紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
「株式投資を始めてみたいけど、いくらから始めてみればいいんだろう?」と、お困りではありませんか?
経験の浅い投資初心者の方が株デビューをするなら、少額投資で始めることがおすすめです。
少額投資でもポートフォリオを組むことは可能であり、NISAを使った株主優待投資や高配当株投資をすれば、少額金額から雪だるま式に資産を増やしていくことも不可能ではありません。
今回は、「株はいくらから始められるのか?」について解説した上で、少額投資のメリット・デメリット、少額投資で始められる投資方法についてもご紹介していきます。
- 「株はいくらから始められるのか?」がわかる
- 少額投資のメリット・デメリット、少額投資で始められる投資方法についてわかる
- より少額から投資を始める方法がわかる
株式投資はいくらから始められる?
「株式投資はいくらから始められるのか?」という疑問については、まず「単元株」という株式投資のルールを押さえておく必要があります。
単元株とは、株を買う際の最低限の単位のことです。かつては、単元株は10株から1,000株まで銘柄ごとに異なっていましたが、2018年10月に全ての上場企業の単元株は100株で統一されました。
つまり、東証の上場企業の株を買うには、”株価×100株”が必要となる投資金額となります。
例えば、3,000円の銘柄の場合には、3,000円×100株=30万円から投資することが可能です。
東京証券取引所に上場している銘柄の数は2021年8月時点で3,786銘柄となっています。
この全銘柄の内、必要投資金額が100万円以上の銘柄は47銘柄に留まります(2021年8月20日終値時点)。
※出典:Yahoo!ファイナンス(https://info.finance.yahoo.co.jp/ranking/?kd=6&mk=1&tm=d&vl=a)
つまり、100万円あれば、東京証券取引所に上場している銘柄の98%以上に投資するということが可能ということです。
また、必要投資金額が50万円以上の銘柄は246銘柄、30万円以上の銘柄は666銘柄となっています(2021年8月20日終値時点)。
50万円あれば東証全銘柄の90%以上、30万円でも全銘柄の80%以上に投資可能となっており、かつてに比べると個人投資家が株デビューしやすい環境が整ってきていることは間違いありません。
少額投資で株デビューするメリット
いくら余剰資金がたくさんあったとしても、株デビューをするなら少額投資から始めることがおすすめです。
少額投資のメリットについて見ていきましょう。
損失額が小さいため精神的に楽
株式投資では、資金が多ければ多いほど利益も大きくなる一方で、損失額も大きくなります。
100万円から株を始めるのと1,000万円で株を始めるのとでは、期待できる利益にも10倍の違いがありますが、損失額も10倍の違いとなります。
「少額投資で株を始めても、利益はほとんど期待できない……」と思うかもしれませんが、未経験で利益を出せるほど株式投資は簡単なものではありません。また、大きな金額から株を始めてしまうと、投資した銘柄の値動きが気になって、日常生活にも支障をきたすことが懸念されます。
値動きがほとんど気にならない少額投資から始めれば、精神的なダメージもほとんどないため、楽に株デビューすることが可能です。
失敗してもやり直せるので経験が積める
株式投資を始めてから失敗をしない人は存在しません。株式投資では経験してみないと分からないことが多数あるため、投資初心者の内は、初心者特有の失敗を必ずするものです。
ただ、株で失敗して資金を失うことになったとしても、少額投資で始めていれば金銭的なダメージは小さく抑えられます。
例えば、10万円で始めて-20%の損失になったとしても2万円です。
100万円で-20%の損失は20万円、1,000万円だったら200万円になってしまいます。
失敗の内容は同じだったとしても、少額投資による失敗ならいくらでもやり直すことが可能であり、失敗からの教訓も小さい授業料で済ますことができます。
NISAと併用できる
少額投資で株デビューするなら、NISAと併用することをおすすめします。
NISAは、年120万円までの投資枠が5年間に渡って非課税となる個人投資家優遇制度です。
120万円以下の金額で投資デビューをするなら、NISAを使わない理由がありません。むしろ、NISAに合わせて120万円から投資デビューするのもアリです。
東証では2018年10月に単元株が100株に統一されたことから、NISAの枠内である120万円でも、分散投資をしてポートフォリオを構築することが可能となっています。
少額投資のデメリット
少額投資のデメリットについても押さえておきましょう。
分散投資をしづらい
東証では多くの銘柄に少額投資することが可能となっていますが、少額投資では複数銘柄に分散投資することが難しいというデメリットがあります。
例えば、【7203】トヨタ自動車(891,500円)、【6758】ソニーグループ(1,062,000円)、【9984】ソフトバンクグループ(615,200円)の3銘柄に分散投資するとなると、300万円近く資金が必要となってしまいます。
※かっこ内は2021年8月20日終値時点の最低投資金額。
なお、少額投資では個別銘柄でポートフォリオを構築することはやや難しいですが、ETF(上場投資信託)なら少額投資から分散投資を実現することが可能です。
手数料が割高になってしまう
少額投資だと、手数料が占める割合が大きくなりがちです。ただ、これはあくまで1取引ごとの手数料体系で少額投資をした場合の話です。
SBI証券や楽天証券、松井証券では、1日定額制の手数料体系も採用しています。
ネット証券 | 〜50万円 | 〜100万円 | 〜200万円 | 〜300万円 | 〜500万円 |
楽天証券 | 0円 | 0円 | 2,200円 | 3,300円 | 5,500円 |
SBI証券 | 0円 | 535円 | 1,278円 | 1,718円 | 2,598円 |
松井証券 | 0円 | 1,100円 | 2,200円 | 3,300円 | 5,500円 |
※1日の取引金額による現物取引手数料比較。価格は税込み。
これらの証券会社では、1日50~100万円までの取引なら手数料が無料となるため、少額投資をする場合には1日定額制の手数料体系を選ぶことがおすすめです。
大きな利益は期待できない
少額投資から始めて経験を積むことが大事と分かってはいるものの、多くの人が実践できずに大きな金額で始めてしまうのは、少額投資では大きな利益を期待できないからです。
少額投資では大きな利益を期待できないデメリットは、少額投資で失敗したときのダメージが小さいメリットと裏表の関係にあるため、こればかりは仕方がないとしか言いようがありません。
大きな利益を出せないことには焦りを感じるかもしれませんが、まずは少額投資で始めて経験を積んでいき、将来的に大きな利益を得ていくことが投資で成功するための最短ルートです。
投資初心者の少額投資におすすめの投資方法
少額投資におすすめの投資方法を見ていきましょう。
株主優待投資
株主優待投資は、株デビューにおすすめの投資方法です。
株主優待とは、企業が自社株を購入してくれた株主に対して、自社商品やサービスなどの優待品を贈る日本市場独自の制度です。全ての企業が実施しているわけではありませんが、その企業のサービスを利用する場合には非常にお得な優待も多数あります。
具体的な投資方法としては、優待が魅力的な銘柄を買って長期保有しておくのが一般的です。
株主優待で人気の銘柄としては、次のようなものがあります。
銘柄名 | 必要投資金額 | 株主優待内容(必要株数) |
【2702】日本マクドナルドホールディングス | 530,000円 | マクドナルドで使えるクーポン(100株以上) |
【8276】イオン | 302,200円 | イオンでキャッシュバックを受けられる優待カード(100株以上) |
【8316】サンリオ | 211,600円 | サンリオビューロランドで使える優待券(100株以上) |
【7412】アトム | 78,100円 | コロワイド系列やかっぱ寿司で使えるお食事券(100株以上) |
※必要投資金額は2021年8月20日終値時点で算出。
なお、株主優待を得るには、優待に必要な銘柄数や株主優待が貰える「権利確定日」を確認した上で、「権利確定日」の2営業日前の「権利付き最終日」までに現物取引で株を買っておく必要があることには注意しておきましょう。
月末が「権利確定日」である銘柄の場合、「権利付き最終日」は次のようになります。
高配当株投資
配当金がたくさん貰える「高配当銘柄」に長期投資しておけば、不労所得を作ることができます。さらに、得られた配当金を再投資していけば、少額投資から雪だるま式に投資資金を大きくしていくことも可能です。
具体的な投資方法としては、「配当利回り」が高い銘柄を買って長期保有しておくことになります。なお、配当利回りとは、「1株あたり配当金÷株価」で求められる指標で、この値が高ければ高いほど配当金に優れる銘柄となります。
少額投資から始められる高配当株としては、次のような銘柄があります。
銘柄名 | 必要投資金額 | 配当利回り |
【9434】ソフトバンク | 146,100円 | 5,89% |
【4502】武田薬品工業 | 365,800円 | 4.92% |
【8411】みずほフィナンシャルグループ | 155,100円 | 4.84% |
【8058】三菱商事 | 313,800円 | 4.27% |
【2914】JT | 211,850円 | 6.14% |
※必要投資金額、配当利回りは2021年8月20日終値時点で算出。
高配当株投資は、NISAと併用することもおすすめです。NISAの120万円枠を使って、複数の高配当株に分散投資しておけば、リスクヘッジをしながら配当金を得ることも可能となります。
なお、配当金を得るには、株主優待と同様に、「権利確定日」を確認した上で、「権利確定日」の2営業日前の「権利付き最終日」までに現物取引で株を買っておく必要があることに注意しておきましょう。
低位株投資
値上がり目的で少額投資をしたいなら、低位株投資がおすすめです。
低位株とは、500円以下、つまり5万円以内で買える銘柄のことを指します。低位株にはリスクも相応にありますが、急騰することも多いことが特徴です。
例えば、2020年には、新型コロナワクチン開発で期待されたバイオベンチャーの【2191】テラが低位株から20倍以上の急騰となりました。
【2191】テラの月足チャート
2021年にも、【3377】バイク王&カンパニーや【4582】シンバイオ製薬など、低位株から10倍弱の急騰となっている銘柄が出現しています。
ただ、テラの株価も急騰後に大暴落となったように、低位株は急騰後には暴落する傾向があり、少額投資の中でも「リスクが高い投資手法」であると認識しておくようにしましょう。
株式投資を始める前にチェックしておきたいポイント
株式投資を始める前にチェックしておきたいポイントを確認しておきましょう。
余裕資金で始める
失敗しないための株式投資の鉄則として、生活には関係ない余裕資金で始めることは必須です。
たとえ少額投資であったとしても、生活費や子供の教育費、マイホーム用の積立資金といった将来の人生設計に必要なお金を取り崩してまで投資を始めることはしないようにしましょう。
余裕資金の少額投資から始めて、徐々に経験を積んでいき、余裕資金を徐々に増やして利益を大きくしていくことこそが、投資で成功するための王道ルートです。
危険な投資には手を出さない
最初は余裕資金の少額投資から始めたとしても、株式投資を続けていく内に、多くの誘惑があることは押さえておいた方がよいポイントです。
東証一部銘柄への現物投資や、投資信託やETFによるインデックス投資などは、少額資金から始めることができてかつ、リスクも大きくありません。
しかし、信用取引や新興株投資、デイトレードなどは、大きなリターンが期待できる一方でリスクも大きくなっています。
大きな失敗をしたくなければ、このような危険な投資には手を出さないようにしましょう。
長期・積立・分散投資を心掛ける
長期投資・積立投資・分散投資を徹底することは、投資初心者が成功するためのポイントとなります。
長期投資とは、数年以上に及ぶ長期間に渡って投資を続けていくことです。
積立投資とは、定期預金のような形で、投資資金を積み立てていくことです。銀行で積み立てをする代わりに、証券会社で積み立てをするイメージとなります。
分散投資とは、複数の銘柄や商品に投資することです。自分自身の手で銘柄や商品を分散したポートフォリオを組むことが難しい場合には、投資信託やETFを使うというのも有効な方法です。
長期・積立・分散の3点を徹底した上で少額投資デビューすれば、投資で大きな失敗をすることにはまずなりません。
超少額で始められるミニ株(単元未満株)投資とは?
一般的には、株式投資は単元株(100株)でしか取引できませんが、一部の証券会社では単元株未満で取引が可能な「ミニ株(単元未満株)」をサービスとして取り扱っています。
「ミニ株(単元未満株)」に特に力を入れているのが、SBIネオモバイル証券とLINE証券の2社です。
この2社では、通常は100株からしか買えない銘柄を1株から買うことが可能となっていることはもちろん、ミニ株投資の手数料でも他社を圧倒しています。また、SBIネオモバイル証券ではTポイント、LINE証券ではLINEポイントを使ったポイント投資ができることも特徴です。
SBIネオモバイル証券 | LINE証券 | |
手数料 | 月齢220円 | 約定金額の0.05% |
取扱銘柄 | 東証の全銘柄 | 東証の1,000銘柄以上 |
取引時間 | 1日3回(前場始値、後場終値) | 9:00〜14:50 |
ポイント交換 | Tポイント | LINEポイント |
ただ、超少額で始められるミニ株(単元未満株)投資は、投資資金がない場合やポイントを使いたい場合には便利ですが、単元株以上で取引できる場合には特にメリットはありません。
まとめ
今回は、「株はいくらから始められるのか?」について解説した上で、少額投資のメリット・デメリット、少額投資で始められる投資方法についてもご紹介してきました。
東証では2018年10月から単元株が100株に統一されたことから、100万円あれば上場銘柄の98%以上に投資することが可能となっています。
投資初心者が株デビューする際には少額投資から始めて、経験を積んでいくことがおすすめです。少額投資では大きな利益は期待できませんが、失敗のダメージを小さくできるため長い目で見ると大きなメリットがあります。
少額投資でおすすめの投資方法としては、株主優待投資や高配当株投資、低位株投資などがあります。年額120万円のNISAを併用することもおすすめです。
また、単元株未満で取引できる「ミニ株(単元未満株)投資」では、より少額から投資を始めることも可能となっています。
紫垣 英昭
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