紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
世界最大の投資家ウォーレン・バフェット氏は、日本の5大商社株(伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事)に投資していることで知られています。
2023年4月11日、バフェット氏は日本経済新聞の単独インタビューに応じ、日本株に「追加投資を検討したい」と述べ、5大商社株の保有比率を高めたことも明かしました。
世界最大の投資会社バークシャー・ハサウェイの筆頭株主であるバフェット氏の動向には、世界中の投資家やファンドが注目しており、海外資金が日本株に流入してくる可能性も考えられます。
今回は、ウォーレン・バフェット氏が投資するバフェット銘柄や、バフェット氏が日本株について「追加投資を検討したい」と述べたニュースについて解説し、バフェット氏が次に買う銘柄の候補についても検証していきます。
- ウォーレン・バフェット氏が投資するバフェット銘柄についてわかる
- バフェット氏が日本株について「追加投資を検討したい」と述べたニュースについてわかる
- バフェット氏が次に買う銘柄の候補についても検証することができる
バフェット銘柄とは
世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏と、バフェット氏が投資しているバフェット銘柄について押さえておきましょう。
世界一の投資家「ウォーレン・バフェット氏」
ウォーレン・バフェット氏は、米国を代表する投資家で、世界最大の投資家の一人として知られています。
ウォーレン・バフェット氏が筆頭株主であるバークシャー・ハサウェイは、世界最大の投資持株会社です。
バフェット氏は、その卓越した投資手法から「オマハの賢人」とも称されています。
バフェット氏の投資手法は、長期投資を基本スタイルとしており、投資条件としては「事業の内容を理解できる」「長期的に業績が良いことが予想される」「経営者に能力がある」「魅力的な価格である」といったことが特徴です。
また、バフェット氏はハイテク株などの新規業界よりも既存業界を好む傾向があり、分散投資ではなく集中投資を手掛けるなど、独特の投資スタイルでも知られています。
バフェット氏がバークシャー・ハサウェイの経営権を握ってから2015年までの約50年間で、「S&P500指数」の上昇率が約14,000%(約140倍)だったのに対し、バークシャー・ハサウェイの株価は約200万%(20,000倍)という異次元の上昇となりました。
【BRK-B】バークシャー・ハサウェイはニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しており、その時価総額はGAFAM(Google、Amazon、Facebook(Meta)、Apple、Microsoft)やTesla、NVIDIAに匹敵し、2023年3月末時点ではTeslaより高い世界7位となっています。
また、バフェット氏は、基本的にお金を使わない質素倹約の生活を続けていることでも知られており、コカ・コーラやマクドナルドが好物であることも広く知られているエピソードです。
バフェット氏は日本の5大商社株に投資している
バフェット氏は、2020年8月にかけて、日本の5大商社株(【8001】伊藤忠商事、【8002】丸紅、【8058】三菱商事、【8031】三井物産、【8053】住友商事)の発行済み株式の5%超を取得したと発表して大きな話題となりました。
2022年秋には、5大商社株の保有比率をそれぞれ6%台まで高めたことを公表しています。
日本株におけるバフェット銘柄は、5大商社株を指すと言えます。
5大商社株は、バフェット氏が投資した2020年8月以降も上昇し続けています。
【8001】伊藤忠商事の月足チャート
【8058】三菱商事の月足チャート
特に、2022年にはウクライナ情勢による資源高が好感されたこともあり、多くのセクターが売られた一方で5大商社株は大きく買われました。
バフェット氏は日本株の「追加投資を検討したい」と述べた
バフェット氏は2023年4月に来日し、自身が出資する超硬工具メーカーのタンガロイや商社を訪問しました。
また、日本経済新聞の単独インタビューに応じ、今後の日本株への投資姿勢についても語りました。
バフェット氏は日本株に強気の姿勢
バフェット氏は、2023年4月11日付けの日本経済新聞の単独インタビューの中で、日本株に「追加投資を検討したい」と、日本株に強気な見方を強調しました。
※出典:日本経済新聞「「バフェット氏が買う銘柄は」 商社の次探る市場」
また、5大商社株の保有比率を7.4%にまで高めたいとも発言。
日本株については、「今は5大商社の株しか持っていないが、次の投資先は常に頭の中にある。価格次第だ」と、割安感が強まったら追加投資に踏み切る考えを明らかにしています。
また、日本の5大商社株への投資は、「バークシャーが持つ米国以外での最大の投資」に拡大したと明らかにし、保有について「とても誇りに思っている」と強調しました。
日本の5大商社株に投資した理由としては、「バークシャーと(事業が)非常に似ている」と、事業の内容を理解できる点を強調し、「世界の事情にも精通している」点も評価しました。
日本株の割安感が評価される可能性も
世界最大の投資会社バークシャー・ハサウェイの筆頭株主であるバフェット氏の動向には、世界中の投資家やファンドが注目しています。
今回、バフェット氏が日本株への追加投資を発表したことを受けて、海外資金が日本株に流入してくる可能性があります。
特に、外国人投資家から見たドル建てベースの日本株は割安になっている点は注目されるかもしれません。
2022年には、米国利上げやウクライナ情勢の資源高による貿易赤字の拡大などを受けて、急激な円安ドル高が進みました。
日本株は円建てベースの価格表示であるため、円安になれば、外国人投資家から見て日本株が割安になります。
次のチャートは、外国人投資家から見た、ドル建ての日経平均株価の月足チャートです。
※※※(図解イメージ):ドル建ての日経平均株価(NI225/USDJPY)円インデックスの月足チャート
円建てで見た日経平均株価は、2021年から2023年に掛けて26,000円から30,000円のレンジで横ばいとなっていますが、ドル建てで見ると大きく下落していることが分かります。
2022年10月には一時1ドル=150円台を付けていた急激な円安は、米国の物価高が一服し、日銀が円高介入したことなどもあり、2023年4月時点では130円台まで戻ってきています。
ただ、ドル建てベースで見た日経平均株価は、新型コロナ相場で大きく上げた分をほとんど吐き出してしまった形となっており、外国人投資家から見たら割安で買われる展開もあり得る情勢です。
バフェット氏が日本の5大商社に投資する理由
バフェット氏が日本の5大商社株に投資した理由としては、「長期的に業績が良い」「株価が割安となっている」「配当利回りが高い」「総合商社は日本独自の事業形態である」といった要素が背景にあるためと推測されています。
ここで、5大商社株について、PER(連結)・PBR(連結)・配当利回りを見てみましょう。
銘柄 |
PER(連結) |
PBR(連結) |
配当利回り |
【8001】伊藤忠商事 |
8.1倍 |
1.38倍 |
3.10% |
【8002】丸紅 |
6.2倍 |
1.20倍 |
4.00% |
【8058】三菱商事 |
6.2倍 |
0.91倍 |
3.56% |
【8031】三井物産 |
6.0倍 |
1.06倍 |
3.15% |
【8053】住友商事 |
5.5倍 |
0.82倍 |
4.66% |
(参考)東証プライム市場の平均 |
14.8倍 |
1.2倍 |
2.19% |
※5大商社株のPER(連結)・PBR(連結)・配当利回りの値は2023年4月19日終値時点の値。
※東証プライム市場のPER(連結)・PBR(連結)平均:日本取引所「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧」の2023年3月分のデータより
※東証プライム市場の配当利回りの平均:日本取引所「その他統計資料」の2023年3月分のデータより
PERの平均については業種間で差があるため単純に全市場平均と比較することはできないものの、5大商社株のPERは6~8倍と、市場平均の半分程度で割安となっていることが分かります。
5大商社株は長期チャートで見ると株価上昇し続けていますが、業績も成長しているため、PERという点で見れば割安となっていると言えます。
また、PBRで見ると、5大商社株は、ほぼ東証プライム市場の平均~平均弱程度です。
配当利回りで見ても、商社株は高配当株の代表的セクターとなっており、いずれの銘柄も配当利回り3%を超える高配当銘柄となっています。
バフェット氏が次に買う銘柄の候補と特徴
バフェット氏が次に買う銘柄の候補について、バフェット氏が好みそうな銘柄の特徴などから探っていきましょう。
大手エネルギー株:高配当、低PER・PBR
バフェット氏が好みそうな、高配当かつ低PER・PBRの銘柄としては、大手エネルギー株が挙げられます。
日本株の代表的なエネルギー株としては、石油元売り大手の【5020】ENEOSホールディングス、資源開発大手の【1605】INPEX、石油元売り大手の【5019】出光興産が挙げられます。
上記3社のPER(連結)・PBR(連結)・配当利回りは次の通りです。
銘柄 |
PER(連結) |
PBR(連結) |
配当利回り |
【5020】ENEOSホールディングス |
10.2倍 |
0.51倍 |
4.61% |
【1605】INPEX |
7.1倍 |
0.51倍 |
4.30% |
【5019】出光興産 |
3.7倍 |
0.50倍 |
4.22% |
(参考)【8058】三菱商事 |
6.2倍 |
0.91倍 |
3.56% |
※いずれの値も2023年4月19日終値時点の値。
大手のエネルギー株3銘柄の、PER・PBR・配当利回りの数値は、5大商社株と遜色なく、ウクライナ情勢や脱炭素による資源高がプラスに働きインフレに強い点もメリットです。
メガバンク(大手銀行株):高配当、低PER・PBR
同じく、5大商社株のように高配当で低PER・PBRのセクターとしては、メガバンク(大手銀行株)が挙げられます。
代表的な大手銀行株としては、メガバンクの【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループ、【8316】三井住友フィナンシャルグループ、【8411】みずほフィナンシャルグループ、日本最大の預金金融機関である【7182】ゆうちょ銀行、地銀大手の【8308】りそなホールディングスなどがあります。
上記5社のPER(連結)・PBR(連結)・配当利回りは次の通りです。
銘柄 |
PER(連結) |
PBR(連結) |
配当利回り |
【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループ |
10.6倍 |
0.64倍 |
3.59% |
【8316】三井住友フィナンシャルグループ |
9.9倍 |
0.62倍 |
4.02% |
【8411】みずほフィナンシャルグループ |
9.5倍 |
0.57倍 |
4.19% |
【7182】ゆうちょ銀行 |
12.7倍 |
0.44倍 |
4.50% |
【8308】りそなホールディングス |
10.6倍 |
0.66倍 |
3.10% |
(参考)【8058】三菱商事 |
6.2倍 |
0.91倍 |
3.56% |
※いずれの値も2023年4月19日終値時点の値。
大手銀行株は、低PER・PBRで、配当利回り3%を超える高配当銘柄であるため、高配当株投資では商社株と対にして語られることも少なくありません。
大型ハイテク株:事業が分かりやすい、参入障壁が高い、成長性
バフェット氏は、ハイテク株投資にはあまり手を出さないことで有名ですが、近年はハイテク株の高騰を受けて考えを改めており、Apple株に大きく投資するなどハイテク株投資も進めています。
「事業が分かりやすい」「参入障壁が高い」「成長性がある」があるといった観点で見ると、通信最大手の【9432】NTT、センサー大手で高収益性でも知られる【6861】キーエンス、世界的半導体製造装置企業の【8035】東京エレクトロンといった、大型ハイテク株も追加投資の対象に入ってくるかもしれません。
旅行関連銘柄(JR・航空大手):株価指標が弱い
バフェット氏は、割安に放置されている銘柄を長期投資で買って、大きな利益を出してきました。
新型コロナ禍で大きく売られたJRや航空大手といった大手の旅行関連銘柄は、割安で放置されています。
JR大手3社の【9020】JR東日本、【9021】JR西日本、【9022】JR東海、2大航空大手の【9202】ANAホールディングス、【9201】日本航空(JAL)のPER(連結)・PBR(連結)・配当利回りは次の通りです。
銘柄 |
PER(連結) |
PBR(連結) |
配当利回り |
【9020】JR東日本 |
48.1倍 |
1.17倍 |
1.30% |
【9021】JR西日本 |
24.3倍 |
1.37倍 |
1.70% |
【9022】JR東海 |
23.0倍 |
0.87倍 |
0.78% |
【9202】ANAホールディングス |
22.3倍 |
1.58% |
- |
【9201】日本航空(JAL) |
45.1倍 |
1.43倍 |
0.77% |
(参考)【8058】三菱商事 |
6.2倍 |
0.91倍 |
3.56% |
各社ともにPERは割高となっていますが、これは「1株あたり当期純利益」がまだ新型コロナの影響を受けた値となっているためで、決算においては各社ともに黒字転換を続々と発表しています。
また、JR3社については、総合商社のような「日本独自の企業」とも言えるでしょう。
まとめ
今回は、ウォーレン・バフェット氏が投資するバフェット銘柄や、バフェット氏が日本株の「追加投資を検討したい」と述べたニュースについて解説し、バフェット氏が次に買う銘柄の候補についても検証してきました。
バフェット氏は、日本の5大商社株(【8001】伊藤忠商事、【8002】丸紅、【8058】三菱商事、【8031】三井物産、【8053】住友商事)に投資していることで知られています。
2023年4月、バフェット氏は日本経済新聞の単独インタビューで、5大商社株を買い増しするとともに、日本株への追加投資も考えにあると発言しました。
バフェット氏が日本の5大商社株に投資した理由としては、「長期的に業績が良い」「株価が割安となっている」「配当利回りが高い」「日本独自の事業形態である」といった要素が背景にあるものと推測されています。
5大商社株に近い日本株としては、高配当かつ低PER・PBRの大手エネルギー株や大手銀行株、日本独自の技術を持った大型ハイテク株、割安になっている大手旅行株などが挙げられます。
今後のバフェット氏の動向については注視しておくようにしましょう。
紫垣 英昭
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