EVシフトで注目「全固体電池」はトヨタ電気自動車の切り札!関連銘柄紹介

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

アメリカのEV(電気自動車)大手テスラモーターズの時価総額がトヨタ自動車を超えるなど、世界の株式市場では「EVシフト」が急速に進んでいます。

トヨタもEVで攻勢を掛けていくものと思われますが、中でも期待されているのが「全固体電池」です。

全ての部材が固体材料で構成される全固体電池は、トヨタが特許数で世界一となっていることで知られており、トヨタのEVの切り札として大きな注目を集めています。

今回は、全固体電池とEVシフトについて解説した上で、マーケットで注目される全固体電池関連銘柄をチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 全固体電池とEVシフトについてわかる
  • 全固体電池関連銘柄がチャート付きでわかる
  • 全固体電池が投資家に注目される要因がわかる

全固体電池とは?

トヨタのEVの切り札として期待される全固体電池について抑えておきましょう。

全固体電池の基本概要

全固体電池とは、その名前通り、全ての部材が固体材料で構成される電池です。

現在スマホやEVまで幅広く使われている「リチウムイオン電池」は、正極・負極・セパレータ・電解液の4部材で構成されていますが、特に電解液は液体です。

全固体電池では、電解液を固体材料とし、セパレータが不要となります。

電解液を使う従来の電池は、液漏れや発火、破裂といった安全リスクがありますが、固体電解質を使う全固体電池ならこれらのリスクがなく安全です。

さらに全固体電池は、急速充電が可能、大容量・高出力、小型化しやすい、充放電を繰り返しても劣化しにくいなど、リチウムイオン電池に比べて多くのメリットがあります。

リチウムイオン電池はスマホやEVを急速に発展させ、2019年にはリチウムイオン電池の発明に多大な貢献をした吉野彰氏ら3氏にノーベル化学賞が授与されました。

全固体電池が実用化されれば、リチウムイオン電池を凌ぐイノベーションとなり、本格的なEV時代が到来することが期待されます。

全固体電池はトヨタのEVの切り札

全固体電池などの次世代電池は、IoTやEVの進化のカギを握るため、世界中で開発競争が行われています。

日本の自動車メーカーはEVでは遅れが目立っている一方、EVのカギを握る全固体電池については日本企業がリードしています。

欧州特許庁(EPO)と国際エネルギー機関(IEA)が2020年9月22日に発表した「EPO-IEA Battery Study」によると、全固体電池の国際特許数では日本が54%でトップとなっており、米国(18%)と欧州(12%)を大きく引き離しているとのことです。

出典:欧州特許庁(EPO-IEA study: rapid rise in battery innovation playing key role in clean energy transition)

特に、トヨタ自動車は全固体電池の特許数で圧倒的であり、日経XTECHによると、1997年~2017年の間に出願された全固体電池の特許数では全世界・全地域でトップとなっています。

出典:日経XTECH(特許出願でトヨタが他を圧倒、量産対応の技術力にも厚み)

世界的なEVシフトは自動車産業の大転換に繋がり、トヨタにとって危機的な状況になる可能性も指摘されていますが、トヨタが全固体電池の実用化に成功すれば、トヨタがEVでも頂点になる可能性は十分にあります。

EVで出遅れているトヨタにとって、全固体電池はEV競争に勝ち抜く切り札と言えるでしょう。

株式市場ではEVは最注目テーマ株の一つになっている

株式市場で全固体電池が注目される背景にあるEVシフトについて抑えておきましょう。

2020年秋には世界中でEVシフトが発表された

全固体電池の実用化が望まれている背景には、世界的に進む「EVシフト」があります。

2020年秋には、ガソリン車の新車販売規制をする「EVシフト」が世界中で相次いで発表されました。

イギリスでは2030年までに、アメリカ・カリフォルニア州やカナダ・ケベック州では2035年までに、フランスでは2040年までに、それぞれガソリン車の新車販売を規制する方針が出されました。

世界最大のEV市場である中国でも、2035年を目処に新車販売をEVやハイブリッド車などの環境対応車のみとする方針を決定。

そして日本でも、菅政権が進める「脱炭素政策」の一環として、2030年までにガソリン車の新車販売を規制する方針が打ち出されました。

ただ、日本が発表したEVシフトでは、日本の自動車メーカーが得意とするハイブリッド車は規制対象から外れる見込みとなっており、ガソリン車自体を禁止してしまう欧州・北米のEVシフトに比べると、自動車メーカーに配慮した形となっています。

いずれにしても、世界的にガソリン車が規制されるEVシフトが進むことは確実で、EVはもちろんEV向け次世代電池の開発競争が激化していく流れとなっていくことは間違いありません。

EV大手テスラモーターズの時価総額がトヨタを超えた

株式市場においても、EVは最注目テーマ株の一つとなっており、自動車セクターの銘柄はEV時代に対応できるかどうかが投資家の最注目ポイントになっていると言っても過言ではありません。

2020年には、アメリカのEV大手テスラモーターズの時価総額がトヨタ自動車を超えて世界一になるという衝撃的な出来事が起こりました。

テスラモーターズの株価チャートを見てみましょう。

引用:Tesla(TSLA)の月足チャート(https://jp.tradingview.com/symbols/NASDAQ-TSLA/)

テスラモーターズの時価総額は、2021年1月15日時点で8,009億ドルとなっており、トヨタ自動車の時価総額(約2,500億ドル)の3倍以上となっています。

直近の業績(2020年7~9月期決算)を見てみると、テスラモーターズの売上高は約88億ドル、トヨタ自動車の売上は約650億ドルとなっており、テスラの業績はトヨタの7分の1程度に留まります。

しかし、株価は将来の業績期待も織り込むものであるため、EVシフトが本格化する未来では、テスラがトヨタを業績でも圧倒する可能性は十分にあるとマーケットは考えているということです。

2020年から始まったテスラ株の上昇は止まらず、時価総額ではついにFacebookも抜きました。このままの勢いで上昇が続けば、時価総額2兆ドルのAppleを抜いて世界トップになる可能性もあるかもしれません。

テスラ株はバブルの様相を呈してきていますが、株式市場ではEVシフトへの期待がそれだけ高いということでもあります。

株式市場においては一足先にEVシフトが到来しており、全固体電池が多くの投資家に注目されている最大の背景です。

自動車メーカー

全固体電池を手掛けている自動車メーカーを抑えておきましょう。

【7203】トヨタ自動車

世界的自動車メーカーの【7203】トヨタ自動車は、全固体電池の特許数で世界トップを誇る代表的な全固体電池関連銘柄です。

同社は、全固体電池を搭載したEV(電気自動車)を2020年代前半に投じる方針とも報道されており、大きな注目が集まります。

【7203】トヨタ自動車の月足チャート

トヨタの株価は、この6年間は横ばいとなっています。

EVで停滞している間に、テスラモーターズに時価総額で追い抜かれてしまいました。

今後、全固体電池で巻き返しを図れるかどうかに注目です。

電池メーカー

全固体電池の開発を手掛けている電池メーカーを抑えておきましょう。

【6955】FDK

富士通系の電池メーカー【6955】FDKは、全固体電池や空気電池といった次世代電池の開発で注目される電池メーカーです。

同社は、SMD対応小型全固体電池「SoLiCell」を2020年内に量産開始すると報じられています。

【6955】FDKの月足チャート

FDKの株価は、2018年から2020年までは下落トレンドとなっていましたが、2020年3月のコロナショックからは反発に転じています。

特に、EVシフトが注目された2020年秋以降には大反発となっていることが分かります。

同社は小型株であり、電池メーカーの中では全固体電池関連ニュースで動きやすい銘柄です。

【6752】パナソニック

総合家電大手の【6752】パナソニックは、トヨタ自動車と共同で全固体電池の開発を手掛けています。

トヨタとパナソニックの合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」は全固体電池の開発も手掛けており、トヨタのEVのカギを握る企業でもあります。

【6752】パナソニックの月足チャート

パナソニックの株価は、長期的には大きな波で横ばいとなっています。

ただ、2020年秋のEV相場からは4ヶ月連続で上昇していることが分かります。

同社は、車載向けリチウムイオン電池市場では、韓国のLG化学や中国のCATLと世界シェア争いを繰り広げており、テスラモーターズと共同でリチウムイオン電池の生産工場「ギガファクトリー」を運営しているなど、全固体電池を抜きにしても日本株を代表するEV関連銘柄として注目です。

【6674】ジーエス・ユアサ コーポレーション

車載用リチウムイオン電池に力を入れる電池メーカー大手の【6674】ジーエス・ユアサ コーポレーションは、全固体電池の開発も進めています。

【6674】ジーエス・ユアサ コーポレーションの月足チャート

 

ジーエス・ユアサ コーポレーションの株価は、2020年秋のEV相場で大反発となりました。

日経平均構成銘柄の中では、EV相場で最も大きく上昇した銘柄の一つです。

【6810】マクセルホールディングス

自動車や理美容家電向けに強い電池メーカーの【6810】マクセルホールディングスも、全固体電池関連銘柄に位置付けられます。

同社は、2020年9月、硫化物系固体電解質を用いたコイン形全固体電池を開発し、サンプル出荷を開始すると発表しました。

【6810】マクセルホールディングスの月足チャート

マクセルホールディングスの株価は厳しい状況となっています。

コロナショック前の株価水準も取り戻せていません。

ただ、EV相場となった2020年秋以降は反発傾向が見られます。

材料メーカー

全固体電池の材料を手掛けている材料メーカーを抑えておきましょう。

【6584】三櫻工業

車輌配管やブレーキ用チューブなどの自動車部品を手掛ける【6584】三櫻工業は、マーケットでは代表的な全固体電池関連銘柄となっています。

同社は、全固体電池の開発を手掛けるアメリカ・ソリッドパワー社に出資していることで知られます。

【6584】三櫻工業の月足チャート

三櫻工業は、2019年9~10月に急騰となりました(上図赤丸)。

このときは好決算に加えて、新型発電素子や全固体電池で注目されたことが背景にありました。

2019年9~10月の急騰以降、全固体関連銘柄として全固体電池関連ニュースが流れるたびに物色される銘柄となっています。2020年秋からのEV相場でも反発していることが分かります。

小型株であることから、全固体電池関連で個人投資家の資金が流入しやすい銘柄です。

【5218】オハラ

光学ガラスメーカー大手の【5218】オハラは、全固体電池材料を手掛けていることでも知られています。

同社は、リチウムイオン電池向けにガラスセラミック素材を利用した添加剤を開発した実績があることから、全固体電池関連銘柄として物色される傾向があります。

【5218】オハラの月足チャート

 

オハラの株価は、2016年から2018年初めまでは大きく上昇しましたが、その後は2020年3月まで下落トレンドとなっていました。

2020年3月のコロナショックで底値を付けてから反発し、2020年秋のEV相場では大きく上昇しています。

【6762】TDK

電子部品メーカー大手の【6762】TDKは、全固体電池材料も手掛けていることで知られています。

同社は、小型SMD技術を用いた世界初の充放電可能なオールセラミック固体電池「CeraCharge」を発表しています。

【6762】TDKの月足チャート

TDKの株価は右肩上がりに上昇しています。

2021年1月には、ITバブルの2000年8月に付けた上場来高値を約20年ぶりに更新しました。

【6981】村田製作所

セラミックコンデンサを始めとする総合電子部品メーカー【6981】村田製作所は、全固体電池の開発に力を入れています。

同社は、2020年6月、業界最高水準の電池容量を持つ全固体電池を開発したと発表。

2021年に量産体制に入ると報じられています。

【6981】村田製作所の月足チャート

村田製作所の株価は、2015年から2019年までは横ばいとなっていましたが、2020年ついに上放れしました。

【6976】太陽誘電

セラミックコンデンサやインデクターなどを手掛ける電子部品大手の【6976】太陽誘電も、全固体電池関連銘柄として注目の材料メーカーです。

同社は、2021年に全固体電池の量産体制に入ると報じられています。

【6976】太陽誘電の月足チャート

太陽誘電の株価は上昇トレンドを描いています。

まとめ

今回は、全固体電池とEVシフトについて解説した上で、マーケットで注目される全固体電池関連銘柄をチャート付きでご紹介してきました。

トヨタを始めとする日本の自動車メーカーはEVでは遅れが目立ちますが、全固体電池の開発では日本企業は先行しており、トヨタのEVの切り札になることが期待されます。

EV大手テスラモーターズの時価総額がトヨタの3倍になるなど、EVシフトは株式市場で注目される一大テーマとなっており、全固体電池が投資家に注目される最大の要因です。

日本株のEV関連銘柄としては、【7203】トヨタ自動車はもちろん、電池メーカー大手の【6752】パナソニックや、材料メーカー大手の【6762】TDKや【6981】村田製作所などが中心銘柄となります。

また、全固体電池は個人投資家に人気のテーマ株ということもあり、【6955】FDKや【6584】三櫻工業といった小型株も全固体電池関連ニュースで動きやすくなっています。

紫垣 英昭