防衛関連株はウクライナ問題でどうなる?北朝鮮や中東情勢でも注目される軍事テーマ株を要チェック!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

2022年ウクライナ情勢を受けて世界中のマーケットに動揺が走っていますが、防衛関連株には資金が集まってきています。

防衛関連株は、2017年の北朝鮮情勢や2020年のイラン情勢の緊迫化でも大きく買われており、ウクライナ情勢でも注目された格好です。

今回は、防衛関連株の概要や過去に注目された出来事について解説した上で、軍事リスクが発生すると物色されやすい代表的な防衛関連株について紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 防衛関連株の概要や過去に注目された出来事についてわかる
  • 軍事リスクが発生すると物色されやすい代表的な防衛関連株についてわかる
  • 防衛関連株の今後について考えることができるようになる

防衛関連株とは?

防衛関連株の特徴について押さえておきましょう。

防衛関連株の概要

防衛関連株とは、軍事・防衛産業に関わる事業を手掛けている銘柄を総称したテーマ株・セクターです。

日本は憲法九条で戦争を禁じており、紛争地域などへの武器輸出を禁止する「武器輸出三原則」を採ってきました。

2014年4月1日、国家安全保障戦略に基づいて、武器輸出三原則に代わる新たな政府方針として「防衛装備移転三原則」が制定されました。

「防衛装備移転三原則」では、日本の安全保障や国際貢献・世界平和に寄与するなどの条件を満たせば、武器の輸出や共同開発を認める内容となっています。

防衛関連株は、大手重工業メーカーをはじめ、防衛省や自衛隊に防衛機器を納入した実績がある銘柄が中心です。

防衛産業に新興企業が新規参入することは難しいため、防衛関連株として物色される銘柄は、毎回同じような銘柄となります。

特に、【6208】石川製作所、【4274】細谷火工、【6203】豊和工業の3銘柄は、世界情勢が緊迫化すると物色されやすい防衛関連株となっています。

防衛関連株は軍事リスクが発生すると物色されやすい

防衛関連株の最大の特徴は、北朝鮮のミサイル発射や中東情勢の緊迫化といった軍事リスクが発生すると物色されやすいことです。

世界情勢が混沌化してくると、株式市場全体にはネガティブ要素となり、全体相場は売られやすくなります。

全体相場から逃避した資金が防衛関連株に集中することになるため、防衛関連株は短期的に急騰することが少なくありません。

ただ、有事において防衛関連株は急騰しやすい反面、世界情勢リスクが減退すると全体相場に買い戻しが入る一方で、防衛関連株には売りが集中して暴落しやすくなります。

また、防衛関連株は、軍事リスクを受けて短期間に急騰したものの、平時には数年以上に渡って下落トレンドが続くような銘柄も少なくありません。

有事の際の防衛関連株はハイリスク・ハイリターンとなっており、手掛ける際には細心の注意が必要です。

過去に防衛関連株が注目された出来事

防衛関連株が注目された出来事について振り返っておきましょう。

2017年8~9月:北朝鮮ミサイル発射

2017年は北朝鮮リスクが緊迫化した年となり、1年間に渡って防衛関連株が買われ続けました。

2017年8月29日の早朝には、北朝鮮がミサイルを発射したことを受けて、日本中にJアラートが鳴り響く事態に。

北朝鮮のミサイル発射を受けて、防衛関連株は急騰することとなりました。

代表的な防衛関連株である【6208】石川製作所の2017年の株価(週足チャート)は次のようになっています。

【6208】石川製作所の2017年週足チャート

石川製作所の株価は、2017年の1年間で658円→4,435円まで最大6.74倍まで急騰しました。

特に、北朝鮮がミサイルを発射してから(上図赤丸)、上げ足を強めたことが分かります。

2017年には【4274】細谷火工や【6203】豊和工業なども大きく上昇し、北朝鮮情勢に揺れた2017年は防衛関連株にはバブル到来となっていました。

2020年1月:イラン・アメリカ情勢が緊迫化

2018年から2019年に掛けては北朝鮮情勢も落ち着いたこともあり、2017年に大きく買われた防衛関連株は調整となっていました。

2020年1月、アメリカ国防省は、イラン革命防衛隊司令官のガーセム・ソレイマーニー氏を殺害したと発表。

イランの英雄ともされる人物が殺害されたことを受けて、中東情勢は一時緊迫化し、世界のマーケットにも大きな影響を与えました。

イラン情勢の緊迫化を受けて、【4274】細谷火工の2020年1月の株価(日足チャート)は次のようになりました。

【4274】細谷火工の2020年1月日足チャート

2020年1月のイラン情勢は、1月9日にトランプ大統領が会見したことを受けて早期後退したため、材料としては短期的なものとなりました。

2022年1~2月:ウクライナ情勢

2020年1月のイラン情勢以降、世界やマーケットの関心は新型コロナに移り、北朝鮮にも特に動きはなかったため、新型コロナ相場で防衛関連株に注目が集まることもありませんでした。

2022年1月から2月に掛けて、ロシアとウクライナの間で緊張が高まっており、再び防衛関連株に注目が集まっています。

NATO加盟を目指すウクライナに対して、ロシアは軍事圧力を強めており、軍事侵攻の可能性が懸念されています。

株式市場はウクライナ情勢で売られる展開となっている一方、石油や天然ガス(LNG)、ニッケルなどロシアが強みを持つ商品価格の上昇が止まりません。

ウクライナ情勢を受けて、代表的な防衛関連株である【6208】石川製作所、【4274】細谷火工、【6203】豊和工業の3銘柄は買われています。

【4274】細谷火工の2022年1月日足チャート

2022年1月から2月に掛けて、【4274】細谷火工は+42%、【6208】石川製作所は+32%、【6203】豊和工業+18%となっています。

※いずれも2022年1月安値から2月18日高値までの最大上昇率。

今後、ウクライナ情勢がどうなっていくにしても、防衛関連株からは目が離せない展開となっていきそうです。

防衛関連株10選!

代表的な防衛関連株10銘柄について押さえておきましょう。

【6208】石川製作所

段ボール製函印刷機などを手掛ける紙工機械メーカー【6208】石川製作所は、防衛関連株として物色されやすい銘柄です。

同社は、海上自衛隊向けに機雷を製造していることで知られています。

また2017年8月には、航空自衛隊向けにフライトデータレコーダーなどを製造している関東航空計器株式会社を子会社化しており、防衛事業を強化しています。

【6208】石川製作所の月足チャート

石川製作所の株価は、北朝鮮情勢が緊迫化した2017年には大きく買われました。

直近の2022年ウクライナ情勢でも買われていますが、月足チャートで見てみると、まだ大きな値動きとはなっていません。

【4274】細谷火工

火工品に強い化学メーカー【4274】細谷火工も、有事リスクが発生すると物色されやすい防衛関連株です。

同社は、自衛隊向けの照明弾・発煙筒を製造していることで知られています。

【4274】細谷火工の月足チャート

細谷火工の株価は、2017年北朝鮮情勢で大きく買われるなど石川製作所とほぼ同じ動きとなっており、2022年のウクライナ情勢でも買われていることが分かります。

【6203】豊和工業

産業用機械メーカーの【6203】豊和工業も、有事で物色されやすい軍事関連株です。

同社は、日本唯一の小銃メーカーであり、防衛省・自衛隊向けに小銃や迫撃砲、発煙弾などを製造しています。

【6203】豊和工業の月足チャート

豊和工業の株価は、北朝鮮情勢が緊迫化した2017年に急騰しましたが、その後は下落~横ばいとなっています。

有事リスクが発生すると、石川製作所・細谷火工とともに物色されやすい銘柄ですが、この2銘柄に比べると値動きは小さい傾向にあります。

【6946】日本アビオニクス

情報処理システム関連機器や防衛用電子機器を手掛ける【6946】日本アビオニクスは、防衛システムに強い防衛関連株です。

同社は、防衛省向けの指揮・統制システムや表示・音響システムなどに、最先端技術を駆使した機器・装置を提供し続けています。

【6946】日本アビオニクスの月足チャート

日本アビオニクスの株価は、中期的に上昇し続けています。

【7721】東京計器

船舶・航空計器大手の【7721】東京計器は、防衛省向けに多くの実績がある防衛関連株です。

同社は、無数のマイクロ波スクランブルの中から危険な周波数のみを瞬時に捉えてパイロットに警報を与える「レーダ警戒装置」、海中を航行する潜水艦を安全・確実に導く「慣性航法装置」などを手掛けていることで知られています。

【7721】東京計器の月足チャート

東京計器も有事リスクがあると物色されており、北朝鮮情勢が緊迫化した2017年に上昇し、2020年1月のイラン情勢でも一時的に買われました。

【7011】三菱重工業

重工業最大手の【7011】三菱重工業は、東証を代表する防衛関連株です。

一般的な防衛関連株としては、同社が最も代表的な銘柄と言ってよいでしょう。

防衛装備庁が発表した「令和2年度調達実績及び令和3年度調達見込」では、同社のシェアは18.1%となっており5年連続1位となっています。

※出典:防衛装備庁

防衛省向けには、護衛艦(3900トン型)やSH-60K哨戒ヘリコプターなどを納入しています。

【7011】三菱重工業の月足チャート

三菱重工業の株価は、長期的には厳しい状況となっています。

防衛庁への納入実績においては文句なしの最大手企業ですが、防衛関連株として物色されているかというと疑問符が付く株価動向です。

【7012】川崎重工業

総合重機大手の【7012】川崎重工業は、三菱重工業に次ぐ防衛関連株です。

同社は、防衛装備庁が発表した「令和2年度調達実績及び令和3年度調達見込」において12.6%のシェアとなっており、三菱重工業に次ぐシェアとなっています。

同社は防衛庁や自衛隊向けに、潜水艦(8131)やP-1固定翼哨戒機、輸送ヘリコプター(CH-47JA)などを納入しています。

【7012】川崎重工業の月足チャート

川崎重工業の株価は、三菱重工業と同じ推移となっており、防衛関連株として物色されているとは言い難い状況です。

【6503】三菱電機

総合電機大手の【6503】三菱電機は、防衛関連にも力を入れている防衛関連株です。

同社は、防衛装備庁が発表した「令和2年度調達実績及び令和3年度調達見込」においてシェア4.7%で4位となっており、03式中距離地対空誘導弾(改善型)、ネットワーク電子戦システム、多機能レーダOPY-2などを納入しています。

【6503】三菱電機の月足チャート

三菱電機の株価は横ばいとなっています。

防衛省向けのシェアは高いものの、防衛関連株として物色されているようには見えません。

【7980】重松製作所

防毒マスクメーカーの【7980】重松製作所は、自衛隊向けに呼吸用保護具などを提供していることで知られており、防衛関連株にも位置付けられる銘柄です。

【7980】重松製作所の月足チャート

重松製作所の株価は、2017年北朝鮮情勢で買われ、特に2020年1月には急騰しました

マスクを手掛ける銘柄であることから、2020年1月にイラン情勢が一服後、新型コロナ関連でも買われての急騰となっています。

【7963】興研

防塵・防毒マスク大手の【7963】興研は、防衛省向けのマスクを独占していることで知られている防衛関連株の一角です。

【7963】興研の月足チャート

興研の株価は、重松製作所とほぼ同じ値動きとなっており、2020年1月にはイラン情勢から新型コロナの流れで急騰しました。

まとめ

今回は、防衛関連株の概要や過去に注目された出来事について解説した上で、軍事リスクが発生すると物色されやすい代表的な防衛関連株について紹介してきました。

防衛関連株は、北朝鮮情勢や中東情勢などの有事リスクが発生すると物色されやすいことが最大の特徴です。

ミサイルが発射されるなど北朝鮮情勢が緊迫化した2017年、イラン情勢が緊迫化した2020年1月には大きく買われ、2022年1月から2月に掛けてのウクライナ情勢でも買われています。

防衛関連株として特に物色されやすいのが、【6208】石川製作所、【4274】細谷火工、【6203】豊和工業の3銘柄です。

防衛省・自衛隊への納入実績からすると、三菱重工業や川崎重工業、三菱電機などが主要銘柄ですが、防衛関連株として物色されているかというと微妙な所です。

今後ウクライナ情勢がどうなっていくにしても、防衛関連株には大きな動きがあることが予想されます。

紫垣 英昭