紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
NISAは、2014年にスタートした制度で「少額から始められる」「税金が掛からない」などから、初心者でも気軽にできる投資の1つです。
しかし、制度がスタートしてからだいぶ経っていますが、「自分もやってみたいけど、分からないことが多くて難しそう」と、なかなか始められなかった人も多いかと思います。
政府や証券会社の説明では、内容が初心者向けでなかったり、メリットばかりでデメリットがきちんと説明されていなかったりするため、不安に感じて始められないという人もいるかもしれません。
そこで今回は、NISAの概要については簡単な説明にとどめ、デメリットや注意点、そして失敗しないためのポイントなどに重点を置いて説明していきたいと思います。
現行のNISA制度は2023年まででしたが、2024年からも新制度として再スタートすることが決定しましたので、この機会に、しっかりと学んでいきましょう。
- NISAについて図解でわかりやすく学べる
- NISAで株式投資をする際の注意点がわかる
- NISAを開設する際のポイントがわかる
NISAとは
まずは、簡単にNISAの概要から説明していきます。
NISAとは「Nippon Individual Savings Account」の略で、「少額投資非課税制度」のことです。
つまり、「少額で投資した分で得られた利益」については「非課税になります」という制度です(通常は利益の約20%が課税されます)。
NISAでは、株式や投資信託などの金融商品が対象になりますが、ここでは、分かりづらくなってしまうので「株式」について説明していきます。
ちなみに、信用取引、公社債投資信託、債券などはNISAでは取引できません。
※信用取引ができないので「空売り」もできません。
NISAには投資枠に制限がある
先ほど、NISAは「少額で投資した分」が非課税になると説明しましたが、具体的には「1年間に投資できる枠は120万円」と定められています。
120万円の範囲内であれば、1度に120万円分の株式を購入したり、小分けにして購入したりすることもできます。
ただし、120万円分の投資枠を使ってしまうと、株式を売却した資金で新たに株式を購入しても、その分は非課税の対象にはなりませんので注意してください。
また、「1年間に120万円の投資枠」なので、翌年になれば新たに120万円の投資枠をもらうことができますが、120万円の投資枠を使い切らなかったとしても、その分を翌年に繰り越すことはできません(購入した株式はそのまま保有できます)。
NISAには保有期間に制限がある
株式投資の経験がある人なら分かると思いますが、通常、株式投資で課税されるのは「株式を売却して利益を得たとき(利益分が課税対象)」です。
株式投資では、保有期間に制限がありませんので、購入した株式はいつでも売却することができますし、売却して利益を得るまで課税されることはありません(配当金は除く)。
しかし、NISAの場合は非課税の対象となる期間が「5年間」と定められています(5年以内に売却して得た利益はすべて非課税)。
5年間を超えても株式をそのまま保有していたい場合は、以下の2つの方法があります。
- 新たな投資枠に移行する
- 課税口座(一般口座や特定口座)に移行する
詳細は、下図をご確認ください。
引用:政府広報オンライン
NISAで株式投資をする際の注意点
NISAのメリットは、「株式投資で得た利益が非課税になる」というのはご存じの人も多いと思いますが、デメリットについては意外と知られていません。
先ほど、「投資枠に制限がある」「保有期間に制限がある」などの制約については少し説明しましたが、ここからは、その他の注意点について説明していきたいと思います。
課税口座に移行すると余計に税金が掛かる?
先ほどの「保有期間に制限がある」に関わってくることですが、5年間を超えて株式を保有する場合、2つの方法があると説明しました。
1つ目は、「新たな投資枠に移行する(ロールオーバー)」場合ですが、こちらは、移行した年の投資枠がその分減ってしまうのですが、それを理解していれば特に問題はありません。
問題は、2つ目の「課税口座に移行する」場合です。
NISAから課税口座に移行する場合、「課税口座での取得価格は移行時の時価」になります。
株式を購入したときの価格に対し、移行時に値上がりしていた場合と値下がりしていた場合で課税される額が変わってきますので、それぞれのケースを見ていきましょう。
移行時に値上がりしていた場合(購入時100万円、移行時120万円)
NISAを活用した場合は、課税口座へ移行したときの価格が課税の基準になりますので、上右図のように、売却したときの価格が120万円を超えた部分が課税対象になります。
したがって、上左図と比べると課税対象の部分が小さくなっているのが分かりますよね?
一方、移行時に値下がりしていた場合(購入時100万円、移行時80万円)
先ほどとは逆で、NISAを活用した場合の方が、課税対象の部分が大きくなっているのが分かります。
つまり、NISAを活用したとしても、投資した銘柄の値動きや移行・売却するタイミングによっては、通常の株式投資と比べて課税額が増えることもあるということを認識しておかなければなりません。
ロールオーバーのしかたやメリットデメリットなどについては、SBI証券の『NISAロールオーバーとは?非課税期間満了時のご案内』がとてもわかりやすいので、こちらも読んでみてください。
NISAは損益通算対象外?
損益通算とは、個々の売買結果に応じて都度課税するのではなく、1年間を通して出た利益と損失の合計金額で課税額を算出する方法のことを言います。
例えば、通常の株式投資では50万円の利益が出たとしても、それとは別に30万円の損失が出た場合「50万円の利益から30万円の損失を引いた20万円が課税対象」となります。
しかし、課税口座とNISAを併用した場合、NISAは損益通算の対象外ですので、NISAで出た損失は課税口座で出た利益から相殺することはできません。
したがって、NISAで損失が出てしまった場合、上右図のように課税対象となる部分が大きくなることもありますので注意しましょう。
NISAは損失の繰越控除対象外?
先ほどの損益通算では、1年間の損益合計がプラス(利益)になった例をご紹介しましたが、今度は、1年間の損益合計がマイナス(損失)になった場合について説明します。
通常の株式投資では、1年間の損益合計がマイナスになった場合、確定申告をすることによって、そのマイナス分を翌年以降に繰り越すことができます(3年間)。
そして、繰り越された損失は、損益合計がプラスになった年の確定申告で相殺することができます。
上図のように、相殺しきれなかった場合は、さらに繰り越すことができますが、相殺して損益合計がプラスになった場合にはじめて課税されることになります。
NISAは、この「損失の繰越控除」の対象外となり、損益通算の場合と同様に相殺することはできませんので注意しましょう。
配当金の受取方法によって課税されてしまう?
長期間株式を保有していると、銘柄によっては配当金をもらえることがあります。
配当金は、主に「銀行や郵便局などの金融機関で受け取る方法」と「株式の売買と同じ口座(証券口座)で受け取る方法」の2つの方法があります。
NISAでは、配当金にかかる税金も非課税の対象になるのですが、配当金の受取方法を証券口座以外にしてしまうと入金時に課税されてしまいます。
配当金を証券口座で受け取るためには、「株式数比例配分方式」という方法に変更する必要がありますので、詳しくは、NISAを開設している証券会社に確認してください。
株主優待により株主が受け取る金品は、「経済的利益」として所得税や住民税が掛かりますが、NISAであれば非課税になります。
株主優待については、『株初心者に人気の“おすすめ株主優待銘柄”のご紹介』の記事を読んでみてください。
NISAを開設する際のポイント
NISAを始めるためには、まずNISA専用の口座を開設しなければなりません。
しかし、NISAは1人1口座しか開設できませんので、開設する証券会社は慎重に選ぶ必要があります。
数ある証券会社の中から、自分に合った証券会社を1つだけ選ぶのは難しいと思われるかもしれませんが、選ぶ際のポイントは主に以下の2つです。
- 購入したい金融商品を取り扱っている
- 手数料が安い
また、NISA口座を開設するためには、通常の取引口座が必要になります(同時に開設することも可能)。
通常の取引口座は、複数の証券会社でいくつも開設することができますので、まずは、気になった証券会社で通常の取引口座を開設し、気に入った証券会社が見つかったらそこでNISA口座を開設してみると良いかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
NISAは、少額から始めることができるので初心者にも人気の投資方法ですが、投資額が少ないため大きな利益を得ることも難しいと言えます。
しかし、だからこそ手数料や税金などの投資に掛かる費用を抑えることで、コツコツと堅実に利益を積み重ねることができます。
今回は、デメリットや注意点を中心に説明してきましたが、これらの内容をしっかりと理解しておけば、得られるメリットの方が断然大きいですので、この制度を上手に活用して、あなたの投資ライフにお役立て頂ければ幸いです。
紫垣 英昭
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