーマンショックによる世界金融危機

89.53

2010年5月21日

ギリシャを筆頭とするPIIGSの国債懸念

48.20

2011年10月4日

ギリシャ国債のデフォルト危機

46.88

2015年8月24日

中国経済失速懸念

53.29

2018年2月6日

アメリカ雇用統計受けて長期金利上昇

50.30

2020年3月18日

新型コロナウイルスのパンデミック

85.47

年月日

出来高

VIX指数

2008年10月24日

リーマンショックによる世界金融危機

89.53

2010年5月21日

ギリシャを筆頭とするPIIGSの国債懸念

48.20

2011年10月4日

ギリシャ国債のデフォルト危機

46.88

2015年8月24日

中国経済失速懸念

53.29

2018年2月6日

アメリカ雇用統計受けて長期金利上昇

50.30

2020年3月18日

新型コロナウイルスのパンデミック

85.47

これらの出来高を含むVIX指数の長期チャートを見てみましょう。

VIX指数の月足チャート

(https://jp.tradingview.com/symbols/CBOE-VIX/)

上記のVIX指数チャートは月の終値ベースとなっているため、高値までは反映されていませんが、2008年10月のリーマンショック、2011年10月のギリシャ国債デフォルト危機、そして2020年3月の新型コロナのパンデミックでは大きく上がっていることが分かります。

VIX指数は新型コロナでは大きく上がったものの、リーマンショック時の高値は超えませんでした。

リーマンショックの際に付けた89.53という値は、VIX指数の計算式が改訂された2003年9月22日以降の最高値となっています。

過去のVIX指数の安値

VIX指数が低い状況は、相場が安定していることを示します。

2003年9月22日以降、VIX指数が安値を付けていた時期を見てみましょう。

年月日

VIX指数

2006年11月22日

9.81

2007年1月24日

9.87

2017年7月26日

8.84

2017年11月3日

8.99

2017年11月24日

8.56

2018年1月4日

8.92

2006年~2007年、2017年は株式市場が安定していたこともあって、VIX指数は安値を付けていました。

特に、2017年11月24日に付けた8.56という値は、1993年以降の最低値となっています。

ただ、2007年の翌年にはリーマンショックが起こり、VIX指数が最も安定していた2017年の翌年には米中貿易摩擦が世界経済リスクになるなど、VIX指数が最低値を付けるということはマーケットにとっては大きなリスクの前触れになることが多いと言えるかもしれません。

VIX指数に連動するETF【1552】国際のETF VIX短期先物指数とは?

東京証券取引所には、VIX指数に連動するETFが上場しています。

【1552】国際のETF VIX短期先物指数は、三菱UFJ国際投信が運用する、「S&P500 VIX短期先物指数」の円換算値に連動するETFです。

信託報酬は0.396%、分配金は0円、1口から購入可能となっており、最低投資金額は8,430円となっています(2020年10月6日時点)。ETFとしてさらに詳しい情報は日本取引所のパンフレットを参照ください。

【1552】国際のETF VIX短期先物指数は、株価が下落すると上昇するインバース型ETFです。

日経平均やTOPIXに逆連動するインバース型ETFは多数上場していますが、世界株のインバース型ETFとして上場しているETFとしては唯一の銘柄となっています。

このため、同ETFは世界株安情勢になった際には、デイトレードやスイングトレードを目的として売買代金が急増する傾向があります。

【1552】国際のETF VIX短期先物指数の月足チャート

月足チャートで見てみると明らかですが、コロナショックで世界株安となっていた2020年3月に大きく上昇しており(上図赤丸)、出来高も急増していることが分かります(上図青丸)。

VIX指数連動型ETFの特徴

VIX指数に連動するETF【1552】国際のETF VIX短期先物指数のメリット・デメリットについて抑えておきましょう。

VIX指数連動型ETFのメリット

VIX指数に連動する【1552】国際のETF VIX短期先物指数は、暴落相場時の短期投資に特化して強いETFであると認識しておくことが重要です。

東京証券取引所には東証一部銘柄から新興銘柄、ETF、REITなど約4,000銘柄が上場していますが、世界株安時の短期投資においては【1552】国際のETF VIX短期先物指数のETFの右に出る銘柄はないと言っても過言ではありません。

2020年2~3月のコロナショック時の値動きを確認してみましょう。

【1552】国際のETF VIX短期先物指数の日足チャート(2020年2~3月)

コロナショックで世界の株式市場が全面安となっていた中で、【1552】国際のETF VIX短期先物指は一直線の上昇となっていました。コロナショックの1ヶ月で約5,000円から一時25,000円以上にまで、1ヶ月足らずで5倍以上に上昇しています。

コロナショックのような暴落相場では、個別銘柄の空売り(信用売り)も選択肢の一つとなりますが、空売りは失敗した場合の損失額が無限大で追証が発生するリスクがあります。

一方、VIX指数に連動する【1552】国際のETF VIX短期先物指はETFであるため、追証リスクがない現物買いで投資することが可能です。

VIX指数連動型ETFのデメリット

VIX指数に連動する【1552】国際のETF VIX短期先物指数のデメリットとしては、長期投資に適さないということに尽きます。

一般的に、ETFは長期・積立・分散投資を目的とする金融商品ですが、【1552】国際のETF VIX短期先物指が属するインバース型ETFは、暴落相場のときの短期投資に特化したものです。

また、ETFによるインデックス投資は市場全体の長期的な成長を享受できることがメリットですが、インバース型ETFではこのメリットを逆に受けてしまうため長期投資では逆効果です。さらに、インバース型ETFには分配金や配当金も一切出ません。

VIX指数に連動する【1552】国際のETF VIX短期先物指数が長期投資にいかに向かないかは、長期チャートを見てみれば明らかです。

【1552】国際のETF VIX短期先物指数の月足チャート

コロナショックでは一時上げたものの、長期的には大きく下落していることが分かります。

VIX指数に連動する【1552】国際のETF VIX短期先物指数は、世界株安商状という限定した状況において短期投資を行うことに強みを持つ銘柄であると認識しておき、長期投資は絶対にしないように注意しておきましょう。

まとめ

今回は、恐怖指数ことVIX指数について解説した上で、VIX指数に連動する【1552】国際のETF VIX短期先物指数についてもご紹介してきました。

VIX指数は、「S&P500指数」の逆相関指数となっており、「S&P500指数」が下落すると上昇し、「S&P500指数」が上昇すると下落します。

VIX指数は、2008年10月24日にはリーマンショックによる世界金融危機の影響で89.53の最高値を付けました。2010年代はギリシャ危機などで高くなることはあったものの安定していましたが、2020年3月18日には新型コロナウイルスのパンデミックを受けて85.47まで上昇しました。

【1552】国際のETF VIX短期先物指数は、世界株安時の短期投資に適するインバース型ETFとなっており、コロナショックの2020年2~3月には1ヶ月で5倍以上の急騰となりました。

ただ、【1552】国際のETF VIX短期先物指数は分配金が出ず、長期投資の恩恵を逆に受けてしまうため、長期投資には適していないETFであると認識しておくことが重要です。

VIX指数やVIX指数に連動する【1552】国際のETF VIX短期先物指数について理解して、今後の暴落相場に対応していきましょう。

紫垣 英昭