「パワー半導体関連銘柄」日本企業が強い半導体×EVテーマ株をチェック

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

パワー半導体関連銘柄が、半導体×EVテーマ株として注目されています。

世界的な半導体需要の増大や脱炭素を背景に、半導体株やEV関連銘柄がマーケットで好調な値動きを維持していますが、パワー半導体関連銘柄もこの流れに続く形となっています。

パワー半導体は、半導体製造装置やシリコンウエハーと並んで日本企業が高い世界シェアを持つ半導体セクターです。

今回は、パワー半導体の概要や注目される背景について解説した上で、代表的なパワー半導体関連銘柄10銘柄をチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • パワー半導体の概要がわかる
  • パワー半導体が注目される背景を理解できる
  • 代表的なパワー半導体関連銘柄10銘柄をチャート付きでわかる

パワー半導体とは?

パワー半導体について理解し、世界的に需要が高まっている背景について押さえておきましょう。

パワー半導体の概要

パワー半導体とは、交流と直流を変換する、モーターを駆動させる、電圧や周波数を変えるなど、電力の制御や供給を行うことに特化した半導体です。

「パワーモジュール」と呼ばれることもあります。

具体的なパワー半導体としては、ダイオードやトランジスタ、IC(集積回路)などが挙げられます。

パワー半導体は、パソコンやスマホ、テレビやエアコンなど、電源供給を必要とする製品には欠かせないものです。

一般的に半導体と呼ばれる「半導体メモリ」は演算や記憶をすることに最適化されていますが、パワー半導体は電源供給を行うことに特化されています。

半導体メモリとパワー半導体の違いを示す比喩として、半導体メモリは「脳」、パワー半導体は「筋肉」の役割を果たしていると説明されます。

パソコンやスマホなどの電子機器には半導体メモリもパワー半導体も搭載されていますが、半導体メモリはソフトで計算し、データを保存するなど「脳」の働きをしており、パワー半導体は機器全体に電源を供給する「筋肉」の働きをしているということです。

EVシフトや脱炭素を受けてパワー半導体の需要が高まっている

世界的なIoTやDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れから、新型コロナ禍でも半導体メモリの需要は好調です。

半導体の供給が追い付かないことから自動車工場などでは休業する動きも出てきているほどです。

一方で、機器の電力供給には欠かせないパワー半導体の需要も、世界的なEVシフトや脱炭素の流れを受けて高まることが確実な情勢となっています。

世界的な半導体調査会社のYole Développement社の予測によると、世界のパワー半導体市場は2019年の175億ドルから、年平均+4.3%で成長し、2025年には225億ドル規模に達する見込みとのことです。

特に、EVシフトによってガソリン車からEVにシフトすれば、エンジンが全てモーターに置き換わることになるため、パワー半導体には相当のインパクトがある需要が生まれることが期待されます。

パワー半導体関連銘柄は、EVに関連する重要テーマ株として押さえておくようにしましょう。

パワー半導体関連銘柄は半導体×EVテーマ株として注目される

パワー半導体関連銘柄が注目される背景について押さえておきましょう。

日本企業には世界的なパワー半導体企業が多い

パワー半導体は、半導体分野で日本企業が強みを持つ数少ないセクターです。

半導体市場動向調査会社Yole Développement社によると、世界のパワー半導体企業トップ10社のうち、5社が日本企業となっています。

パワー半導体の世界トップはドイツのインフィニオン社、世界2位はアメリカのオン・セミコンダクター社ですが、世界5位に三菱電機、世界6位にローム、世界7位に東芝、世界8位にルネサスエレクトロニクス、世界9位に富士電機となっています。

三菱電機・ローム・東芝・ルネサスエレクトロニクス・富士電機の5社の売り上げを合計すると、インフィニオンやオン・セミコンダクターに匹敵することから、日本はパワー半導体強国であることに違いありません。

そして、パワー半導体は参入障壁が高いことから、今後のEVシフトでも日本企業は恩恵に授かれることが期待できます。

ただ、日本のパワー半導体企業は数が多く、スケールメリットを生かせないことがリスクとして指摘されており、今後はパワー半導体を巡って再編の動きが加速することも考えられます。

半導体株やEV関連銘柄は大きく買われている

パワー半導体関連銘柄は、半導体×EVで注目されるテーマ株です。

パワー半導体関連銘柄について見ていく前に、半導体株やEV関連銘柄がいかに大きな注目を集めているかを確認しておきましょう。

半導体メモリ分野では、今や日本企業は見る影もありませんが、半導体製造装置や半導体材料のシリコンウエハーでは日本企業は現在でも世界トップクラスのシェアを誇っています。

半導体製造地大手の【8035】東京エレクトロンや【6857】アドバンテスト、【6920】レーザーテックなどは長期的な株価上昇が続いており、新型コロナ相場でも真っ先に反発し、東証全体をけん引するセクターとなりました。

【8035】東京エレクトロンの月足チャート

なお、日本株において「半導体株」と言うと、半導体製造装置やシリコンウエハーを手掛けている銘柄を指すことが一般的です。

投資ニュースなどでは、「半導体株(半導体関連銘柄)」と「パワー半導体関連銘柄」は別物であると認識しておくようにしましょう。

続いて、2020年秋から世界的な流れとなった「脱炭素」や「EVシフト」も、マーケットで大きな注目を集めています。

特に、モーター最大手の【6594】日本電産は、日本企業の中でも最もEVシフトの恩恵を受けると期待される企業です。

【6594】日本電産の月足チャート

半導体とEVはマーケットをけん引する注目テーマ株となっており、この流れはパワー半導体関連銘柄にも波及しつつあります。

パワー半導体関連銘柄10選!

日本株の代表的なパワー半導体関連銘柄を見ていきましょう。

【6503】三菱電機

パワー半導体企業として世界5位の【6503】三菱電機は、日本株を代表するパワー半導体関連銘柄です。

同社は、パワー半導体の中でもIGTB(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)に強みを持つことで知られています。

【6503】三菱電機の月足チャート

三菱電機の株価は、長期的には横ばいとなっています。

日本最大のパワー半導体関連銘柄ではありますが、株価に反映されているとは言えません。

パワー半導体企業としての売り上げはトップではあるものの、企業全体の事業の中で見るとパワー半導体の比率が小さいことが要因だと思われます。

【6963】ローム

パワー半導体世界6位の【6963】ロームは、自動車向けのパワー半導体に強みを持つことで知られているパワー半導体関連銘柄大手です。

【6963】ロームの月足チャート

ロームの株価は、中長期的には横ばい気味ですが、2020年後半から大きく反発していることが分かります。

EVシフトが好感されたと見てよいでしょう。

【6502】東芝

パワー半導体世界7位の【6502】東芝は、パワー半導体を成長事業に掲げています。

同社は、稼ぎ頭だった半導体メモリ大手のキオクシア(旧・東芝メモリ)は売却してしまいましたが、2019~2023年の5年間でモーター制御などに使うパワー半導体の増産に約1,000億円を投じる方針です。

【6502】東芝の月足チャート

東芝の株価は、2015年に不正会計問題で急落してからは横ばいとなっています。

ただ、2020年秋以降には反発している傾向が見てとれます。

【6723】ルネサスエレクトロニクス

パワー半導体世界8位の半導体メーカー【6723】ルネサスエレクトロニクスは、代表的なパワー半導体関連銘柄です。

また、半導体株(半導体関連銘柄)にも位置付けられる銘柄です。

同社は、2017年に、アメリカのパワー半導体大手インターシルを完全子会社化したことでも知られています。

【6723】ルネサスエレクトロニクスの月足チャート

ルネサスエレクトロニクスの株価は、2018年~2020年3月のコロナショックまでは下落が続いていましたが、それ以降は反発しています。

新型コロナ相場での半導体株の強さを象徴する値動きです。

【6504】富士電機

パワー半導体世界9位の【6504】富士電機は、パワー半導体で攻勢を強めているパワー半導体関連銘柄です。

同社は、2019年から2023年までにパワー半導体事業に1,200億円を投じることを発表しており、EVシフトを受けて投資計画を1年前倒しにすると報じられています。

【6504】富士電機の月足チャート

富士電機の株価は、新型コロナ相場で好調です。

世界的なEVシフトが進んだ2020年秋以降にも上昇は止まらず、直近では一時5,000円台に乗せて上場来高値を更新しました。

パワー半導体大手5社の中では、最もパワー半導体関連銘柄として買われていると見てよいのではないでしょうか?

【6707】サンケン電気

自動車や家電向けのパワー半導体に強い【6707】サンケン電気は、EVシフトを受けて大きく買われているパワー半導体関連銘柄です。

同社は、車載用パワーマネージメントICに強みを持っていることで知られています。

【6707】サンケン電気の月足チャート

サンケン電気の株価は、世界中でEVシフトの波が到来した2020年秋以降、大きく上昇し続けていることが分かります。

EVシフトを受けて、同社の株価は約2.5倍になりました。

【6890】フェローテック

半導体製造装置やパワー半導体などを手掛ける【6890】フェローテックは、パワー半導体関連銘柄にも位置付けられる半導体株です。

同社は、「パワー半導体用基板」を主要8製品の一つとしており、EVシフトを受けてパワー半導体基板の生産能力を増強するとのことです。

【6890】フェローテックの月足チャート

フェローテックの株価は、2018年からは下落していましたが、2020年後半の上昇によって、ほぼ戻しつつあります。

【6882】三社電機製作所

パナソニック系でパワー半導体や電源デバイスを展開する.【6882】三社電機製作所も、パワー半導体関連銘柄としてたびたび名前が挙がる銘柄です。

【6882】三社電機製作所の月足チャート

三社電機製作所の株価は、2018年から2020年3月までに3分の1以下になってしまいましたが、2020年秋以降には反発傾向にあることが分かります。

【6844】新電元工業

パワー半導体を中心とする半導体製品やEV用急速充電器を手掛ける【6844】新電元工業は、EVシフトで注目されるパワー半導体関連銘柄です。

【6844】新電元工業の月足チャート

新電元工業の株価は、2020年9月に底を打ってから反発傾向にあります。

コロナショック以降は安値圏で停滞していましたが、EVシフトを受けてコロナショックで下落した分はほとんど戻しました。

【6337】テセック

半導体用分類ハンドラやパワー半導体テストシステムを手掛ける【6337】テセックも、パワー半導体関連銘柄に位置付けられる銘柄です。

【6337】テセックの月足チャート

テセックの株価は、2020年末から2021年に掛けて大きく反発していることが分かります。

まとめ

今回は、パワー半導体の概要や注目される背景について解説した上で、代表的なパワー半導体関連銘柄10銘柄をチャート付きでご紹介してきました。

パワー半導体は電源供給に特化した半導体です。

半導体メモリが「脳」の役割を果たすとしたら、パワー半導体は「筋肉」の役割を果たすもので、電化製品には欠かせません。

パワー半導体は、世界トップ10社のうち5社が日本企業となっており、半導体製造装置やシリコンウエハーなどと並んで日本企業が強みを持つ半導体分野です。

世界的にEVシフトの波が到来した2020年秋以降から、パワー半導体関連銘柄が買われている傾向を見ることができます。

EVシフトの流れは今後も継続するであろうことから、パワー半導体の需要はさらに高まると期待できます。

今後も、半導体×EVテーマ株としてパワー半導体関連銘柄を押さえておきましょう。

紫垣 英昭