紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
「将来使えるお金を増やしたい」と考えたときに、株や債券、投資信託など投資で資産形成を目指すのも一つの方法です。
ただし、投資といってもさまざまな方法があり、投資の種類やリスク、リターンを把握してから選択する必要があります。
今回は数ある投資のなかから、代表的な8種類について特徴をご紹介します。
初心者が投資を始めるにあたって理解しておきたい注意点についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 代表的な8種類の投資について、それぞれの特徴を知ることができる
- 投資の種類を理解したうえで、自分の目的に合わせた金融商品を知ることができる
- 投資初心者なら必ず覚えておきたい、投資のリスクや注意点がわかる
代表的な投資の種類8選
知識がない状態で投資を始め、資産が大きく減ってしまう事態は避けたいものです。まずは自分の目的にぴったりな商品を見つけるために、代表的な投資の種類を8つ覚えておきましょう。
株式投資
株式投資とは、企業が発行する株式を売買して利益拡大を狙う投資方法です。
株価は、株式の需要と供給、企業の業績や景気の影響を受けて変動します。
投資した銘柄、購入タイミングによっては、キャピタルゲイン(売却益)により大きな利益を得ることができるでしょう。
投資家のなかにはキャピタルゲインだけでなく、インカムゲイン(配当金・株式優待)を期待して株式を取得する方もいます。
株式投資は企業の業績によってはリターンが大きくなりますが、値下がりによる元本割れには注意が必要です。
また、投資している企業の倒産リスクも考慮しなくてはなりません。
投資先は日本国内の企業だけでなく、外国の企業も選択肢に入れることができます。
投資先をなるべく分散させること、小さな金額から試してみることで、株式投資のリスクを極力抑えられるでしょう。
債券投資
債券とは、国・地方公共団体・企業などが発行する有価証券の一つで、多数の投資家から資金を集めるために発行されるものです。
債券の保有期間中に利子を得られるほか、満期まで持ち続けることで、元本もしくは前もって決められていた金額を受け取ることができます。
債券といっても、公共債(国債・政府関係機関債・地方債)、民間債(社債)のように、発行する団体によって呼び方はさまざまです。
なお、個人投資家の場合は「個人向け国債」を購入することができます。
債券投資の範囲は国内だけに限らず、外国債券を投資先として選ぶことも可能です。
日本では金利がほとんどないゼロ金利・マイナス金利政策が導入されていますが、外国には日本よりも高い金利の国が数多くあります。
投資信託
投資信託とは、投資家の代わりに運用の専門家が投資判断を行なう金融商品のことです。
多数の投資家から資金を集めて、まとめて投資する仕組みなので、少ない金額からでも分散投資できます。
なお、投資信託のなかでも、証券取引所に上場している投資信託のことをETF(上場投資信託)と呼びます。
通常の投資信託と比べると種類や商品数は少なめですが、手数料が安い点や、上場しているので価格を確認しやすい点が魅力です。
また、REIT(不動産投資信託)と呼ばれる投資商品も人気があります。
REATとは、投資家から集めた資金で不動産投資を行ない、家賃収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。
ただし、空室リスクや災害リスクなど、不動産ならではのリスクがあることに気を付けなければなりません。
先物・オプション取引
先物取引とオプション取引は混同しやすいですが、以下のような違いがあります。
- 先物取引:特定の商品をあらかじめ決められた価格で、決められた期日に売買する
- オプション取引:特定の商品をあらかじめ決められた価格で、決められた期日に売買する“権利”を売買する
先物取引は“売買の契約”で、オプション取引は“権利の売買”である点が異なります。
なおオプション取引では、買う権利を“コールオプション”、売る権利を“プットオプション”と呼びます。
先物・オプション取引ではレバレッジを利用できるため、少ない資金で大きな利益を上げられる可能性があります。
レバレッジとはもともとは「てこの力」という意味で、投資の文脈では少額の資金で大きな取引ができることを言います。
資金効率に優れた方法ではありますが、その分ハイリスクな商品であることを十分に理解しておきましょう。
外貨預金
外貨預金とは、日本円以外の通貨(米ドル・ユーロなどの外国の通貨)で行なう預金のことです。
日本円を外貨に替えて、外貨定期預金や外貨普通預金として預けると、利息が付与されます。 なお、日本ではマイナス金利政策が採用されており、円預金よりも外貨預金のほうが金利は高めです。
円から外貨への預入れ時、外貨から円への引出し時に為替変動の影響を受けるため、換金のタイミング次第で利益を多く得ることができます。
つまりは、外貨から円に戻す際に円安になっていればプラスに、円高になっていればマイナスになるということです。
ただし、為替変動の影響や利息だけに注目するのではなく、預入れと引出しの際に為替手数料が発生する点にも注意する必要があります。
FX(外国為替証拠金取引)
FX(外国為替証拠金取引)とは、外貨を売買して為替差益を得る投資方法です。
レバレッジをかけられるため、最大25倍まで取引金額を上げられます。
この仕組みにより、手持ち資金よりもはるかに大きな金額で取引できますが、レバレッジをかけた分だけリスクも高まることを十分に理解しておきましょう。
FXの場合、為替市場がオープンしている平日であれば、基本的に24時間いつでも取引を行なえます。
世界中の投資家が取引に参加するため、時間帯によって価格推移の傾向が異なることを知っておきましょう。
暗号資産(仮想通貨)投資
暗号資産(仮想通貨)とは、物理的な実体を持たない電子データの通貨のことです。
日本円のように現物の紙幣は発行されないものの、インターネットを介して世界中に送金することが可能です。
代表的な暗号資産には、ビットコイン・イーサリアム・リップルなどになります。 法定通貨ではないので、国によって価値が保証されておらず、管理者や発行者も存在しません。
一時期はビットコインが日本中で大きな注目を集めましたが、仮想通貨は値動きが激しく、基本的にはハイリスク・ハイリターンの商品です。
また、ハッキングの可能性がゼロではないこと、何かあったときに預金保険機構の補償を受けられないことなど、暗号資産ならではのリスクを知っておく必要があります。
貴金属投資(金・銀・プラチナ)
将来的に価値が上がることを期待して、金・銀・プラチナなどの貴金属を購入し、保有する投資家もいます。
貴金属のなかでも、投資対象として特に人気があるのが“金”です。
金は株式や債券などと比べて世界情勢の影響を受けにくいため、分散投資の一つとして保有するケースも多々あります。
プラチナも希少価値が高い貴金属ですが、金よりも世界情勢の影響を受けやすく、値動きが大きめです。
銀は金・プラチナと比べると安価ですが、市場規模が小さいため値動きが大きくなる傾向にあります。
貴金属投資では他の投資方法のように、金利や配当を得られるわけではありません。
しかし、貴金属自体の埋蔵量に限りがあることから、将来的に無価値になる可能性は低いと考えられます。
投資を始める前に!初心者が覚えておきたい注意点
投資にチャレンジするなら、失敗しないためのコツを事前に知っておきたいところです。
ここでは、投資初心者が必ず覚えておきたい注意点・考え方のポイントを3つに分けて解説します。
運用方針を決める
これから投資を始めるなら、まずは投資の目的やいつもまでに目標額を達成したいのか明確化しておきましょう。
投資の目的は何か、どれを投資対象として選ぶのか、どれだけのリスクを許容するのか、最初に運用方針をしっかりと決めておくことで、その後の方向性が定まります。
なお投資信託の場合、運用会社が運用方針を決定します。
たとえ個人の投資家であっても、運用方針を決めておくことで方向性のブレが少なくなります。
日常生活や特別なイベント、趣味や自己研鑽にかかる費用、老後に必要な費用などを計算して、資産運用で得たい利益目標を定めましょう。
やみくもに投資商品を探すのではなく、自分の目的に合わせて商品を見つけることが大切です。
分散投資の意味を理解する
投資用の資産を一つの投資対象だけに集中させると、損失が出たときに甚大な影響が出てしまいます。
投資に慣れていない初心者のうちは、投資対象を少数に限定するのではなく、なるべく複数の金融資産に分散投資することを意識しておきましょう。
投資商品の種類、投資する国や地域、通貨の種類など、分散の手法にも数多くのパターンがあります。
また、投資対象の分散だけでなく、投資するタイミングを分散するのも有効です。
例えば、「毎月○万円ずつ決まった金額を投資する」のように、購入タイミングを分散させることで、一時的な価格変動の影響を抑えられるでしょう。
リスクの種類を把握する
投資対象を決める前に、金利リスク・為替リスク・カントリーリスクなど、投資関連のリスクを必ず把握しておきましょう。
“金利リスク”とは、金利変動の影響で債券価格が変動するリスクのことです。
市場の金利が高くなると、債券価格が下がる傾向にあります。
また、為替相場の変動により損益が生じるリスクを、“為替リスク”と呼びます。
例えば、外貨建ての金融商品を購入したあとに円高が進んだ場合、外貨を円に換金した際の金額が、購入時よりも少なくなってしまうことをいいます。
投資対象国や地域によっては“カントリーリスク”も見逃せません。
政治や経済が安定していない国や地域の場合、資産価値が大きく変動する危険性が高くなります。
まとめ
投資をいざ始めるときに、「投資に失敗して、大損してしまったらどうしよう」と不安になる方もいるかもしれません。
投資の仕組み上、リスクを完全にゼロにするのは難しいですが、投資先の選び方によって、リスクの度合いをある程度調整することができるでしょう。
ローリスク&ローリターンの商品で手堅く攻めるのか、しっかりと経験を積んだうえでハイリスク&ハイリターンの商品を狙うのか、個々人によって投資のやり方は多種多様です。
これから投資を始める方は、運用方針の重要性、分散投資をする意味、想定されるリスクの種類を理解したうえで、自分にとって最適な投資先を選択してみてください。
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