紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
今回は、「市場の環境確認」について解説していきたいと思います。
短期売買の場合、市場の環境確認というのは必須のスキルになります。
このスキルは、短期売買に限らずデイトレや長期投資でも必要になるのですが、特に短期売買においては必要不可欠と言えるでしょう。
環境確認の方法は多岐に渡って項目がありますが、今回は、一般投資家でも最低限やっておくことについてお話をしていきたいと思います。
※この動画は過去に撮影した動画を再編集したものです。
- 株式市場の環境確認を行う必要性がわかる
- 株式市場の環境確認を行う方法がわかる
- 株式市場の4つのサイクルがわかる
なぜ、市場の環境確認が必要なのか
まずは、「市場の環境確認とはどういうことか」というお話から始めていきましょう。
市場の環境確認とは、やろうとしている短期売買において有利にゲームを運べるか確認することです。
地ならしの様な感覚で、エントリー前に行っていきましょう。
なぜ、市場の環境確認が必要なのか。理由は、以下の2つに集約されています。
- 自分のポジションを有利にするため
- ムダな損失をしないため
市場の環境確認をやらないとどうなってしまうでしょうか。
例えば、「手を出してはいけない時に手を出してしまい、翌日、株価の急落により一気に含み損が広がる」ということが起きます。
おそらく、こうした損失を抱えてしまう方は沢山いらっしゃるのではないでしょうか。
「ムダな損失を出さないために市場の環境確認が必要」この認識を、ぜひ持っていただきたいと思います。
市場の環境確認を行う方法
市場の環境確認をする方法は色々あるので、以下の4つに集約して解説していきます。
- 「景気」と「株価」の関係を見る
- 4つのサイクルを把握する
- 「金利」と「株価」の関係を見る
- 「為替」と「株価」の関係を見る
「景気」と「株価」の関係を見る
新聞やテレビといったメディアの論調、あるいは書籍など、一般的には、景気が良くなったら株価が上がったという認識をする方が多いと思います。
確かに、これは間違いではないのですが、実は「正解か」と言われるとそうでもないのです。
株価は、「将来を織り込みながら動く」とよく言われているのですが、結局、株価が上がり始める時というのは「景気が良くなることを見越して買いが入る」いわゆる空売りの買い戻しから株価は上がっていきます。
したがって、株価というのは、その時々に応じた局面というのがあると言えるでしょう。
例えば、2012年の秋からの上昇。「自民党が政権を握るであろう」ということで、今後「為替が円安政策に移ると予測される」ことから、為替を大量に円買いドル売りしていた投機筋が一気に買い戻しを行いました。
それと比例する様に、株式市場でもそれが交換される形になり、先物や個別株を空売りしていたところが一気にポジションを転換しました。つまり、ショートカバーをしてきたということです。
それで、急激に株価に勢いがつきました。
ここのロジックを、ぜひ皆さんに覚えておいていただいたいと思います。
株式市場が動く主要なきっかけは「為替」「金利」「業績」。この3つが代表的なものとして挙げられるでしょう。
現在、日本の株式市場は、ほとんど為替市場とミラー相場になっています。
つまり、「円が売られれば株価が上がっていく」ということです。
非常に相関性が高いマーケットになっていると言えるでしょう。
株式市場に存在する4つのサイクルを把握しよう
株式市場には、4つの相場サイクルが存在します。
まさに、2012年の暮れに起こった相場の局面は「金融相場」になります。
実際、安倍政権がまだ誕生する前、民主党が政権下にあった時、自民党はどういうことを言っていたでしょうか。
「自民党が仮に政権を握れば、経済のテコ入れをいの一番にやっていきます」と言っていました。
つまり、「大規模な金融緩和を日本としてやる」ということです。
政府と日銀が一体となり、大規模な金融緩和をやるということは、言い換えれば、ドル高/円安という方向に持っていくということ。
当然、円が市場に大量放出されるので、需給的にも円の供給が多くなり円売り素材になります。
日米の金利差も日本の方が高かったので、それも1つの円買い要因になったでしょう。
大きく金融緩和をすることによって、実質金利の差がより縮まると言われています。つまり、円が売られる方向に実質金利を持っていくことが出来る訳です。
それが、マーケットの環境に現れてきたと言えるでしょう。
金融相場の時は、企業の業績はまだ悪い状態です。
金融相場によって株価が上昇、金利や業績が低下しているところが株価が上がることによって企業の業績が上向いてくる訳です。
「景気を織り込む」とは、まさに業績相場の話からスタートします。
企業業績が上がれば、株価は上がります。
ただし、上がりっぱなしの相場はありません。一旦上がりきった相場は、そこからまた逆金融相場という形で動きます。
今回、例に挙げた2012年の金融緩和の際は、アメリカの方が米国の金融緩和出口論を論じています。
景気が良くなったら中央銀行は何をするでしょうか。今度は、景気を冷やす方向に金融政策を持っていきます。
好景気が続いてしまうと、日本のバブルの様に超インフレになってしまうためです。
中央銀行が景気を冷やす政策を打ってくると相場は冷やされる。相場が冷やされると景気もマイナスになっていく。そして、企業の業績も一旦調整に向かっていく。というサイクルができます。
「金融相場、業績相場、逆金融相場、逆業績相場のサイクルが行われている」ということを、しっかりとポイントとして抑えておきましょう。
「金利」と「株価」の関係を見る
まず、基本的な考え方として、政策金利を下げるというのは株価上昇の要因になるということです。
当然の話ですが、今は日本もアメリカもほぼゼロ金利の状況なので、金利の上げ下げはしません。
ただ、金利の調節ができない代わりに金融緩和という手段を使っています。輪転印刷機で札を刷り、市場に放出するということをやっています。
- 金融緩和で政策金利を下げる。
- 金利が下がるとそれだけ借入金利、いわゆる安いコストで借金できる。
- 借金したお金はリスクマネーの方に行って、そこから資産インフレを起こす。
- インフレが起きれば、今度は政策金利を上げていくという手段になる。
- 金利が上がれば、それだけ調達コストは高くなる。
調達コストが高くなればなるほど資産運用を回すのは不利になっていくので、それだけ高いパフォーマンスが必要になってくるでしょう。
こうして景気を調節していきます。
それでは、今の日本はどういう状況でしょうか。
今の日本の政策金利は0.1%です。10年物の国債は、今0.7%〜0.8%くらいですが非常に金利は安いです。まだまだ、国内景気はデフレ脱却までいっていません。
現在、日本の中央銀行は何をしているかというと、どんどん日本円を輪転機で刷って、長期国債や資産を中央銀行が買い入れている。つまり、買い入れることでマネーを循環させようとしているのです。
その対策が少し効いてきている、それが今の日本の現状という訳です。
「為替」と「株価」の関係を見る
為替と株価の関係も見てみましょう。
基本的なロジックとしては、ドル安/円高になると株安になり、ドル高/円安になると株高になります。この2つの関係は、非常に相関性が高いのです。
こうした動きになるのは、日本の基幹産業は輸出産業が多いことが1つの大きな要因と考えられます。
輸出産業ということは、当然、円安の方が良い訳です。
実際、ドル円レートというのは、大体100円前後くらいにありますよね。
2012年の暮れは、1ドル約80円。かなりドルが上昇し、円が下がりました。それを交換して株高になっているということです。
まずは、この辺の仕組みをしっかり抑えておきましょう。
これは、普段ニュースでも言われているので、皆さんもお分かりだと思います。
まとめ
今回は、短期売買の必須スキル、市場の環境確認について解説致しました。
お話したのは、最低限押さえておくべき項目です。どこか1点が抜けてしまったりしないよう、しっかり基礎を抑えておきましょう。
紫垣 英昭
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