2021年5月暴落で下がった銘柄と上がった銘柄とは?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

2021年の5月相場は大荒れの展開となりました。

2021年5月暴落は、アメリカのインフレ懸念を背景にNASDAQ市場でハイテク株が売られたことがきっかけに起こり、日本市場でもハイテク株を中心に売られる展開となりました。

また、仮想通貨は株以上の暴落となっており、株や仮想通貨などは2020年3月のコロナショック以降上昇し続けてきましたが、ここに来ていったんブレーキが掛かる展開となるかもしれません。

今回は、2021年5月暴落での全体相場動向や下落要因について解説した上で、2021年5月暴落で下がった銘柄と上がった銘柄についてご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 2021年5月暴落での全体相場動向や下落要因についてわかる
  • 2021年5月暴落で下がった銘柄と上がった銘柄がわかる
  • 2021年の9月以降の傾向を考えることができる

2021年5月相場は暴落相場に

2021年5月相場は暴落気味の相場展開となりました。

日経平均株価は-2,000円を超える下落に

まずは、2021年5月の日経平均株価の動向を見ておきましょう。

日経平均株価の日足チャート

日経平均株価は、ゴールデンウィーク明けの5月10日には一時29,685円まで上昇しましたが、5月11日から3陰線となり一時27,385円まで売られました。

わずか3日で最大-2,300円の暴落になったこととなります。

5月11日からの3日間で大きく売られたきっかけの一つとしては、アメリカのハイテク株で構成されるNASDAQ市場が大きく下落したことが挙げられます。

NASDAQ100指数の日足チャート(https://jp.tradingview.com/symbols/NASDAQ-NDX/)

NASDAQは、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)やテスラモーターズを中心に新型コロナ禍で上昇を続けてきましたが、2021年2月にも米国長期金利の上昇が嫌気されて売られるなど、上昇の反動から売られる展開が増えつつあります。

また、2021年5月には、2020年末からバブル状態となっている仮想通貨も大きく売られており、代表的な仮想通貨であるビットコイン価格は6万ドル以上から一時3万ドル台まで暴落しました。

ビットコインの日足チャート(https://jp.tradingview.com/symbols/BTCUSD/?exchange=BITSTAMP)

2020年3月以降、実体経済とは反して新型コロナ禍で進んできた資産価格の高騰に暗雲が立ち込めてきたかもしれない2021年5月相場となりました。

相場が不安定化している要因とは?

2021年5月にマーケットが不安定化した要因としては、アメリカで起こっているインフレが実体経済に大きな影響を与えることが懸念されていることが挙げられます。

アメリカではワクチン接種が進んだことから、新型コロナの感染者数がピーク時から大きく減少。

同時に経済も急回復しつつありますが、余りにも早いペースでの経済回復となっていることから消費者物価指数が急上昇。

4月の消費者物価指数は前年同月比+4.2%と、インフレが進行しています。

自動車や電化製品に使われる半導体や、住宅に欠かせない木材などは需要不足からの価格上昇が起こっており、インフレが長引けば実体経済にダメージを与えることが懸念されつつあります。

ただ、2021年5月に日経平均が大きく下落した要因としては、アメリカのインフレ懸念でアメリカ市場が不調となった以外にも、日本独自の懸念材料もあるものと思われます。

ワクチン接種が進むアメリカでは2021年1-3月期のGDPが前期比年率+6.4%という高い成長となった一方、緊急事態宣言があった日本では前期比年率-5.1%という厳しい数字となりました。

また、そもそも2020年3月にコロナショックで底を付けてから、株価は上昇し続けており、その調整として売られた局面になったと見ることもできます。

2021年5月暴落の要因としては、アメリカ経済のインフレ懸念を背景にNASDAQが売られたことが挙げられますが、その他にも複数の要因が重なった結果であると見られます。

 

2021年5月暴落で下がった銘柄

2021年5月暴落で特に大きく下がった銘柄を見ていきましょう。

ハイテク株

2021年5月暴落のきっかけとしては、アメリカのNASDAQが大きく下げたことが挙げられますが、日本市場でもハイテク株が売られました。

産業用ロボットやファクトリーオートメーション(自動工場)に強い【6954】ファナックや【6506】安川電機、【6383】ダイフク、世界的電子部品メーカーの【6981】村田製作所や【6963】ローム、【6770】アルプスアルパインなど、技術力に定評のある銘柄の売りが目立っています。

【6770】アルプスアルパインの日足チャート

また、新型コロナ相場をけん引してきた、半導体製造装置メーカーを中心とする半導体関連銘柄も2021年5月相場では軟調となりました。

【8035】東京エレクトロンの日足チャート

日経平均構成銘柄

日銀は2021年3月18日から19日に行われた金融政策決定会合の中で、ETF買いをTOPIX連動型のみに限定して行うと発表。

つまり、事実上、日経平均連動型ETFの買いは行わないことを決定しました。

この影響もあってか、2021年5月暴落では、日経平均への寄与度が高い銘柄が不調となっています。

日経平均は構成225銘柄の株価単純平均で算出されるため、構成銘柄の中でも価格が大きい値嵩株が日経平均への影響力が大きくなります。

前述したハイテク株の【6954】ファナックや【8035】東京エレクトロンは大きく下げており、日経平均への寄与度が最も大きい【9983】ファーストリテイリングも下落しています。

【9983】ファーストリテイリングの日足チャート

日銀が日経平均ETF買いをしないことを決定した3月18~19日以降、ファーストリテイリング株は元気がありません。

決算が悪かった銘柄

ゴールデンウィーク前後というのは、決算発表が相次ぐ時期でもありますが、決算内容が良くなかった銘柄は、2021年5月暴落相場でより大きく売られる傾向が見られました。

「Yahoo!JAPAN」などを運営するネット企業最大手の【4689】Zホールディングスは、2021年4月30日発表の決算で増収増益となったものの収益の伸び悩みがネガティブ視されて売られる展開に。

【4689】Zホールディングスの日足チャート

また、中部最大の私鉄【9048】名古屋鉄道は黒字転換の決算を発表したものの、市場の受け止めは悪く、大きく売られる展開となってしまいました。

なお、決算に加えて緊急事態宣言の影響もあったものと思われます。

【9048】名古屋鉄道の日足チャート

仮想通貨関連銘柄

2021年5月には仮想通貨が暴落したことを受けて、仮想通貨関連銘柄も下げています。

仮想通貨取引所「コインチェック」を傘下に持つ、日本株を代表する仮想通貨関連銘柄【8698】マネックスグループの株価を見てみましょう。

【8698】マネックスグループの日足チャート

マネックスグループの株価は仮想通貨暴落で下げましたが、そこまで大きな下落とはなっていません。

2021年2月~4月に掛けては仮想通貨高と連動しなかったことが幸いしたと言えるでしょう。

仮想通貨投資で悲惨なことになってしまったのが、オンラインゲーム大手の【3659】ネクソンです。

4月に仮想通貨を1億ドル購入していたことから一段安となってしまいました。

【3659】ネクソンの日足チャート

仮想通貨の暴落は仮想通貨関連銘柄にはマイナス要因となることは間違いなく、今後も懸念されます。

2021年5月暴落で上がった銘柄

2021年5月の暴落相場の中で、逆に買われた銘柄も存在しています。

決算が好調だった銘柄

2021年5月に発表した決算が好調だった銘柄は、一部の銘柄が大きく上昇しています。

【7203】トヨタ自動車や【5108】ブリヂストン、【6702】富士通などは、2021年5月に年初来高値を更新。

特に、トヨタは6期ぶりに過去最高益となり、上場来高値を更新することとなりました。

【7203】トヨタ自動車の日足チャート

また、デジタルトランスフォーメーションで業績を伸ばした富士通も好調で、ITバブル以来20年以上ぶりの高値水準を更新しています。

【6702】富士通の日足チャート

ただ、トヨタや富士通は好調だったとはいえ、2021年5月暴落相場では多くの銘柄が下げており、決算が良くても株価も好調となった銘柄は一部に限られるというのが実態です。

一部の新興銘柄

2021年5月暴落相場でも、新興銘柄の中には急騰している銘柄が出てきています。

基礎化粧品を手掛ける【4934】プレミアアンチエイジング、医療ウェブサイトを運営する【2150】ケアネット、ICT機器や光学機器を手掛ける【6629】テクノホライゾンなどは大きく上がりました。

 

【2150】ケアネットの日足チャート

これらの銘柄には共通するのは好決算だったことが挙げられます。

ただ、ハイリスク・ハイリターンの新興銘柄であるため、大きく上げているからといって、投資初心者が下手に手を出すのは危険であることは言うまでもありません。

まとめ

今回は、2021年5月暴落での全体相場動向や下落要因について解説した上で、2021年5月暴落で下がった銘柄と上がった銘柄についてご紹介してきました。

2021年5月が暴落相場となった背景としては、アメリカのインフレが懸念されてNASDAQが大きく下げたことで、日本株下落の引き金となったことが挙げられます。

2021年5月暴落で下がった銘柄としては、ハイテク株や決算が悪かった銘柄、仮想通貨関連銘柄などが挙げられますが、これらの銘柄に限らず全体的に下げが目立っている状況です。

一方、2021年5月暴落で上がった銘柄としては、トヨタや富士通などの決算が良かった銘柄がありますが、上昇した銘柄は一部の銘柄に限られています。

相場格言にある「セル・イン・メイ」は、5月から調整入りとなり9月以降には反発に転じる傾向があることを意味します。2021年の相場展開はどうなっていくのか、今後も注視しておきましょう。

紫垣 英昭