SQとは?SQ前後の株価・チャートの値動きを利用した有効トレード法

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

あなたは、「SQ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

よく、経済ニュースで「今週はメジャーSQもあり、大きな上下動の可能性もありますので・・・」などというのを耳にすることも多いと思います。

SQ自体は、先物取引やオプション取引に関する用語なので、「現物株の取引だけをやっているからSQなんて関係ない、知らなくてもいい」と思っている方もいるかもしれませんが、SQは現物株にも大きく影響を及ぼすことがあるので、現物株しか取引しない人でも知っておいた方が良いと思います。

ここでは、「SQとは?」「SQはいつ、どのように決まるのか?」「SQを使った取引戦略は?」など、現物株の取引でも役立つ内容を中心に説明していきたいと思いますので、ぜひ、この機会にSQについて学んでいきましょう。

この記事を読んで得られること
  • SQとは何か、いつあるのかがわかる
  • SQ前後の値動きの特徴がわかる
  • SQのアノマリーを利用した有効なトレード方法がわかる

SQとは

SQとは、Special Quotationの略語で、「特別清算指数」と呼ばれます。

現物市場で株式を売買する場合、購入してから決済するまで何年も保有し続けることが可能ですが、先物取引やオプション取引では、ある期日までに必ず決済しなければいけない「決済期日」が決められています。

決済期日までに反対売買(「買い」でエントリーした場合は「売り」、「空売り」でエントリーした場合は「買い戻し」)を行わなければ、決済期日の翌日の価格で強制的に決済されてしまいます。

この決済期日の翌日のことを「SQ日」決済される価格のことを「SQ値」と呼んでいます。

先物取引やオプション取引については以下の記事で詳しく説明しますが、ここでは、概要だけ簡単に説明したいと思います。

初心者でも簡単にわかる!日経平均株価と日経225先物取引

オプション取引は儲かるのか?取引の仕組み、メリットを解説

先物取引とは?

通常、商品を取引する場合、商品の受け取りと同時に代金を支払いますよね?

それに対し、先物取引とは、「あらかじめ決められた日に決められた価格で売買することを約束する取引」になります。

例えば、現在、1,000円で売られている商品があるとします。

この商品を1ヶ月後に購入したいと思っていても、1ヶ月後にはいくらになっているか分かりません。
そこで、「1ヶ月後に1,000円で購入する」という約束をするとします。

そして、この商品が1ヶ月後に1,100円で売られていたとしても「1,000円で購入する約束」をしていたので、1,000円で購入することができ、「100円得した」ということになるのです。

逆に、1ヶ月後に900円で売られていたとしても、1,000で購入しなければならないので、この場合は「100円損した」ということになってしまいます。

オプション取引とは?

自動車を購入する際、「オプション」でカーナビが付けられたりなどしますよね?
このように、「オプション」には、カーナビを付けるか付けないかを「自分で選ぶことができる」という意味があります。

オプション取引も先物取引と同様に、「あらかじめ決められた日に決められた価格で売買する」のですが、先物取引と違うのは、「購入するかどうかを選ぶことができる」ことです。

つまり、先物取引は「売買の約束をする」ので必ず売買しなければならないのですが、オプション取引は「売買する権利を購入する」ので、権利を放棄することもできます。

前項と同じ例で説明しましょう。

現在、1,000円で売られている商品があるとします。
この商品を「1ヵ月後に1,000円で購入できる権利」を購入するとします。

そして、この商品が1ヶ月後に1,100円で売られていたとしても「1,000円で購入できる権利」を行使することによって、1,000円で購入することができ、「100円得した」ということになるのです。

ここまでは、先物取引と同じですよね?

しかし、オプション取引では権利を行使するかどうかを選ぶことができるので、1ヶ月後に900円で売られていて、購入すると損をしてしまうという場合には、権利を放棄することができるのです。

ただし、「権利」を手に入れるために支払った代金はムダになってしまいます。

SQはいつあるの?

次に、SQ値が決まるSQ日がいつなのかを確認していきましょう。

先物取引のSQ日はいつ?

先物取引のSQ日は、3月、6月、9月、12月の第2金曜日となります。

先物取引のSQ日は「3の倍数の月」であると覚えておきましょう。

2019年の先物取引のSQ日は、3月8日(金)、6月14日(金)、9月13日(金)、12月13日(金)となっています。

オプション取引のSQ日はいつ?

オプション取引のSQ日は、毎月の第2金曜日となります。

オプション取引は先物取引と違って、SQ日が毎月あると覚えておきましょう。

SQにはメジャーSQとマイナーSQがある

先ほども説明したように、先物取引のSQ日は3の倍数の月の第2金曜日、オプション取引のSQ日は毎月の第2金曜日なので、先物取引とオプション取引のSQ日が重なる日と重ならない日があります。

このSQ日が重なる日のことを「メジャーSQ」、重ならない日のことを「マイナーSQ」と呼びます。

つまり、先物取引のSQ日である3の倍数の月の第2金曜日をメジャーSQそれ以外の月の第2金曜日をマイナーSQと覚えまておきましょう。

SQ値とSQカレンダーが確認できるサイト

SQ値とSQカレンダーは、日本取引所の公式サイトで確認することが可能です。

SQ値(特別清算数値)

引用)日本取引所|SQ値(特別清算数値) 2019年2月現在

先物取引及びオプション取引最終日

引用)日本取引所|取引最終日 2019年2月現在

※SQ日はこのサイトに載っている取引最終日の翌日となります。

SQ値の決まり方と、SQ日の現物株の値動き

ここまでの説明で、SQの概要がなんとなく分かってきたと思いますが、「SQが現物株の取引とどんな関係があるの?」と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか?

実は、「SQ値の決まり方」にポイントがあり、これによって現物株の値動きに影響が出てきてしまうのです。

したがって、ここからは、その辺について詳しく説明していきましょう。

SQ値が決まる時間は?SQ値はどうやって決まるの?

SQ値は、その指標を構成している銘柄のSQ日の始値によって算出されます。

例えば、日経平均先物だったら、日経平均を構成している225銘柄の始値から算出されます。

「じゃあ、日経平均の始値と同じになるの?」と思われるかもしれませんが、日経平均の始値とSQ値は算出方法が以下のように少し異なりますので、価格がズレることもあります。

  • 日経平均:9時の時点での225銘柄の始値(寄付かなかった場合は気配値)から算出
  • SQ値:SQ日の225銘柄の始値から算出

したがって、SQ値は全ての銘柄が寄付かないと確定しないので、SQ値が決まる時間は日によって変わることもありますが、日経平均の始値とSQ値はほぼ同じと覚えておいて大丈夫です。

SQ日は現物株の値動きにどう影響するのか?

先ほどの説明で、SQ値は現物株の価格をもとに算出しているのが分かったと思いますが、これが、現物株の値動きとどう関係してくるのか具体的に説明していきたいと思います。

少し難しく感じるかもしれませんが、全てを理解する必要はありません。「いろいろな思惑があって、通常とは違う値動きをする可能性がある」ということだけ頭に入れておけば大丈夫です。

例えば、現物を1,000円で買い、先物を1,100円で空売りしているとします。
そして、SQ日に現物を寄付きで成行決済します(先物は何もしなくても強制決済されます)。

そうすると、現物の始値とSQ値はほぼ同じになりますので、現物と先物が同じ価格で決済されることになります。

もし、決済価格が900円だった場合、

現物:「900円で決済」-「1,000円で買い」=「100円の損失」

先物:「1,100円で空売り」-「900円で買い戻し」=「200円の利益」

となり、合計で100円の利益となります(手数料などは考慮していません)。

また、決済価格が1,200円だった場合でも、

現物:「1,200円で決済」-「1,000円で買い」=「200円の利益」

先物:「1,100円で空売り」-「1,200円で買い戻し」=「100円の損失」

 

となり、合計で100円の利益となるのです。

このように、現物と先物・オプションの価格差を利用して利益を出す売買手法を「裁定取引」と言い、SQ日付近では、裁定取引や裁定取引に関連する値動きを利用した売買などが行われるため、現物株にも影響が出るのです。

上記の例では、「SQ日の寄付きで成行売り」で決済していますので、「じゃあ、SQ日は売りが殺到して株価が下がるの?」と思われるかもしれません。

しかし、上記では「現物を1,000円で買い、先物を1,100円で空売り」していたので「SQ日の寄付きで成行売り」でしたが、「現物を1,100円で空売り、先物を1,000円で買い」していた場合、上記とは逆に「SQ日の寄付きで成行買い戻し」になるため、上下どちらにも動く可能性があるのです。

SQ日の具体的な取引戦略

それでは、SQの概要と現物株の値動きへの影響が分かってきたところで、今度は具体的な取引戦略についてご紹介します。

先ほど、「上下どちらにも動く可能性がある」と説明していますので、「じゃあ、どうすればいいの?」と思われている方も多いかもしれませんが、ここでは「アノマリー」を利用した取引戦略をご紹介したいと思います。

「アノマリー(Anomaly)」とは、「変則」「例外」「逸脱」などという意味があるのですが、相場においては、「はっきりとした理論的な根拠がある訳ではないが、経験則的にそうなる確率が高い」とされる現象のことです。

SQに関するアノマリーとしては、

  • メジャーSQの日は日経平均が上がりやすい
  • マイナーSQのある週は日経平均が下がりやすい
  • マイナーSQのある週は日中の値動きが大きくなりやすい

などがあります。

実際に、日経平均のチャートを見ながら、SQ付近の値動きを見てみましょう。
下図は、2018年10月末頃の日足チャートです。

アノマリーの通り、メジャーSQである9月14日に株価が上昇しているのが分かります。
そして、マイナーSQである10月12日の週は株価が下降しているのも分かり、ローソク足が比較的長く、値動きが大きい日があることも分かります。

さらに補足すると、上図の水色丸印で囲んだところを見ると、SQ日には裁定取引の決済(ポジション解消)により、出来高が増える傾向があるというのも分かりますね。

日経225先物取引の場合

先ほど、ご紹介したアノマリーを利用して日経225先物で取引をする場合、「マイナーSQのある週は日経平均が下がりやすい」を利用します。

日経225先物は、基本的には日経平均と同じ値動きをしますので、マイナーSQ日の前の週末に「空売り」でエントリーしておきます。

そして、エントリーした翌週のSQ日に決済(買い戻し)すると、アノマリー通りに株価が下がっていれば利益を得ることができます。

現物株取引の場合

現物株の場合、日経平均の値動きと連動した商品もありますが、ここでは、普通の個別銘柄での取引方法をご紹介します。

日経平均とは、対象となる225銘柄の株価の平均値から算出しているのですが、単純にそれぞれの株価を平均している訳ではありません。

算出方法については省略しますが、銘柄ごとに日経平均の値に影響を与える度合いが異なっており、この度合いのことを「寄与度」と呼んでいます。

つまり、寄与度の高い銘柄の値動きは、寄与度の低い銘柄の値動きよりも日経平均に与える影響が大きくなるため、日経平均の値動きに近くなるのです。

そのため、今回は日経平均への寄与度が高いファーストリテイリングやファナック、ソフトバンクなどの現物株を用いて、アノマリーを利用します。

下図は、先ほどの日経平均のチャートと同じ時期の「ファーストリテイリング(9983)」の日足チャートです。

少しチャートの形は異なりますが、だいたい同じような値動きをしているのが分かると思います。

「メジャーSQの日は日経平均が上がりやすい」を利用する場合は、SQ日の前日に「買い」でエントリーし、SQ日の大引けに決済します。

また、「マイナーSQのある週は日経平均が下がりやすい」を利用する場合は、マイナーSQ日の前の週末に「空売り」でエントリーし、SQ日に「買い戻し」で決済します。

上図を見ても、どちらの戦略とも利益を得られているのが分かると思います。

SQ日付近で取引するときに気を付けること

これまでの説明で、SQ日付近ではいろいろな思惑から売買がふくらみ、通常とは異なる値動きをする可能性があることが分かってきたと思います。

特に、機関投資家(顧客から拠出した資金を運用する法人投資家など)は、裁定取引やそれに関わる値動きなど利用して利益を得ようと大きな資金を動かすため、「SQ日の週は相場が荒れやすい」とも言われています。

また、前項でご紹介した「アノマリー」も、あくまで経験則にもとづいている現象なので、当たらないこともありますし、市場に大きな影響を与えるような他の要因が出てくれば、違う値動きになることもあります。

実際に、2018年11月のマイナーSQや12月のメジャーSQの日経平均では、下図のように、アマノリーとは逆の値動きになっています。

このように、「どのような売買手法でもリスクはある」ということをしっかりと頭に入れておき、内容をきちんと理解し、過去の検証を十分行ってから、リスク管理を徹底して売買するようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

SQを理解するためには、先物取引やオプション取引についても理解しなければならないので、少し難しかったかもしれませんね。

しかし、これらをしっかりと理解しておかないと、「なぜ、そのような値動きになるのか」が分からず、誤ったタイミングで売買してしまうことになり、損失が大きくなってしまう可能性もあります。

トレードでは、売買手法を身に付けるだけでなく、値動きの裏にある「要因」も把握しておくことで、トレードの精度が上がり、利益につなげることがでるようになります。

初心者の方は、学ぶことが多くて大変かもしれませんが、売買手法は多ければ良いというものではありませんので、できることから着実に身に付けることを心掛けましょう。

 

紫垣 英昭