エネルギー価格高騰で省エネ関連銘柄がアツい!省エネ技術に定評のある銘柄とは!?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

ウクライナ情勢を背景に、石油や石炭、LNG(液化天然ガス)といったエネルギー価格の急騰が続いており、マーケットでは省エネ関連銘柄が注目される展開になってきそうです。

日本のエネルギー構成比率は石油・石炭・LNGで9割弱を占めていることから、これらのエネルギー価格が上昇すると、日本経済に打撃となることが懸念されています。

今回は、省エネ関連銘柄の概要やウクライナ情勢を受けたエネルギー価格動向について解説した上で、代表的な省エネ関連銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 省エネ関連銘柄の概要やウクライナ情勢を受けたエネルギー価格動向についてわかる
  • 代表的な省エネ関連銘柄についてチャート付きでわかる
  • エネルギー価格が高止まりすることになった場合について考えることができるようになる

省エネ関連銘柄とは?

エネルギー価格の上昇で注目される省エネ関連銘柄について押さえておきましょう。

省エネ関連銘柄の概要

省エネ関連銘柄とは、エネルギーを効率的に使用する省エネ技術に強みを持つ銘柄のことです。

省エネは、エネルギー資源の大半を輸入に頼る日本にとっては国家的課題となっており、近年は地球温暖化対策やSDGs(持続可能な開発目標)においても注目されています。

トヨタのハイブリッドカーに代表されるように、省エネ技術は世界に通用する日本企業の強みです。

日本経済や日本企業が省エネに強くなった背景には、1970年代のオイルショックがあります。

1970年代の2度のオイルショックを契機に、製造業を中心に省エネルギー化が進められ、省エネルギー型製品の開発が盛んになりました。

その結果、日本企業は省エネ技術に強くなり、日本経済はエネルギー消費を抑制しながら経済成長できる体質となりました。

日本の最終エネルギー消費と実質GDPの推移

※出典:資源エネルギー庁

日本経済は「失われた20年」とも呼ばれる衰退が指摘されていますが、省エネという観点で見ると依然として世界トップクラスとなっています。

次のグラフは、1単位の国内総生産(GDP)を産出するために必要なエネルギー消費量の国別推移チャートです。

実質GDP当たりのエネルギー消費の主要国・地域比較

※出典:資源エネルギー庁

日本は世界トップクラスにエネルギー消費量が低く、世界平均やOECD平均よりも効率的にエネルギーを使っていることが分かります。

省エネ関連銘柄はエネルギー価格の上昇で注目されるテーマ株

省エネ関連銘柄は、原油(石油)や石炭、天然ガス(LNG)といったエネルギー価格の上昇局面において注目される特徴があります。

また、省エネというと省エネ家電やハイブリッドカーのような家電製品が連想されやすいですが、資源エネルギー庁の「エネルギー白書2020」によると、日本のエネルギー消費割合において家庭部門は14.0%に過ぎません。

日本のエネルギー消費割合(2018年)は、産業部門46.6%、運輸部門23.4%、家庭部門14.0%、業務他部門16.1%となっています。

日本のエネルギー消費割合

※出典:資源エネルギー庁

つまり、省エネ技術は、工場やオフィスなどの産業部門においてより重要になってくるということです。

企業にとって、省エネを推進する最大の目的はエネルギーコスト削減にあります。

さらに近年では、脱炭素などの環境保護への取り組みを積極推進することがグローバル企業としては欠かせなくなってきています。

2010年代には、福島第一原発事故はあったものの、オイルショックのようなエネルギー価格の上昇は特に懸念されることもなかったため、省エネ関連銘柄に大きなスポットが当たることはありませんでした。

しかし、脱炭素やウクライナ情勢でエネルギー価格が揺れている2020年代には、省エネ関連銘柄に大きなスポットが当たっていくことも考えられます。

ウクライナ情勢を背景にエネルギー価格は上昇している

エネルギー価格は、2020年秋の世界的な脱炭素ムーブメント以降に上昇しており、2022年ウクライナ情勢を受けて一段高となっています。

日本のエネルギーは石油・石炭・LNGが9割弱を占める

日本は、1970年代のオイルショックを教訓に、省エネ技術の推進や脱石油を進めてきましたが、エネルギーを化石燃料に頼っている構図は変わっていません。

日本の一次エネルギー供給構成の推移

※出典:資源エネルギー庁

 

2018年における日本のエネルギー構成は、石油37.6%、石炭25.1%、LNG(液化天然ガス)22.9%となっており、化石燃料依存度は85.5%となっています。

2011年の福島第一原発事故以降は原発が止まっていることもあり、化石燃料依存度は東日本大震災前の81.2%から上がっている状況です。

太陽光やバイオマス、風力といった再生可能エネルギーの割合も増加してきてはいるものの、まだ10%程度に過ぎず、気候によって電力量が左右されるというエネルギー安全保障上におけるリスクもあります。

脱炭素を進める取り組みが官民一体となって始まっていますが、化石燃料依存度をいきなり大きく減らすことは現実的ではなく、省エネ技術をよりいっそう推進していくことが求められてきます。

石油・石炭・LNG(天然ガス)価格はウクライナ情勢で急騰

日本のエネルギーを大きく占める石油・石炭・LNG(天然ガス)価格は、2020年秋の脱炭素以降に大きく反発しており、2022年ウクライナ情勢を受けて一段高となっている状況です。

世界の原油価格として注目される、WTI原油先物価格の長期チャートは次のようになっています。

WTI原油先物価格の月足チャート

WTI原油価格は、2020年コロナショックでは一段安となりましたが、新型コロナからの世界経済回復や脱炭素による過少投資懸念により反発しており、2022年にはロシア・ウクライナ情勢で一段高となっています。

直近では、2022年3月8日に付けた130ドル/バレルからは一服したものの、ウクライナ情勢が長引くことになれば、さらなる高止まりも懸念される状況です。

原油価格と同様に石炭価格も上昇を続けています。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の石炭先物価格のチャートは次のようになっています。

石炭先物価格の月足チャート

石炭価格は、化石燃料価格の高騰で後進国を中心に石炭需要が高まったことを受けて、最高値を更新し続ける展開となっています。

2022年3月中旬以降は一服して320ドル前後となっていますが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて一時は430ドルを付けました。

最後に、ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の天然ガス先物価格を見てみましょう。

なお、日本が海外から輸入しているLNG(液化天然ガス)の価格は、天然ガス価格にタンカーによる輸送価格などを加えた価格となります。

天然ガス先物価格の月足チャート

天然ガス価格も、原油・石炭と同様に直近で上昇していることが分かります。

ウクライナ情勢を受けて、原油(石油)・石炭・天然ガス(LNG)の価格はいずれも高騰していることから、日本でもエネルギーコストの上昇は避けられず、省エネ技術の重要性がより高まってくる状況です。

マーケットでは、エネルギー価格の上昇を受けて資源株が大きく買われる展開となっていますが、省エネ関連銘柄にも大きな注目が集まってきてもおかしくありません。

省エネ関連銘柄10選!

エネルギー価格の高騰で注目されそうな省エネ関連銘柄を見ていきましょう。

【1711】SDSホールディングス(旧・省電舎ホールディングス)

省エネ事業の草分け的企業として知られる【1711】SDSホールディングスは、代表的な省エネ関連銘柄です。

同社は、1986年の設立以来、ESCO(エネルギー削減保証)事業を手掛けており、近年は太陽光やバイオマスプラントといった再生可能エネルギー事業に注力していることで知られています。

なお、同社は2021年8月1日に「省電舎ホールディングス」から「SDSホールディングス」に商号変更しました。

【1711】SDSホールディングスの月足チャート

SDSホールディングスの株価は、長期的には厳しい値動きとなっていますが、2022年に入ってからは上昇しています。

【3150】グリムス

「省エネ・創エネ・蓄エネ」を手掛けるエネルギーソリューションカンパニーの【3150】グリムスは、代表的な省エネ関連銘柄です。

同社は、電力料金削減コンサルティングや住宅用太陽光発電システム、LED照明の販売、電力の小売事業などを手掛けていることで知られています。

【3150】グリムスの月足チャート

グリムスの株価は、2021年9~10月に高値を付けてからは下落していますが、長期的には上昇トレンドの成長株であることが分かります。

【4169】ENECHANGE

消費者向けに電力・ガスの切り替えを行うプラットフォーム「エネチェンジ」を手掛ける【4169】ENECHANGEは、新興の省エネ関連銘柄として注目の銘柄です。

同社は、エネルギーをデジタルトランスフォーメーション(DX)するエネルギーデータ事業にも力を入れています。

【4169】ENECHANGEの月足チャート

ENECHANGEの株価は、2020年12月の上場後は大きく上昇しましたが、直近では大きく暴落しています。

【5074】テスホールディングス

再生可能エネルギー企業の【5074】テスホールディングスは、省エネ関連銘柄としても注目の銘柄です。

同社は、「再生可能エネルギーの主力電源化」「省エネルギーの徹底」「エネルギーのスマート化」の3事業に注力しているエネルギー企業です。

新興のエネルギー企業でありながら、2021年4月に東証一部に上場しています。

【5074】テスホールディングスの月足チャート

テスホールディングスの株価は、2021年11月に高値を付けて以降は大きく下げています。

【9514】エフオン

省エネルギー支援サービス事業や木質バイオマス発電を手掛ける【9514】エフオンは、代表的なバイオマス発電関連銘柄であり、省エネ関連銘柄としても注目される銘柄です。

【9514】エフオンの月足チャート

エフオンの株価は、2020年秋にはバイオマス発電が脱炭素で注目されたこともあり大きく買われましたが、2021年1月に高値を付けて以降は下落が続いています。

【1407】ウエストホールディングス

メガソーラー事業者の【1407】ウエストホールディングスは、代表的な太陽光発電関連銘柄としてマーケットで注目されており、省エネ事業を手掛ける省エネ関連銘柄でもあります。

同社は、初期コストゼロの省エネコンサルティング事業「ウエストエスコ」を手掛けています。

【1407】ウエストホールディングスの月足チャート

ウエストホールディングスの株価は、成長を続けるメガソーラー株として買われており、株価は右肩上がりの上昇となっています。

【1945】東京エネシス

再生可能エネルギー設備などの発電所関連設備エンジニアリングを手掛ける【1945】東京エネシスは、省エネ関連銘柄にも位置付けられる銘柄です。

同社は、省エネルギー・省コスト化・低炭素化の要求に対して、最適な機器・システムの提案から施工まで対応するエネルギーソリューション事業も手掛けています。

【1945】東京エネシスの月足チャート

東京エネシスの株価は、長期的には横ばいが続いています。

【6617】東光高岳

東電系の電力機器メーカー【6617】東光高岳は、スマートメーターや省エネ事業、再生可能エネルギー事業を手掛ける省エネ関連銘柄です。

同社は、EV用急速充電器なども手掛けていることから、EV(電気自動車)関連で注目される銘柄でもあります。

【6617】東光高岳の月足チャート

東光高岳の株価は、世界的な脱炭素やEVシフトの流れとなった2020年末に大きく買われましたが、2021年以降は調整局面となっています。

【1969】高砂熱学工業

空調工事トップの【1969】高砂熱学工業は、近年は環境ソリューションや省エネに力を入れており、省エネ関連銘柄に位置付けられる銘柄となっています。

同社は省エネサービス事業として、建物の中央監視装置にある運用データを収集・分析し、最適な省エネルギー運転を実現するデータ収集・分析ツール「GODAクラウド」に力を入れています。

【1969】高砂熱学工業の月足チャート

高砂熱学工業の株価は、長期的には横ばいとなっていますが、エネルギー価格が上がり始めた2020年末から2021年に掛けては上昇しました。

【6845】アズビル

制御・自動化機器メーカーの【6845】アズビルは、エネルギー管理分野に強みを持つ省エネ関連銘柄です。

同社は、ビルや建物、工場・プラント向けに省エネソリューションを提供しています。

【6845】アズビルの月足チャート

アズビルの株価は、長期に渡って上昇を続けていることが分かります。

まとめ

今回は、省エネ関連銘柄の概要やウクライナ情勢を受けたエネルギー価格動向について解説した上で、代表的な省エネ関連銘柄についてチャート付きで紹介してきました。

ウクライナ情勢を受けて、日本がエネルギー源として依存している石油・石炭・LNG価格は大きく上昇しており、省エネ技術の重要性が認識される流れができています。

エネルギー価格の急騰を受けて、石油・石炭・LNGを手掛ける資源株は大きな値上がりとなっている一方で、3月中旬時点では省エネ関連銘柄はそこまで大きく買われてはいない状況です。

ただ、ウクライナ情勢は長期化が懸念されており、エネルギー価格が高止まりすることになれば、省エネ関連銘柄が物色される展開になってもおかしくはありません。

紫垣 英昭