紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
「日経225先物」と聞いて、あなたはどんなイメージがあるでしょうか?
「難しそうでよく分からない」「初心者には向いていない」「レバレッジ?なんかリスクが高そう」など、いろいろなイメージを持っているかもしれません。
先物取引は、普段の生活では馴染みのない取引方法なので、仕組みをイメージするのは難しいかもしれませんが、現物取引のように「安く買って高く売れば利益を得られる」というのは変わりません。
また、少ない資金で大きな金額の取引ができることを「レバレッジ(てこの作用)」というのですが、きちんと理解して利用すれば、現物取引よりも少ない資金で始めらることができるのも特徴です。
今回は、現物取引との違いを交えて、「日経225先物」がどのようなものなのかを、分かりやすくまとめてみましたので、ぜひ最後までお読みください。
- 日経225先物取引と現物取引の違いが分かる
- 日経225先物取引の種類と取引方法がわかる
- 日経225先物取引のメリットとデメリット、お勧めの証券会社がわかる
「日経225先物」とは?現物取引との違い
まずはじめに、「日経225先物」って何なのかよく分からない」という人も多いと思いますので、日経225先物と現物取引の違いを簡単に説明していきます。
現物取引とは
私たちが、普段買い物をする場合、買いたい商品と引き換えにお金を払いますよね?
買いたい時に、商品(現物)とお金(代金)を引き換える取引のことを「現物取引」と言います。
そして、一度買ったものは「自分のもの」になりますので、いつまでも保有することができますし、いつでも売却する(他の人に売る)こともできます。
先物取引とは
これに対し先物取引とは、買いたい商品があっても「今はお金がないから買えない」「今は必要ないけど1ヶ月後に欲しい」などという場合でも、「買う値段」と「期日」の約束だけしておくという取引になります。
つまり、取引をした時点では、お金を払っていないので商品を受け取ることはできませんが、決められた期日までに、約束した値段のお金を払えば商品を受け取ることができるのです。
ただし、この約束は必ず守らなければならないので、「やっぱり必要なくなったから買わない」とか「同じ商品が安く売ってたから安く買いたい」ということはできません。
現物取引と先物取引の違い
現物取引と先物取引の主な違いをまとめると以下のようになります。
現物取引
- 取引には現金が必要
- 商品は長期間保有することができる(期限がない)
- 商品を買ったら、それを売ることができる(商品を持っていないと売れない)
先物取引
- 取引時点では現金は不要(ただし証拠金(担保)が必要)
- 価格が変動する商品でも約束した価格で売買できる
- 約束した期日までに売買しなければならない
- 商品を空売りして、後から買い戻すこともできる(商品を持っていなくても売れる)
少し分かりにくい部分もあるかもしれませんが、後ほど詳しく説明していきます。
先物取引の種類は?
先物取引には、大きく分けて以下の2種類があります。
商品先物:農作物、貴金属、資源(原油)など
金融先物:株価指数、債権、金利など
今回は、この中から「株価指数先物」について説明していきたいと思います。
株価指数と株価指数先物
株価指数とは、取引所全体や特定の銘柄群の株価の動きを表すものです。
例えば、日本で代表的な株価指数と言えば「日経平均株価」を思い浮かべる人も多いと思いますが、日経平均株価は、東証1部上場銘柄のうち225銘柄を選定して算出されたものです。
算出方法は少し分かりづらいので省略しますが、225銘柄をもとに算出していることから「日経225」あるいは「225」と呼ばれることもあります。
このような「株価指数」を対象とする先物商品のことを「株価指数先物」と言い、主な商品としては次のものがあります。
※他にもありますが、証券会社によって取引できる商品が異なります。
日経225先物
先ほどもご紹介した「日経平均株価(日経225)」を対象とした先物商品です。
最低取引単位は日経225先物の1,000倍、呼値の単位(値段の刻み)は10円になりますので、日経225先物が21,000円の場合、21,010円、21,020円、・・・と変動していき、21,010円×1,000、21,020円×1,000、・・・で取引されますので、取引金額は10,000円単位で変動します。
日経225mini
日経225miniは、その名前のとおり「日経225先物」商品の取引単位を小さくしたもので、最低取引単位は日経225先物の100倍、呼値の単位は5円になりますので、取引金額は500円単位で変動します。
TOPIX先物、ミニTOPIX先物
先ほどの「日経平均株価(日経225)」は225銘柄から算出されているのに対し、「TOPIX(東証株価指数)」は東証1部の全銘柄の時価総額から算出されています。
そのため、日経平均株価は一部の銘柄の値動きが大きく影響することもありますが、TOPIXは市場全体の状況を反映しているとも言えます。
TOPIX先物の最低取引単位はTOPIXの10,000倍、呼値は0.5ポイントになりますので、取引金額は5,000円単位で変動します。
また、ミニTOPIX先物の最低取引単位はTOPIXの1,000倍、呼値は0.25ポイントになりますので、取引金額は250円単位で変動します。
※TOPIXの単位は「円」ではなく「ポイント」なので、呼値の単位も「ポイント」になります。
東証マザーズ指数先物
東証マザーズは、近い将来、東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業が上場している市場です。
その東証マザーズを対象とする東証マザーズ指数先物は、日本の新興市場のみを対象とする初の先物で、変動率が高いのが特徴です。
最低取引単位は東証マザーズ指数の1,000倍、呼値は1ポイントになりますので、取引金額は1,000円単位で変動します。
JPX日経インデックス400先物
JPX日経インデックス400は、全東証上場銘柄の中から、資本の効率的活用や投資家を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした400銘柄から構成されており、「投資家にとって投資魅力が高い」株価指数です。
JPX日経インデックス400先物の最低取引単位はJPX日経インデックス400の100倍、呼値は5ポイントになりますので、取引金額は500円単位で変動します。
初心者におすすめの先物商品は?
ここまでで、先物商品についていくつかご紹介してきましたが、初心者にとっては「どれが良いのか?」「どのように判断すれば良いのか?」分からない人も多いと思います。
そこで、今回は「日経225mini」を初心者におすすめしたいと思います。
理由は2つありますが、1つ目は、日本の代表的な株価指数である「日経平均株価」を対象とした先物商品であることです。
株を知らない人でも日経平均株価を知っている人は多いと思いますし、よく経済ニュースなどで取り上げられていることから、初心者でも馴染みやすく、日経平均株価の動向についても理解しやすいと思います。
下図は、日経平均株価と日経225先物の2018年の値動きを比較したものです(年初の株価を100としたときの変動率)。
日経225先物は、日経平均株価とほとんど同じ値動きをしているのが分かりますよね。
まずは、値動きや相場状況など、馴染みやすいものから始めるのが良いでしょう。
2つ目は、取引金額の変動幅が小さいことです。
先ほど、日経225先物の最低取引単位は1,000倍、日経225miniは100倍だと説明しましたが、先物価格が100円動いたとしたら、日経225先物の取引金額が100,000円変動するのに対し、日経225miniは10,000円しか変動しません(変動幅が1/10)。
変動幅が小さいということは、得られる利益も小さくなってしまうかもしれませんが、逆に損失も小さくできるということです。
初心者の内は、うまくいかないことも多いと思いますので「いかに損失を小さく抑えることができるか」が重要になってきます。
1回の取引で大きな損失を出してしまったら、すぐに資金が底をついてしまいますので、利益が出せるスキルを身に付けるまでは、変動幅の小さい取引でたくさんの経験を積むようにしましょう。
日経225miniの取引方法
ここからは、「日経225mini」を含む、先物取引の取引方法について、現物取引との違いを交えながら説明していきたいと思います。
証拠金とは?
「1-3 現物取引と先物取引の違い」のところで、
- 現物取引は、取引には現金が必要
- 先物取引は、取引時点では現金は不要
と説明しました。
現物取引は、商品と引き換えにお金を払いますので「現金」が必要ですが、先物取引は、取引時点では「約束」をするだけなので、現金が不要なのはイメージできますよね?
しかし、約束だけでは守られない可能性もありますので、担保のような形で一定のお金を口座に入れておく必要があります。
これを「証拠金」と言い、このような取引を「証拠金取引」と言います。
通常、証拠金の額は取引する金額に対して少ないことが多いため、「資金が少ない人でも取引をすることができる」あるいは「同じ資金でもたくさんの取引をすることができる」のが特徴です(資金効率が高い)。
信用取引も証拠金取引の1つですが、信用取引の場合は、取引する金額に対して証拠金の額が決まっています(約1/3)。
それに対し、先物取引の場合は、商品の種類や証券会社によって、取引する金額に対して証拠金の額が変わりますので注意しましょう。
※例えば、松井証券では下図のように案内しています。
先物取引の証拠金は、2011年からSPAN(スパン)という国際標準の新証拠金制度に準拠して計算されています。
そのため、SPAN証拠金とも呼ばれています。
上図の期間の日経225先物価格は21,600円前後で推移してますが、日経225miniの場合、69,000円の資金があれば取引できるということになります。
最低取引金額(一枚)は、21,600円×100倍=2,160,000円ですので、取引する金額に対して証拠金の額は約1/30です。
※証拠金の額は変動しますので、資金ギリギリまで取引しないように注意しましょう。
ポジションの取り方
口座に資金が入金できたら、次はいよいよ取引開始です。
株式の現物取引の場合、株を買ってから売るまでの状態(株を保有している状態)を「ポジション」と言います。
先物取引の場合でも、約束をしてから履行するまでの間、商品を保有している訳ではないのですが、現物取引と同様に「ポジション」と言うことばを使います。
買い建て、売り建て
「1-3 現物取引と先物取引の違い」のところでも説明したとおり、
- 現物取引の場合、「買ってから売る」ことしかできない
- 先物取引の場合、「買ってから売る」と「空売りしてから買い戻す」の両方ができる
買ってから売るまでの状態を「ロングポジション(買い建て)」と言い
空売りしてから買い戻すまでの状態を「ショートポジション(売り建て)」と言います。
これによって、商品の価格が上昇する局面だけでなく、下降する局面でも利益を得ることができるようになるのです。
リスクヘッジ
リスクヘッジとは、将来起こりうるリスクを想定し、それに対する備えをすることです(単に「ヘッジ」と呼ぶこともあります)。
先物取引では、ロングとショートの両方のポジションを取ることができるため、現物取引のリスクヘッジの手段として使うこともできます。
例えば、ある現物株を1,000円で買って保有していたとします。
その株が1,100円まで上昇したところで「もしかしたら、これから一時的に下落するかもしれない」と予想した場合、リスクヘッジのために先物を空売りします(これを「売りヘッジ」と言います)。
そうすると、予想どおり下落した場合、下落した分の損失をカバーすることができるのです。
現物:1,000円で買って1,050円で売り、50円の利益
現物:1,000円で買って1,050円で売り、50円の利益
先物:1,100円で空売りして1,050円で買い戻し、50円の利益
トータルで100円の利益(上図の現物損失50円と先物利益50円が相殺)
そのかわり、予想が外れて下落しなかった場合、得られる利益は減少してしまいます。
リスクヘッジは、あくまで「リスクに備える」ための手法なので、そのリスクが発生しなかった場合は、「備え」がムダになってしまうことも頭に入れておきましょう。
現物:1,000円で買って1,150円で売り、150円の利益
現物:1,000円で買って1,150円で売り、150円の利益
先物:1,100円で空売りして1,150円で買い戻し、50円の損失
トータルで100円の利益(上図の現物利益50円と先物損失50円が相殺)
また、「売りヘッジ」の逆で「買いヘッジ」という手法もありますが、少し混乱してしまうと思いますので、今回は省略します。
決済の方法
先物取引は、「売買の約束をして、期日がきたら商品と引き換えにお金を払う」というものでしたよね。
しかし、株価指数のように「商品(実物)」が存在しないものもありますので、この場合は「差金決済」という方法で決済します。
例えば、日経225先物価格が21,000円のときに「買う約束」をするとします。
そして、約束した期日までに22,000円まで上がっていた場合、21,000円で商品を受け取る代わりに22,000円で商品を売ったことにして、差額の1,000円を得るという方法です。
※買ったものを売ること、空売りしたものを買い戻すことを「反対売買」と言います。
ただし、逆に先物価格が20,500円に下がっていた場合、差額の500円を払うことになります。
このように、「差金決済」という方法を使えば、実物が存在しない商品を取引することができますし、実物が存在する商品でも、商品を受け取らずに利益を得る(損失を払う)こともできるのです。
また、先物取引では、商品の種類ごとに決済期日が決まっています。
期日までに反対売買により決済しなかった場合は、決済期日の翌日に強制決済されてしまいますので、注意しましょう。
詳細は「SQとは?SQ前後の株価・チャートの値動きを利用した有効トレード法」で説明していますので、こちらも読んでみてください。
先物取引のメリットとデメリット
ここまで説明してきた内容を踏まえて、先物取引のメリット・デメリットや、先物取引と現物取引のどっちがいいのかなどを整理してみましょう。
先物取引のメリット
先物取引の主なメリットは次のとおりです。
- 少ない資金で取引が可能
- ロングとショートの両方のポジションを取ることができる
- 個別銘柄の選択が不要
などがあります。
1つ目は証拠金、2つ目はポジションの取り方のところで説明したとおりです。
3つ目の銘柄選択が不要というのは、先物取引の場合、最初に商品の種類を選択してしまえば、あとはその商品の値動きを見て取引するだけですので、現物取引や信用取引のように、毎回銘柄を選択する必要はありません。
また、株価指数というのは複数の銘柄の平均を算出しているため、1つの銘柄が何らかの理由で大きく動いたとしても影響は少ないので、銘柄ごとのニュースやファンダメンタルズなども気にしなくて良いというメリットもあります。
先物取引のデメリット
先物取引の主なデメリットは次のとおりです。
- 取引金額が大きいので、利益も大きいが損失も大きい
- 決済期日がある
- 追証が発生するリスクがある
などがあります。
1つ目は、資金(証拠金)に対する取引金額が日経225miniでも30倍ですので、その分、損失になってしまったときの金額も大きくなるのは想像できますよね?
資金管理について、よく理解していないまま取引を始めるのはとても危険ですので、きちんと理解できるまでは始めないようにしましょう。
2つ目は決済期日があるので長期投資ができないこと、3つ目は「株の信用取引で追証が発生した場合の対応と回避方法を伝授」で詳しく説明していますので、分からない人は、こちらを読んでみてください。
先物取引と現物取引どっちがいいの?
以上のように先物取引にはメリット・デメリットがありますが、現物取引にもメリット・デメリットはあります。
重要なのは、「自分にはどっちが合っているのか」ということですので、自分の資金量、知識や技術、投資目的などから、「自分にはこっちが合っているな」「自分にはこっちが向いているかも」というものを選べば良いと思います。
あるいは、目的に合わせて両方を使い分ける(リスクヘッジなど)ということもできます。
くれぐれも、内容をよく理解せずに「なんとなく」や「初心者向きだと言われているから」などという理由で安易に始めないように注意しましょう。
先物取引でおすすめの証券会社
それでは、実際に先物取引ができる証券会社と取扱銘柄(商品)をいくつか紹介したいと思います。
証券会社によって、取扱銘柄や手数料、証拠金の額などが異なりますが、一番の基準としては「手数料の安さ」が挙げられます。
その他にも、「ツールの使いやすさ」や「すでに口座を開いている」などで選んでも問題ありませんので、自分に合った証券会社を探してみましょう。
松井証券
日経225先物、日経225mini、TOPIX先物、ミニTOPIX先物、マザーズ指数先物、JPX400先物、NYダウ先物
ライブスター証券
日経225先物、日経225mini
GMOクリック証券
日経225先物、ミニ日経225先物
SBI証券
日経225先物、ミニ日経225先物、日経平均VI先物、TOPIX先物、ミニTOPIX先物、東証マザーズ指数先物、TOPIX core30先物、東証REIT指数先物、NYダウ先物、FTSE中国50先物、台湾加権指数先物、JPX日経400先物
マネックス証券
日経225先物、日経225ミニ、JPX日経インデックス400先物
日産証券
日経225先物、日経225mini、TOPIX先物、ミニTOPIX先物、JPX日経インデックス400先物
立花証券
日経225先物、日経225mini
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「株価指数先物」の説明が中心になってしまった部分もありますが、商品先物をイメージしていて「期日がきたら商品(現物)を受け取る」と思っていた人にとっては、少し混乱してしまったかもしれません。
ですが、基本的に投資目的で取引をする場合は、現物を受け取るということはほとんどありませんので、「差金決済で利益を得る」という意味では、株価指数先物も商品先物も変わりありません。
「差金決済」については、あらためて別の記事で詳しく説明したいと思いますが、まずは、先物取引は、「少ない資金」で「空売り」もできて「現物取引のリスクヘッジ」もできるということを覚えておくと良いでしょう。
紫垣 英昭
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