紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
今回は数あるテクニカル指標の中でも、個人投資家に人気のある「ボリンジャーバンド」についてご紹介します。
あなたも見たことがあると思いますが、以下のように、株価を示す「ローソク足」の上下に帯状の線が描写されているのが「ボリンジャーバンド」です。
なんとなく、それぞれの線に沿って値動きしていたり、上下の水色の線で方向転換したりしてるなってわかりますか?
ボリンジャーバンドは移動平均線を応用したものなので、それ程難しいものではありません。
それどころか、ボリンジャーバンドは「視覚的に売買のタイミングを見極める指標」としてとても人気があるテクニカル指標ですので、ぜひこの機会にマスターしていただけたらと思います。
それでは、ボリンジャーバンドについて文章と図解で分かりやすく説明していきます。
- テクニカル指標「ボリンジャーバンド」についてわかる
- ボリンジャーバンドをどのように売買に使うのかがわかる
- ボリンジャーバンドを使う際の注意点がわかる
ボリンジャーバンドとは
まずはじめに、ボリンジャーバンドとはどのようなものなのかを説明します。
ボリンジャーバンドとは、1980年ころにジョン・ボリンジャーという人が考案したもので、移動平均線を中心に株価が一定の確率で推移する範囲を表した線になります。
言葉で説明しただけでは分かりづらいと思いますので、図を見ながら説明します。
下図は、冒頭でもお見せした、SBI証券のHPから日経平均のチャートを表示したものです。
中心の紫の線が移動平均線を表しており、そこから近い順に1σ、2σ、3σとなっていて、全部で7本の線が表示されています。
中心にある移動平均線よりも上側がプラス、下側がマイナスだということを覚えておいてください。
σ(シグマ:標準偏差)の計算式は省略しますが、
±1σの範囲内で株価が推移する確率=約68.3%
±2σの範囲内で株価が推移する確率=約95.5%
±3σの範囲内で株価が推移する確率=約99.7%
となっています。
つまり、ボリンジャーバンドと現在の株価位置を見比べることによって、短期的に株価が動く範囲を、ある程度予想することができるということです。
例えば、株価が±3σを超える確率は0.3%しかないということなので、「+3σを超えて、これ以上は上がることはないだろう」といった判断に使うこともできます。
もちろん、株価に動きによって「ボリンジャーバンド」の形状は変化していきますが、一定の範囲に収まる確率は株価の方向を見る上で参考になると思います。
ボリンジャーバンドの見方
ボリンジャーバンドには特徴的な3つの形があり、そのパターンから様々な相場の状況を判断することができます。
まずは「スクイーズ」というパターンから解説していきましょう。
スクイーズ
「スクイーズ」とは、英語で「絞る」という意味があり、移動平均線からσまでの間隔が狭くなっている部分を指します。
これは、株価の値動きが小さいことを表しており、売買をするにはあまり向かない期間になります。
エクスパンション
エクスパンションとは、英語で「拡張」という意味があり、移動平均線からσまでの間隔が広がっている部分を指します。
これは、株価の値動きが大きいことを表しており、スクイーズの後に見られます。
このとき、スクイーズの期間中にたまったエネルギーが爆発して、株価が一気に動き出すきっかけになりますので、売買のエントリーチャンスと言えます。
バンドウォーク
バンドウォークとは、ボリンジャーバンドの線に沿って株価が動いている部分を指します。
バンドウォークは、強いトレンドが発生していることを表しており、しばらくの間、一方向に動いていきますが、線から離れるタイミングを逃さないようにするのが重要です。
ボリンジャーバンドをどう売買に使うの?
今までの説明で、ボリンジャーバンドとはどういうものなのか何となくイメージできたでしょうか?
ここからは、実際に売買する時に、ボリンジャーバンドをどのように使えば良いのかについての一例を挙げていきたいと思います。
あくまで一例ですので、これ以外にも売買のタイミングはありますし、この通りにやったら必ず儲かるという訳ではないので、注意してくださいね。
スクイーズでは様子見
前項でも説明した通り、スクイーズは株価の値動きが小さい期間です。
値動きが小さい時は、売買しても利益を出すことは難しいので、株価が動き出すまでじっくり待ちましょう。
エクスパンションの始まりでエントリー
スクイーズからエクスパンションに切り替わるところが、株価が動き始めたタイミングになるのですが、実際にはスクイーズとエクスパンションの境目が明確に区別されている訳ではありません。
そこで、一般的によく使われている±2σを目安に、次のように判断します。
※黒い線が移動平均線、赤い線が±2σの線です。
上図の矢印の部分のローソク足が2σの線を突き抜けているのが分かると思います。
ここで、「スクイーズが終わって株価が上昇するかも」と予想することができます。
そして、次のローソク足が矢印のローソク足の高値を超えたところがエントリーのタイミングになります(バンドウォークになっているのも確認できると思います)。
エクスパンションの線の変化で決済
エクスパンションに入って株価が動き出したあと、いずれは収束していくことになるのですが、その収束のタイミングを狙って決済します。
先ほどと同じ図で説明します。
上図の縦の点線と-2σの線(ローソク足とは反対側の線)が交わっているところに注目してください。
-2σの線が移動平均線に対して広がっていたのが、この点線を境に向きが変わっている(収束し始めている)のが分かると思います。
この反対側の2σの線の向きが変わっているところの次のローソク足の寄付きが、決済のタイミングになります。
ちなみに、今回挙げたやり方は「順張り」と言われる手法になります。
「順張り」とは、株価のトレンドが出ている方向にポジションを持つことをいい、多くの投資家が使っている売買手法です。
以下の記事でも「順張り」について詳しくお伝えしていますので、ぜひご覧ください。
『順張りとは? トレンドに乗って大きな利益を得るための法則』
また「順張り」とは逆に、株価のトレンドに逆らった「逆張り」という売買手法もあり、「ボリンジャーバンド」を使った「逆張り」の売買手法も多くの投資家が使っています。
以下の記事でも、ボリンジャーバンドを使った「逆張りの売買」について説明しています。
また、ボリンジャーバンドを使った上級編の手法として『簡単に売り時買い時がわかる!ボリンジャーバンド徹底活用方法』という記事も併せて読んでいただければ、より深い知識が得られると思います。
ボリンジャーバンドを使う際の注意点
ではこれから、「ボリンジャーバンド」を使う上での注意点をお伝えします。
一見、すごく優れたチャート指標である「ボリンジャーバンド」でも、やはり“弱点”があります。
「ボリンジャーバンド」を上手く使いこなすためにも“弱点”を理解することで成功確率が高まりますので、ぜひ覚えるようにしてください。
銘柄によってはあまり機能しない
ボリンジャーバンドは、移動平均線を基準にしており「過去のある一定の期間での株価の動き」に対して表示されるので、株価が急騰あるいは急落している場合や、出来高が少ない場合には信頼性が低くなることがあります。
したがって、売買しようとしている銘柄の過去数年間をチャートを確認し、ちゃんと機能しているかどうかを確認することが重要です。
過去数年分のチャートを確認してみて、未来の株価のイメージが付くようであればOKです。
シグナルの発生が遅れる(遅効性)
ボリンジャーバンドは、過去の株価の平均から算出しているので、株価が動いた後にボリンジャーバンドが描かれるということになります。
決済のタイミング(3-3.)のところで説明した図を見てもらうと分かると思いますが、-2σの向きが変わった時点(縦の点線)では既にローソク足は下落しています。つまり、株価が下落したから-2σの向きが変わったのです。
ボリンジャーバンドに限ったことではありませんが、こういった指標には必ず遅効性があるということを意識して使わなければなりません。
シグナルが発生しても株価が動くとは限らない
当然ですが、シグナルが発生したからといって、株価が思った方向に動くとは限りません。
下図を見て頂くと分かると思いますが、矢印のところで+2σの線を突き抜けているので「今後上昇するかも」と予想できますが、上昇は続かずすぐに下落しています。
シグナルの発生は「予想することができる」というだけで「必ずそうなる」という訳ではないということを頭に入れておいてください。
もし、このような局面に遭遇した場合、不要な損失を避けるために、あらかじめ「ストップ注文」を入れておくことをオススメします。
万が一、株価が下げたときでも「ストップ注文」を入れておくことで、それ以上の損失を食い止める役割を果たします。
ボリンジャーバンドのチャート設定方法
ボリンジャーバンドを使用するためには設定が必要になりますが、設定項目は「線の本数・種類」と「期間」です。
まず、線の本数・種類ですが、1σ、2σ、3σのどれを何本表示させるのかというものです。
チャートソフトによっては3本表示できないものもあるようですので、あなたが使っているチャートソフトを確認してみてください。
次に、期間ですが、1項の「ボリンジャーバンドとは」で説明した通り、中心の線は「移動平均線」になるので、平均値を出すための期間になります。
「ボリンジャーバンド」の期間設定をどうすれば良いかということですが、基本的には標準値である「20」で設定して問題ないと思います。
それでは、SBI証券の「HYPER SBI(NEWチャート)」を使って設定方法について説明します。
NEWチャートを立ち上げて「価格指標」を開いて「ボリンジャーバンド」をダブルクリックします。
ダブルクリックするとボリンジャーバンドが表示されます。
次に、ボリンジャーバンドの線上にカーソルを合わせてダブルクリックします。
ハイパーSBIでは、初期設定では、±1σと±2σが表示され、期間は「12」になっているようですので、このままにするか、標準値の「20」に変更してください。
設定項目は、「期間」「乗数1」「乗数2」「移動平均計算方法」の4種類です。
「乗数1」「乗数2」というのはσのことで、2種類設定できます。乗数1と乗数2に同じ値を入れれば1種類の表示になります(3種類は表示できません)。
「移動平均計算方法」のところでは、移動平均線の種類と計算に使用する価格を選択できますが、一般的には「単純」と「終値」の選択でよいと思います。
まとめ
「ボリンジャーバンド」は、統計学に基づいているので、精度が高く信頼性も高い指標です。
今まで「何となく」や「勘」で売買していた方は、このような指標を取り入れることで売買タイミングを見極めることができるようになり、投資テクニックが数段レベルアップします。
株式投資で安定的な収益を上げていくためには、根拠に基づいて売買していくことが重要ですので、ぜひ「ボリンジャーバンド」をマスターしましょう。
ボリンジャーバンドについての関連記事は以下もあります。
より具体的なトレード手法や、他の指標と合わせたボリンジャーバンドの活用方法も紹介していますので、併せて読んでみてください。
●ボリンジャーバンドのさらに詳しい中級者向けの解説や
ボリンジャーバンドとRSIを併用した逆張りの手法
『簡単に売り時買い時がわかる!ボリンジャーバンド徹底活用方法』
●押し目買いの手法の解説。ボリンジャーバンドを使った手法も紹介しています
『押し目買いでリスクを抑え利益を得る絶好の買い場を見つける方法』
●デイトレード初心者必見!ボリンジャーバンドを使った逆張り手法のリアルトレード解説動画があります
『初心者が0からデイトレードで儲けるために必要な12ステップ』
9-2 ボリンジャーバンドで使った手法(逆張り)
●逆張りに有効な指標としてボリンジャーバンドが紹介されています
『逆張りとは|株を安く買って高く売るための“究極的”手法』
紫垣 英昭
この記事が気に入ったら
いいねしよう!
最新記事をお届けします。