紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
2023年5月29日から、「日経225マイクロ先物」「日経225ミニオプション」が取引できるようになりました。
「日経225マイクロ先物」は、従来の「日経225ミニ先物」に比べて10分の1のロットとなり、先物取引をより始めやすくなりました。
「日経225ミニオプション」は、従来の「日経225オプション」より少額取引が可能となり、投資初心者がオプション取引を学ぶ上でおすすめです。
この記事では、「日経225マイクロ先物」「日経225ミニオプション」の概要やメリット・デメリットについて解説した上で、どのような人に向いているかについても取り上げています。
- 「日経225マイクロ先物」「日経225ミニオプション」の概要がわかる
- 「日経225マイクロ先物」「日経225ミニオプション」のメリット・デメリット学べる
- 「日経225マイクロ先物」「日経225ミニオプション」が自分に向いているかについて考えることができる
「日経225マイクロ先物」とは?
日経225の先物取引について理解した上で、「日経225マイクロ先物」について押さえておきましょう。
そもそも日経225先物取引とは?
日経225先物取引とは、日経平均株価(日経225)を対象として、大阪証券取引所に上場しているデリバティブ商品です。「日経平均先物」とも呼ばれています。
日経225先物取引では、日経225先物を買った場合には日経平均株価が上昇すると利益になり、日経225先物を売った場合には日経平均株価が下落すると利益になります。
日経225先物取引 |
買い |
売り |
日経平均株価が上昇 |
利益 |
損失 |
日経平均株価が下落 |
損失 |
利益 |
日経225先物は、1年間で4つの限月(3月、6月、9月、12月)が取引されており、最も取引されているのは、一番期限の近い「期近物」といわれているものです。
日経225先物の種類(2024年1月7日時点)
日経225先物の取引時間は、月曜日から金曜日までの午前8:45~15:45、夜間は16:45から翌午前6:00まで取引することができます。
※2024年11月5日から、東京証券取引所の株式取引時間が30分延長されて大引け時刻が15:00から15:30までとなったことに伴い、日経225先物の取引時間も15:15から15:45に延長となっています。
日経225先物取引には、次のようなメリットがあります。
・売り注文を出せるため、下落相場でも利益を出せるチャンスがある。
・レバレッジ取引により資金効率が高くなる。
・個別株投資のように銘柄選択する必要がない。
・取引量が多いため流動性リスクがない。
「日経225マイクロ先物」は必要資金が少ない
日経225先物には、通常の「日経225先物」、取引単位を小さくした「日経225ミニ先物」があり、2023年5月29日からは「日経225マイクロ先物」が登場しました。
「日経225ミニ先物」「日経225マイクロ先物」に対して、通常の「日経225先物」は「ラージ」と呼ばれることもあり、それぞれの取引単位は次のようになっています。
日経225マイクロ先物(マイクロ) |
日経225ミニ先物(ミニ) |
日経225先物(ラージ) |
|
取引単位 |
10倍 |
100倍 |
1,000倍 |
「日経225マイクロ先物」は、取引単位が「日経225ミニ」の10分の1となり、従来よりも必要資金が少なくなりました。
例えば、日経平均株価が4万円(40,000円)のとき、日経225先物の1枚あたりの取引金額および必要資金は次のようになります(レバレッジ20倍で計算)。
日経225マイクロ先物(マイクロ) |
日経225ミニ先物(ミニ) |
日経225先物(ラージ) |
|
取引単位 |
10倍 |
100倍 |
1,000倍 |
取引金額 |
40万円 |
400万円 |
4,000万円 |
必要資金 |
2万円 |
20万円 |
200万円 |
なお、上記はあくまでレバレッジ20倍で計算したときの必要資金となります。リスク軽減のため、レバレッジを抑えたい場合には、さらに大きな金額が証拠金として必要です。
「日経225先物(ラージ)」は取引金額が大きくなるため、初心者には向いていません。
先物初心者には「日経225ミニ先物(ミニ)」がおすすめでしたが、今後はより少ない資金で取引できる「日経225マイクロ先物(マイクロ)」で売買するようにしましょう。
「日経225マイクロ先物」のメリット・デメリットを解説!
「日経225マイクロ先物」のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
「日経225マイクロ先物」のメリット:より少額取引が可能となった
「日経225マイクロ先物」は、「日経225ミニ先物」に比べて、より少額での取引が可能となりました。
この点は、資金が少ない投資初心者だけではなく、ある程度の資金を保有している投資家にとってもメリットとなります。
例えば、「日経225ミニ先物」では1枚当たり20万円の取引金額となると、1回50万円で取引したい場合にはできません。
「日経225マイクロ先物」では、1枚当たり2万円刻みとなるなど、このような小さい端数の金額でも取引可能となります。
「日経225マイクロ先物」でロットが小さくなったことで、より細かいポジション調整やリスク管理ができるようになりました。
「日経225マイクロ先物」は投資障壁が小さいため、今後はより取引が活発化し、流動性が「日経225ミニ先物(ミニ)」より大きくなることも期待されます。
「日経225マイクロ先物」のデメリット:手数料が高い
「日経225マイクロ先物」のデメリットとしては、手数料が高いことが挙げられます。
SBI証券の日経225先物取引の手数料は次の通りです(2025年1月6日時点)。
SBI証券の手数料 |
日経225マイクロ先物 |
日経225ミニ先物 |
日経225先物 |
立会約定手数料 (1枚あたり) |
10円(税込11円) |
35円(税込38.5円) |
250円(税込275円) |
手数料(日経225先物に換算) |
1,000円(税込1,100円) |
350円(税込385円) |
250円(税込275円) |
※出典:SBI証券「先物・オプション取引 サービス概要」
同じ取引量に換算すると、「日経225マイクロ先物」の手数料は、「日経225ミニ先物」と比較して3倍弱、「日経225先物」と比較して4倍となっています。
大口取引ができるなら、「日経225先物」や「日経225ミニ先物」の方が手数料を安く抑えられます。
「日経225ミニオプション」とは?
日経225オプション取引について理解した上で、「日経225ミニオプション」について押さえておきましょう。
そもそも日経225のオプション取引とは?
日経225オプション取引は、将来の特定日(SQ日)に、日経平均株価(日経225)を、特定の価格(権利行使価格)で、買う権利(コールオプション)もしくは売る権利(プットオプション)を取引するものです。
オプション取引は、先物取引とやや似ていますが、権利を売買する点に違いがあります。
・コールオプション:将来、決められた価格で買う権利を取引する。
・プットオプション:将来、決められた価格で売る権利を取引する。
さらに、コールオプション・プットオプションのそれぞれに対して、買い注文・売り注文が可能です。
オプション取引においては、買う側(権利を得る側)の損失はプレミアム(オプション料)の範囲で限定されますが、売る側(権利を渡す側)はプレミアムを受け取れる一方で損失リスクは理論上無限大となります。
日経平均株価と日経225オプション取引の関係についてまとめると次のようになります。
日経225オプション取引 |
コールオプションの買い |
コールオプションの売り |
プットオプションの買い |
プットオプションの売り |
日経平均株価が上昇 |
利益 |
損失 |
損失 |
利益 |
日経平均株価が下落 |
損失 |
利益 |
利益 |
損失 |
例えば、日経平均株価が40,000円のときに「41,000円で買うコールオプション」を買う場合は次の通りです。
-オプションの満期時に日経平均が42,000円まで上がると、1,000円の利益になる。
-日経平均が39,000円まで下がったら、オプションは行使されずプレミアムが損失となる。
オプション取引のメリットとしては、次の点が挙げられます。
・少額で大きなリターンを狙える。
・下落相場でも利益を出せる。
・リスクヘッジの手段として活用できる。
オプション取引のデメリットとしては、次の点が挙げられます。
・複雑で初心者には理解が難しい。
・売り手側のリスクが大きい。
・満期までに権利行使しないとオプション料が無駄になる。
「日経225ミニオプション」では少額取引が可能になった
日経225オプション取引は、「日経225オプション」のみとなっていましたが、2023年5月29日から少額取引が可能となった「日経225ミニオプション」が登場しました。
日経225ミニオプション |
日経225オプション |
|
取引単位 |
100倍 |
1,000倍 |
必要資金(買い) |
数百円~数万円 |
数千円~数十万円 |
必要証拠金(売り) |
日経225オプションの10分の1 |
必要 |
オプション取引では、買いの場合には資金が必要となり、売りの場合には必要証拠金を預ける必要があります。
「日経225ミニオプション」は、必要資金(買い)・必要証拠金(売り)ともに、「日経225オプション」の10分の1です。
オプション初心者には、少額取引から始められる「日経225ミニオプション」がおすすめです。
「日経225ミニオプション」のメリット・デメリットを解説!
「日経225ミニオプション」のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
「日経225ミニオプション」のメリット:少額取引が可能となった
「日経225ミニオプション」では、少額で日経平均のオプション取引が可能となりました。
オプション取引は、仕組みが複雑であるなど敷居が高いですが、少額取引が可能となったことで投資初心者にも始めやすくなりました。
「日経225ミニオプション」では、より細かいポジション調整やリスク管理ができるようになり、流動性の上昇が期待される点なども、「日経225マイクロ先物」のメリットと同様です。
「日経225ミニオプション」のデメリット:流動性リスクが懸念される
SBI証券の日経225オプション取引の手数料は次のようになっています(2025年1月6日時点)。
SBI証券の手数料 |
日経225ミニオプション |
日経225オプション |
立会約定手数料 (1枚あたり) |
売買代金の0.2%(税込0.22%) |
売買代金の0.2%(税込0.22%) |
※出典:SBI証券「先物・オプション取引 サービス概要」
オプション取引については、手数料の差は見られず、デメリットとはなっていません。
一方、オプション取引は、先物取引に比べると、そこまで必要資金が多くならないため、先物に比べると少額化のメリットはそこまで大きくないとも言えます。
「日経225ミニオプション」は少額化しても、「日経225オプション」に比べてそこまで多く取引されないため、流動性リスクが懸念される部分があります。
流動性リスクとは、買い注文や売り注文が少なく、希望する価格で売買ができず、「買いたくても買えない」「売りたくても売れない」など、不利な価格で取引するしかない状況のことです。
証券会社で、「日経225ミニオプション」の手数料が「日経225オプション」より高くなっていないのは、手数料を高くしてしまうと、誰も取引するようにならないためではないかとも推測されます。
「日経225マイクロ先物」「日経225ミニオプション」はどんな人に向いている?
「日経225マイクロ先物」「日経225ミニオプション」を始めとする、日経平均株価(日経225)を対象とした金融商品について、どんな人に向いているかをまとめておきましょう。
「日経225マイクロ先物」は少額・短期で日経平均から利益を得たい人向け
「日経225マイクロ先物」は、「日経225ミニ先物」の10分の1サイズで、少額資金でも先物取引が可能です。
先物取引では、約20倍のレバレッジが掛けられるため、日経平均株価の短期の値動きを利用して利益を出したい場合におすすめです。
また、リスクを抑えつつ相場に慣れるためのツールとしても活用しやすいため、少額から先物取引を試したい投資初心者にも最適となります。
ただ、先物取引はレバレッジ効果が高い点には注意しておきましょう。
「日経225ミニオプション」はオプション取引を少額資金で試したい人向け
「日経225ミニオプション」は、少額でオプション取引を学びたい投資初心者に適しています。
「日経225ミニオプション」は流動性が低いため、本格的なオプション取引をしたい場合には、「日経225オプション」の方が適しています。
「日経225ミニオプション」でオプション取引を学んでから、「日経225オプション」に移行するのがおすすめです。
日経225の長期投資には日経平均連動型の投資信託・ETF
日経平均株価で長期投資(インデックス投資)をしたい場合には、日経平均株価に連動する投資信託やETF(上場投資信託)がおすすめです。
日経平均株価に連動する投資信託やETFは、いずれも新NISAに対応しています。
具体的には、東証ETFなら【1329】iシェアーズ・コア 日経225 ETFや【1321】NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信などが、新NISAの成長投資枠で投資できます。
投資信託なら「<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド」や「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」は、新NISAのつみたて投資枠から投資可能です。
日経平均株価に連動する投資信託やETFを選ぶ際には、信託報酬が低い銘柄を選ぶようにしましょう。
短期のレバレッジ運用にはレバレッジ型・ダブルインバース型ETFもアリ
先物取引にリスクを感じる場合には、レバレッジ型ETF・ダブルインバース型ETFも選択肢となります。
レバレッジ型ETFとは、日経平均株価の前日比2倍の値動きに連動するもので、【1458】楽天ETF‐日経レバレッジ指数連動型などが代表的です。
ダブルインバース型ETFは、短期の下落相場向けの銘柄で、日経平均株価の前日比-2倍の値動きに連動します。【1459】楽天ETF‐日経ダブルインバース指数連動型などが代表的銘柄となっています。
いずれも、日経平均株価の短期的な値動きに対して利益を狙いたい場合に向いています。
ただ、分配金が出ず、長期的には指数と乖離していくリスクがあるため、長期保有には不向きであり、新NISAには対応していません。
まとめ
この記事では、「日経225マイクロ先物」「日経225ミニオプション」の概要やメリット・デメリットについて解説した上で、どのような人に向いているかについても取り上げてきました。
「日経225マイクロ先物」は、従来の「日経225ミニ先物」に比べて10分の1のロットとなったため、より少額資金で先物取引をしやすくなり、流動性の面でも期待できます。
ただ、手数料では不利になるため、ある程度の資金がある場合には、「日経225マイクロ先物」はそこまでメリットはありません。
「日経225ミニオプション」は、先物取引に比べるとオプション取引は少額取引のメリットが小さく、流動性リスクがあるため、あくまで投資初心者がオプション取引を学ぶ上で有用な商品です。
紫垣 英昭
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