米国株でインデックス投資を始めよう。NYダウ・S&P500・NASDAQの違い

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

米国株投資を始める個人投資家が増えていますが、米国株投資の中でも合理的に資産形成ができるのが米国株インデックス投資です。

米国株インデックス投資は、ETFや投資信託によって米国株に長期・積立・分散投資をする投資手法となっており、非課税制度のiDeCoやNISAを活用できることもポイントです。

米国株インデックス投資をする上では、米国株の代表的な3つのインデックス指数「S&P500指数」「ダウ平均株価」「NASDAQ100指数」の3つを押さえておきましょう。

今回は、米国株インデックス投資の基本について解説した上で、「S&P500指数」「ダウ平均株価」「NASDAQ100指数」の特徴や連動するETF・投資信託について紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 米国株インデックス投資の基本についてわかる
  • S&P500指数」「ダウ平均株価」「NASDAQ100指数」の特徴や連動するETF・投資信託についてわかる
  • 新型コロナ相場で留意するべきことがわかる

米国株投資のインデックス投資とは?

年金2000万円問題や早期退職FIREなど資産形成に関するニュースが話題となっている中で、「米国株インデックス投資」という言葉を聞く機会も増えているのではないでしょうか?

「米国株インデックス投資」とは、「S&P500指数」や「ダウ平均株価」といった米国株指数(インデックス)に連動するETFや投資信託に投資して資産形成を行うものです。

一般的に「米国株投資」というと、GAFAを始めとする成長株や、コカコーラやAT&Tといった高配当銘柄など、米国株の個別銘柄に投資するものです。

「米国株インデックス投資」は、複数銘柄から構成される米国株インデックスに投資するものであるため、個別銘柄に投資する米国株投資に比べてリスクが小さいという利点があります。

また、長期で見ると、インデックス投資は、個別銘柄への投資に比べて平均的に大きなリターンを期待できるということが、多くの統計からも明らかになっています。

投資初心者が、よく分からない米国株個別銘柄へ投資をするのと、「S&P500指数」でインデックス投資をする場合とでは、どちらが安全に資産形成をできるかは言うまでもありません。

米国株インデックス投資のメリット

米国株インデックス投資のメリットを一言で言うと、成長が期待できる米国株で、より安全に長期・積立・分散投資による資産形成ができることです。

米国株インデックス投資のメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。

ETF・投信のため手軽に投資できる

米国株投資をするとなると、証券会社の総合口座に加えて、外国株口座などを開設しなければいけません。

大手ネット証券で見ても、SBI証券・楽天証券・マネックス証券は米国株に力を入れていますが、松井証券やauカブコム証券では米国株は取り扱っていません。

また、米国株に投資するには、米ドルに換えなければいけないことも、ひと手間となります。

一方で、米国株インデックスに連動するETF・投信なら、総合証券を開設するだけで投資することが可能です。

東証に上場している米国株ETFは、日本株と同じ要領で投資可能です。

米国株投信についても、通常の投資信託と同様に投資することができます。

米国株インデックス投資は、個別銘柄に投資する米国株投資に比べて、非常に簡単に行うことができるのです。

iDeCoやつみたてNISAを活用できる

利益が非課税となる個人投資家のための投資制度「iDeCo」や「つみたてNISA」を使えば、米国株インデックス投資でより効率的な資産形成をすることが可能です。

「iDeCo」では、証券会社ごとに取り扱っている投資信託が異なりますが、多くの証券会社で米国株インデックス投信を取り扱っています。

「つみたてNISA」では、「S&P500指数」と「ダウ平均株価」に連動する米国株投信が対象となっています。

「iDeCo」と「つみたてNISA」では米国株インデックス投信に投資できますが、一般NISAを使って、東証に上場している米国株ETFで資産形成することも可能です。

また、2024年から始まる新NISAは、通常のNISAとつみたてNISAの2階建てとなっていますが、同様に米国株投信・米国株ETFに投資することが可能になるものと思われます。

米国株インデックス投資をするなら、「iDeCo」、「つみたてNISA」もしくは「NISA」を併用して、少しでもお得に米国株投資をすることをおすすめします。

米国株インデックスは「S&P500指数」「ダウ平均株価」「NASDAQ100指数」を要チェック!

米国株インデックス投資をする上では、米国株を代表する3大インデックス「S&P500指数」「ダウ平均株価」「NASDAQ100指数」の3つを押さえておく必要があります。

この3つの米国株指数は、日本株の動向にも大きな影響を与える重要指数です。

米国株インデックス投資をする上では、3つの指数について「特徴」や「構成銘柄」、「連動するETF・投信」について理解しておくことが重要です。

それぞれのインデックスの特徴や構成銘柄を理解した上で、連動するETF・投信を選択して投資するようにしましょう。

「S&P500指数」とは?

「S&P500指数」は、米国市場を代表する500銘柄から算出される代表的な米国株指数です。

「S&P500指数」の特徴

「S&P500指数」は、米国市場を代表する500銘柄について“時価総額加重平均”で算出される米国株指数です。

「S&P500指数」は、日本株指数でいうとTOPIXに相当する米国株指数となります。

「S&P500指数」は、500銘柄に分散されているため、銘柄分散のリスクヘッジがされていることがインデックス投資におけるメリットの一つです。

また、「S&P500指数」は“時価総額加重平均”で算出されるため、時価総額が大きいGAFAM(Google、Amazon、Facebook(Meta)、Apple、Microsoft)の寄与度が高いことが特徴です。

GAFAMの株価は、デジタルトランスフォーメーションが進んだ新型コロナ相場で大きく上昇したことから、「S&P500指数」は2020年から2021年に掛けて大幅高となっています。

「S&P500指数」の構成銘柄比率の参考値として、東証に上場するETF【2633】NEXT FUNDS S&P 500 指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信を見てみると次のようになっています。

※出典:日本取引所(https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/issues/files/2633-j.pdf)

 

銘柄名

構成比率

1

APPLE INC

5.6%

2

MICROSOFT CORP

5.3%

3

AMAZON.COM INC

3.4%

4

FACEBOOK INC-CLASS A

2.1%

5

ALPHABET INC-CL C

2.0%

また、米国株スクリーニングで有名なサイト「finviz」(https://finviz.com/)では、S&P500指数の構成比率や前日の値動きを視覚的に見ることが可能です。

「finviz」のS&P500指数

「S&P500指数」に連動するETF・投信

「S&P500指数」に連動するETF・投信について、いくつか見ていきましょう。

東証には「S&P500指数」に連動する米国株ETFがいくつか上場していますが、最も代表的なのは、「S&P500指数」の円換算値に連動する米国株ETF【1547】上場インデックスファンド米国株式(S&P500)です。

【1547】上場インデックスファンド米国株式(S&P500)の月足チャート

同ETFの直近5年間の値上がり率(2017年1月始値~2021年12月20日終値)は、+96.25%(2,887円→5,666円)となっています。

「S&P500指数」に連動する米国株投信は多くの商品があり、iDeCoとつみたてNISAの対象にもなっています。

iDeCoでは、SBI証券セレクトプランやマネックス証券で、「S&P500指数」に連動する米国株投信「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」を取り扱っています。

つみたてNISAでも、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は運用対象商品です。

「S&P500指数」に連動する米国株インデックスETF・投信をまとめると、次のようになります。

 

「S&P500指数」に連動するETF・投資信託

ETF

【1547】上場インデックスファンド米国株式(S&P500)など

iDeCo

「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(SBI証券セレクトプラン、マネックス証券)

つみたてNISA

「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」など

「ダウ平均株価」とは?

「ダウ平均株価」(NYダウ)は、米国株30銘柄から構成される世界で最も有名な株価指数です。

「ダウ平均株価」の特徴

「ダウ平均株価」(NYダウ)は、米国市場を代表する30銘柄について株価単純平均で算出される米国株指数です。

「ダウ平均株価」は、日本株指数でいうと日経平均株価に相当する米国株指数となります。

「ダウ平均株価」は、構成銘柄に配当利回りが大きい銘柄が多いことから、「S&P500指数」に比べると分配金が大きくなる傾向があることが、インデックス投資におけるメリットの一つです。

ただ、「ダウ平均株価」の構成銘柄は30銘柄と少ないことから、銘柄分散の点でリスクがあることには注意が必要です。

「ダウ平均株価」の構成銘柄比率の参考値として、東証に上場するETF【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信を見てみると次のようになっています。

※出典:日本取引所(https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/issues/files/1546-j.pdf)

 

銘柄名

構成比率

1

UNITEDHEALTH GROUP INC

7.74%

2

GOLDMAN SACHS GROUP INC

7.66%

3

HOME DEPOT INC

6.05%

4

MICROSOFT CORP

5.62%

5

SALESFORCE.COM INC

4.90%

「ダウ平均株価」に連動するETF・投信

「ダウ平均株価」に連動するETF・投信について、いくつか見ていきましょう。

東証には「ダウ平均株価」に連動する米国株ETFもいくつか上場していますが、野村アセットマネジメントが運用する【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信が最も代表的です。

【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信の月足チャート

同ETFの直近5年間の値上がり率(2017年1月始値~2021年12月20日終値)は、+69.73%(22,930円→38,920円)となっています。

「ダウ平均株価」に連動する米国株投信も多く、iDeCoとつみたてNISAの対象商品となっています。

iDeCoでは、SBI証券セレクトプランで「ダウ平均株価」に連動する「iFree NYダウ・インデックス」、マネックス証券で「たわらノーロード NYダウ」を取り扱っています。

つみたてNISAでは、ダウ平均に連動する「eMAXIS NYダウインデックス」が対象商品です。

「ダウ平均株価」に連動する米国株インデックスETF・投信をまとめると、次のようになります。

 

「ダウ平均株価」に連動するETF・投資信託

ETF

【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信など

iDeCo

「iFree NYダウ・インデックス」(SBI証券セレクトプラン)、「たわらノーロード NYダウ」(マネックス証券)

つみたてNISA

「eMAXIS NYダウインデックス」

「NASDAQ100指数」とは?

「NASDAQ100指数」は、米国のハイテク市場NASDAQを代表する100銘柄で構成される株価指数です。

「NASDAQ100指数」の特徴

「NASDAQ100指数」は、米国のハイテク市場NASDAQを代表する100銘柄について時価総額加重平均で算出される米国株指数です。

GAFAMを中心としたハイテク銘柄で構成されており、インデックス投資においては異次元のパフォーマンスを発揮している株価指数となっています。

ただ、新型コロナ相場においてはバブルも指摘されており、インデックス投資という観点で見るとリスクが高くなりつつあることには注意が必要です。

「NASDAQ100指数」の構成銘柄比率の参考値として、東証に上場するETF【1545】NEXT FUNDS NASDAQ-100®連動型上場投信を見てみると次のようになっています。

※出典:日本取引所ETF(https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/issues/files/1545-j.pdf)

 

銘柄名

構成比率

1

APPLE INC

11.33%

2

MICROSOFT CORP

10.14%

3

AMAZON.COM INC

7.66%

4

ALPHABET INC-CL C

4.18%

5

FACEBOOK INC-CLASS A

4.05%

「NASDAQ100指数」は、「S&P500指数」に比べてGAFAMの構成比率が2倍程度になっていることが分かります。

「NASDAQ100指数」に連動するETF・投信

「NASDAQ100指数」に連動するETF・投信について、いくつか見ておきましょう。

東証には「NASDAQ100指数」に連動する米国株ETF【1545】NEXT FUNDS NASDAQ-100®連動型上場投信が上場しています。

【1545】NEXT FUNDS NASDAQ-100®連動型上場投信の月足チャート

同ETFの直近5年間の値上がり率(2017年1月始値~2021年12月20日終値)は、+206.84%(5,840円→17,920円)となっています。

「NASDAQ100指数」に連動する米国株投信は新型コロナ相場で人気となっており、レバレッジを掛けて投資することは「レバナス」とも呼ばれていますが、リスクのある投資行為です。

iDeCoでは、マネックス証券が2020年11月16日より、「NASDAQ100指数」に連動する米国株投信「iFreeNEXT NASDAQ100 インデックス」の取り扱いを開始しています。

つみたてNISAでは、「NASDAQ100指数」に連動する米国株投信は対象商品に指定されていません。

「NASDAQ100指数」に連動する米国株インデックスETF・投信をまとめると、次のようになります。

 

「NASDAQ100指数」に連動するETF・投資信託

ETF

【1545】NEXT FUNDS NASDAQ-100®連動型上場投信

iDeCo

「iFreeNEXT NASDAQ100 インデックス」(マネックス証券)

つみたてNISA

まとめ

今回は、米国株インデックス投資の基本について解説した上で、「S&P500指数」「ダウ平均株価」「NASDAQ100指数」の特徴や連動するETF・投信について紹介してきました。

米国株インデックス投資の最大のメリットは、成長が期待できる米国株で、より安全に長期・積立・分散投資による資産形成ができることです。

米国株インデックス投資はETF・投資信託で行うことになるため、証券会社の総合口座から手軽に投資でき、iDeCo・NISAを活用できる点も大きなメリットとなります。

米国株インデックス投資をする上では、米国株を代表する3大インデックス「S&P500指数」「ダウ平均株価」「NASDAQ100指数」の3つの特徴を押さえておくことが重要です。

それぞれ代表的なETFについて、直近5年間の値上がり率を見てみると次のようになっています。

 

S&P500指数

ダウ平均株価

NASDAQ100指数

直近5年間の値上がり率

+96.25%

+69.73%

+206.84%

※対象期間は(2017年1月~2021年12月20日)

※S&P500指数は【1547】上場インデックスファンド米国株式(S&P500)の値。

※ダウ平均株価は【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信の値。

※NASDAQ100指数は【1545】NEXT FUNDS NASDAQ-100®連動型上場投信の値。

新型コロナ相場では、GAFAMの構成比率が大きい「S&P500指数」と「NASDAQ100指数」が強くなっています。

ただ、新型コロナ相場での「S&P500指数」と「NASDAQ100指数」の上昇はバブルも懸念されていることは留意しておくようにしましょう。

紫垣 英昭