7月相場の特徴と今年の注目銘柄は?「サマーラリー」「七夕天井天神底」徹底検証!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

7月相場は、アメリカ雇用統計や日米の金融政策決定会合といった毎月要チェックが必要なイベント以外には、特に大きなイベントもないため閑散としがちです。

ただ、7月には日本株ETFの決算があり、米国市場は上がりやすい「サマーラリー」という相場格言があります。

また、日本市場では「七夕天井天神底」とも言われます。

2021年7月相場では、東京オリンピックの開催が株式市場においても注目されるニュースになると思われます。

今回は、7月相場の特徴や相場格言「サマーラリー」「七夕天井天神底」について解説した上で、過去の7月相場の動向や2021年7月相場で注目される銘柄やニュースについて紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 7月相場の特徴や相場格言「サマーラリー」「七夕天井天神底」についてわかる
  • 過去の7月相場の動向や2021年7月相場で注目される銘柄やニュースについてわかる
  • どのような視点を持って、アフターコロナ関連銘柄を押さえておくべきかを学べる

7月相場の特徴

7月相場は、6月末決算の銘柄を中心に、7月初旬頃に掛けては動きやすい傾向があります。

ただ、相場全体が閑散としやすい8月を前に、相場も夏休みに入りやすい時期でもあります。

7月特有の注目イベントは特になく、7月第1週金曜日のアメリカ雇用統計、7月中旬~下旬に開かれる日銀金融政策決定会合、アメリカのFOMCといった毎月要チェックが必要なイベントをいつも通りにチェックしておくことが欠かせません。

また、7月には、日本株ETFの決算(分配金)が集中することも大きな特徴の一つです。

ETF売買の大半を占める野村アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、日興アセットマネジメントの3大運用会社が運用する日本株ETFの決算はいずれも7月となっています。

日銀も投資しているTOPIX連動型ETF【1306】NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信や、日経平均連動型ETFの【1321】NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信など、日本株ETFの分配金は7月初めの権利付き最終日に保有していることで分配金が得られます。

なお、ETF売買の大半を占める日本株ETFは7月に決算が集中していますが、米国株ETFや世界株ETFなどはこの限りではありません。

7月相場の相場格言について

7月相場には日米で有名な2つの相場格言があります。

米国の7月相場格言「サマーラリー」

「サマーラリー」とは、米国の7月相場格言として知られているものです。

7月4日の米国独立記念日(インデペンデンスデイ)から、9月第1月曜日の労働者の日(レイバーデー)までの夏場に掛けて、株価が上昇しやすいアノマリーを意味します。

「サマーラリー」に株価が上がりやすくなる要因としては、投資家が長期休暇(バカンス)に入る前にボーナスで株を買う傾向があるためと言われています。

ただ、必ずしも「サマーラリー」通り、夏に株高になるというわけではなく、あくまでアノマリー(経験則)の一つとして認識しておくようにしましょう。

日本の7月相場格言「七夕天井天神底」

「七夕天井天神底」とは、日本の7月相場格言として知られているものです。

「七夕天井天神底」という言葉通り、7月7日の七夕までは株価上昇しますが、大阪で天神祭が行われる7月25日前後に向けて株価が下落するというアノマリーです。

「七夕天井天神底」が実現する背景としては、好決算となった6月決算銘柄が買われやすく、個別銘柄の配当金やETFの分配金を再投資する動きが出ることから、七夕に掛けて買われやすいとされます。

しかし、七夕以降はマーケット全体で材料不足となり、資金が入ってきづらくなるため下落していくとされます。

とはいえ、「七夕天井天神底」も、毎年必ずしもこの通りになるわけではありません。

あくまでアノマリーの一つに過ぎないと頭に入れておくようにしましょう。

過去の7月相場を徹底検証!

NYダウと日経平均株価について過去の7月相場の動きをチェックしておきましょう。

NYダウの7月相場

次のチャートは、NYダウに連動するETF【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信の株価チャートとなります。

【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信の月足チャート

2013年から2020年まで直近8年分の7月相場を見てみると、上昇の陽線が目立ちますが、前後の月に比べると小さい値動きとなっている傾向も見てとれます。

NYダウの7月の値動きについて表にしてみると次の通りです。

※上記チャートは連動ETFですが、こちらの表はNYダウのものとなります。

7月始値

7月終値

値動き

2013年

14,911.60

15,499.54

+587.94

2014年

16,828.53

16,563.30

-265.23

2015年

17,599.96

17,689.86

+89.9

2016年

17,924.24

18,432.24

+508.0

2017年

21,392.30

21,891.12

+498.82

2018年

24,161.53

25,415.19

+1,253.66

2019年

26,805.86

26,864.27

+58.41

2020年

25,879.38

26,428.32

+548.94

直近8年間の7月のNYダウの値動きを見てみると、上昇が7回、下落は2014年の1回のみとなっており、「サマーラリー」の相場格言通りになっていることが分かります。

日経平均株価の7月相場

日経平均株価の7月相場を見ていきましょう。

日経平均株価の月足チャート

日経平均株価の7月相場は、前後の月と比べると小幅な値動きとなっている傾向が見てとれます。

イギリスのEU脱退(ブリグジット)を受けて6月に暴落した2016年には、7月に大きな反発となりました。

また、2013年と2020年の7月相場では上ヒゲ陰線となっており、「七夕天井天神底」の値動きになったと言えます。

日経平均株価の7月の値動きについて表にしてみると次の通りです。

7月始値

7月終値

値動き

2013年

13,852.50

13,668.32

-184.18

2014年

15,326.20

15,620.77

+294.57

2015年

20,329.32

20,585.24

+255.92

2016年

15,682.48

16,569.27

+886.79

2017年

20,055.80

19,925.18

-130.62

2018年

21,811.93

22,553.72

+741.79

2019年

21,729.97

21,521.53

-208.44

2020年

22,121.73

21,710.00

-411.73

直近8年間の6月の日経平均株価の値動きは、上昇が4回、下落が4回となっています。

7月相場はイベントも特にないため、日本市場は横ばい傾向が強いと言えます。

過去に大きな動きがあった7月相場はどうなっていた?

日経平均株価が大きく上昇した2016年と2018年の7月相場、直近の2020年の7月相場について詳しく見ていきましょう。

2016年の7月相場

2016年の7月相場は、6月末のイギリスのEU離脱(ブリグジット)ショックによる暴落から反発する展開となりました。

日経平均株価の日足チャート(2016年7月)

2016年7月に特に大きな転換点となったのが、世界的ゲームメーカーの【7974】任天堂です。

次のチャートは任天堂の月足チャートになりますが、2016年7月に大きな出来高を伴って上昇相場が始まったことが分かります。

【7974】任天堂の月足チャート

2016年7月には「ポケモンGO」が世界的ブームとなったことを受けて任天堂株が急騰。

その後、任天堂はゲーム機「ニンテンドースイッチ」が世界的大ヒットとなり、コロナ禍で一人勝ちとなっている2021年に至ります。

この5年間の任天堂株の上昇相場は、ブリグジットショックからの反発となった2016年7月から始まりました。

2018年の7月相場

2018年の7月相場では、日経平均株価は大きな上昇となりました。

日経平均株価の日足チャート(2018年7月)

2018年7月相場は、7月だけで見てみると日経平均株価は上昇していますが、中期的に見ると横ばいの流れの中の展開となっていたと言えます。

「七夕天井天神底」のアノマリーとは真逆の展開となり、七夕に底値を付け、天神祭りの前に天井を付ける形になりました。

2020年の7月相場

2020年7月相場は、新型コロナ相場の調整局面となりました。

日経平均株価の日足チャート(2020年7月)

2020年7月相場では、七夕前後に上昇し、天神祭り後に下落するという「七夕天井天神底」に近い形となりました。

日経平均はほぼ横ばい~下落となりましたが、新型コロナ相場全盛だったということもあり、デジタルトランスフォーメーション(DX)や巣ごもり消費に関連する銘柄が大きく上昇しました。

特に大きく上げた銘柄としては、テレワーク関連銘柄の【3915】テラスカイなどが挙げられます。

【3915】テラスカイの日足チャート(2020年7月)

2021年の7月相場で注目されそうな銘柄は?

2021年の7月相場で注目されそうなテーマや銘柄について押さえておきましょう。

東京オリンピック関連銘柄

2021年7月の注目ニュースは、7月23日から開催される東京オリンピックに尽きると言ってよいでしょう。

東京オリンピックを無事に開催できれば、ワクチン接種の加速とあいまって、経済正常化が本格化することも期待されるだけに、マーケットにとっても注目イベントの一つであることは間違いありません。

オリンピックの放映権料が期待される広告代理店大手の【4324】電通グループは、2021年4月以降反発し続けており、マーケットはオリンピック開催に期待していることが分かります。

【4324】電通グループの日足チャート

アフターコロナ関連銘柄

東京オリンピックを無事に開催できれば、「感染対策をしっかりすれば、大規模イベントを実施しても問題ない」というコンセンサスが形成される効果が期待されます。

特に、新型コロナ禍で需要が壊滅してしまった外食・旅行・エンタメは、これまで押さえられていた消費欲が爆発して特需が発生することが期待されています。

新型コロナからの経済正常化で特需が期待されるテーマ株は「アフターコロナ関連銘柄」とも呼ばれており、2020年11月にファイザーがワクチン開発を完成してから反発傾向にあります。

次の株価チャートは、旅行会社大手【9603】エイチ・アイ・エスの月足チャートになりますが、コロナ前の株価はまだ遠いものの、2021年に入ってからの反発傾向が明らかです。

【9603】エイチ・アイ・エスの月足チャート

旅行株や鉄道株、航空株などは、ほとんどの企業が赤字決算に転落する事態となっていますが、株価はアフターコロナの特需を見込んで最悪期は脱しています。

東京オリンピックが無事に開催されることになれば、アフターコロナ関連銘柄は一段高となる可能性が高いものと見られます。

まとめ

今回は、7月相場の特徴や相場格言「サマーラリー」「七夕天井天神底」について解説した上で、過去の7月相場の動向や2021年7月相場で注目される銘柄やニュースについて紹介してきました。

7月相場は、6月決算銘柄や日本株ETFの決算などがありますが、相場も夏休みに入りやすい時期であり、NYダウ・日経平均ともに値動きは小さくなりやすい傾向があります。

直近8年分の相場動向を見てみると、米国市場は相場格言「サマーラリー」通りに上がりやすい傾向が見てとれますが、日本の相場格言「七夕天井天神底」が当てはまっているかどうかは微妙な所です。

2021年7月相場では、東京オリンピックの開催に注目が集まるものと思われます。

ワクチン接種も加速していることから、経済正常化で特需が期待されるアフターコロナ関連銘柄を中心に押さえておくとよいでしょう。

紫垣 英昭