紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
日々株式投資と向き合っていると、日経平均株価や、個別銘柄が「年初来高値/安値を更新しました」といったニュースを耳にすることがあると思います。
年初来安値を更新した銘柄を見ると、株式投資初心者は特に「これ以上は落ちないだろう!」と思って安易に買ってしまいがち。
しかし、そこから何か月も株価が下がり続け、値が戻ってくるまでに何年もかかってしまうことも多々あります。
逆に、年初来高値を更新した銘柄は、「これ以上は行き過ぎだ!」と反応して、保有株を売ってしまったり、「ここが底値に違いない」と安易に空売りを仕掛けたりしてしまいがちです。
この場合も、その後の大きな上昇を逃したり、空売りしたのに値が上がり続け、大きな含み損を抱えるリスクがあります。
このような目に遭わないためには、目先の値動きに惑わされず、「年初来高値・安値を更新したということはどのようなことなのか」をきちんと理解した上で、場合に応じて上手に買いや空売りを使い分けていくことが大事です。
今回は、年初来高値・年初来安値とは何かと、年初来高値・年初来安値を更新した銘柄で株初心者が利益を出すためのポイント、活用法について解説していきます。
- 年初来高値・年初来安値とは何かがわかる
- 当日に年初来高値・年初来安値を更新した銘柄を調べる方法がわかる
- 年初来高値・年初来安値を更新した銘柄のトレード戦略の立てかたがわかる
年初来高値・年初来安値とは?
年初来高値とは今年の最高値の価格のことで、年初来安値とは今年の最安値の価格のことを指します。
ただし、年初来高値・年初来安値は、その年の時期によって計測時期が異なることに注意が必要です。
その年の1月1日から3月31日までは、前年1月1日からの最高値・最安値が年初来高値・年初来安値となります。
つまり、2020年1月1日から3月31日までは、2019年1月1日から現在までの期間での最高値・最安値が年初来高値・年初来安値になるということです。
その年の4月1日から12月31日までは、その年の1月1日からの最高値・最安値が年初来高値・年初来安値となります。
つまり、2020年4月1日から12月31日までは、2020年1月1日から現在までの期間の最高値・最安値が年初来高値・年初来安値になるということです。
年初来高値・年初来安値は、相場の勢いを示す指標として使われることも多々あります。
年初来安値を更新している銘柄が多いと相場全体が売られている弱気相場であると見ることができます。
逆に年初来高値を更新している銘柄が多いと相場全体が買われている強気相場であると見ることが可能です。
ただし、年初来安値を更新している銘柄があまりにも多くなっている場合、相場全体が売られ過ぎと判断できる場合もあります。
逆に年初来高値を更新している銘柄があまりにも多いと、相場全体が買われ過ぎと判断できる場合もあります。
状況に応じて、今どのような相場なのかを見極めていくことが必要です。
当日に年初来高値・年初来安値を更新した銘柄を調べる方法
年初来高値・年初来安値の見方がわかったところで、当日に、年初来高値・年初来安値を更新した銘柄を調べる方法を抑えておきましょう。
日本経済新聞のホームページから、リアルタイムに当日の年初来高値・年初来安値を更新した銘柄を調べることが可能です。
まず、日本経済新聞のホームページにアクセスして、上のタブから「マーケット」→「株式」をクリックします。次に左側の株式メニューの中から「新高値・新安値」をクリックすれば、その日に年初来高値・年初来安値を更新した銘柄が一覧で表示されます。
年初来安値を更新した銘柄のトレード戦略
年初来安値を更新した銘柄のトレード戦略と注意点について抑えておきましょう。
年初来安値銘柄を買う場合
年初来安値を更新した銘柄を買う場合について考えていきましょう。
株初心者の場合、年初来安値を更新した=「もう、これ以上は下がらないだろう。そろそろ反発するだろう」と思って安易に手を出してしまう人は少なくありません。しかし、年初来安値を更新してからも下げ止まらずに、大きく火傷してしまうケースは非常に多くなっています。
次のチャートは、東証一部を代表する半導体関連銘柄として知られるSUMCO(3436)の2018年の週足チャートとなります。
上図からも分かるように、年初来安値を5回更新してから、ようやく横ばいとなり、横ばいが10ヶ月ほど続いてから上昇に転じていることが分かるかと思います。
もしも年初来安値を始めて更新した2018年5月頃に安易に手を出していたら、株価が半値近くにまで下がっていたことになります。
年初来安値を更新した銘柄の反発を期待して買うこと自体は悪いトレード戦略ではありません。
しかし、多くの初心者が手掛ける逆張りは、手を出すタイミングが余りにも早過ぎるのです。
年初来安値を更新した銘柄を買う場合には、「さすがにこれ以上はもう下がらないだろう」という価格まで落ちてから手を出すことがおすすめです。
年初来安値銘柄を売る場合
年初来安値を更新した銘柄を売る(空売りする)場合は、買う場合とは逆に、いかに早く手を出すかがポイントになります。
年初来安値を更新した株を保有している投資家の気持ちに立って考えてみることが重要です。
もしも自分自身が保有している株が年初来安値を更新して下げ続けているとしたら、「早く売り抜けたい!」という感情になるのではないでしょうか?
このような投資家の感情が行動となり、実際の株価に形となって現れるため、年初来安値を更新している銘柄は無情にも下げ続けることが多くなります。
さきほどのSUMCO(3436)のチャートをもう一度見てみましょう。
年初来安値の更新は、買い保有している場合には傷が浅い内に売り抜けるサインに、空売りで入る場合にはエントリーサインになることがあります。
年初来安値を更新した銘柄を売るときは早めに手掛けることによって、損失を小さくすることができ、空売りする場合には大きな利益を取ることが可能となります。
ただし、「さすがにこれ以上はもう下がらないだろう」という価格まで落ちた銘柄を空売りする際には、大反発のリスクを避けるためにも、早めの損切りを徹底することがより必要になってくることは言うまでもありません。
年初来高値を更新した銘柄のトレード戦略と注意点
年初来高値を更新した銘柄のトレード戦略と注意点について抑えておきましょう。
年初来高値銘柄を買う場合
年初来高値を更新した銘柄を買うことは、代表的な順張り(トレンドフォロー)戦略です。外国人投資家に最も多いトレード戦略として知られています。
年初来高値を更新したということは、1年以内にその株を買った全ての投資家が含み益を抱えているということを意味します。
このような状況では、「もうそろそろ利食いしよう!」という売りは出るものの、損失への恐怖や不安に基づく感情的な売りが出ません。
一方で、「この株を買っておけば良かった!」という、買わなかったことによる後悔からの買いが入ることになります。
年初来高値を更新したということを需給状況で考えてみると、売りは少なくなる一方で、買いは多くなっていくことを意味します。
ここで、液晶や半導体の製造装置を手掛けているレーザーテック(6920)の2019年の週足チャートを見ていきましょう。
2019年8月に年初来高値を更新してから、ジワジワと買い続けられていることが分かるかと思います。
ただ、年初来高値の更新が余りにも長い期間に渡って続いており「さすがにもう上げ過ぎだろう」という状況では、高値掴みになることもあるため、安易に買うべきではありません。
買いと売りの需給状態が崩れることによって利食いの売りが殺到し、暴落の始まりになる可能性があるからです。
高値掴をしないためのコツや、年初来高値からの上昇銘柄を狙う方法については、以下の記事を参考にしてみてください。
カップウィズハンドルで新高値から株価2~3倍を狙う銘柄の探し方
年初来高値銘柄を売る場合
年初来高値を更新した銘柄を空売りする場合について考えてみましょう。これは日本の個人投資家に多い投資戦略となっています。
株の初心者は、年初来高値を更新した=「さすがにもうこれ以上は上げないだろう。天井だろう」と安易に考えてしまいがちです。
さて、さきほどのレーザーテック(6920)の株価チャートをもう一度見てみましょう。
年初来高値を更新してから空売りするとして、一体どこで利益が出せるでしょうか?
年初来高値を更新し続けている銘柄は、空売りでは利益の出しようがほとんどありません。
もちろん、永遠に年初来高値を更新し続けられる銘柄は存在せず、どのような銘柄もいつかは下落に転じます。
ただ、そのタイミングが年初来高値を更新したタイミングと重なることは、ほとんどありません。
年初来高値を更新してから2~3倍、下手をすれば5倍以上になってからようやく下落に転じるケースもあります。
年初来高値を更新した銘柄を空売りして、その後に暴落が始まれば、大きな利益を上げられることは確かです。
空売りについては、以下の記事で詳しく解説しています。
年初来高値を更新したあとに暴落が始まるケースも
次のチャートは、年初来高値を更新してから暴落が始まったケースです。
SUMCO(3436)
年初来高値を更新した銘柄を空売りすること自体は悪いトレード戦略ではありません。
問題なのは、年初来高値を更新したからといって、安易に空売りしてしまうことです。
年初来高値を更新した銘柄を空売りするにしても、株高が長い期間に渡って続いており「さすがにもう上げ過ぎだろう」という状況になるまで引き付けてから空売りすることが重要です。
また、年初来高値の更新が止まらずに踏み上げられる場合に備えて、損切り戦略が必要になることは言うまでもありません。
逆張りはリスクがあることを認識した上で行うようにしましょう。
逆張りについては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
今回は、年初来高値・年初来安値を更新した銘柄のトレード戦略と注意点について解説してきました。
株の初心者に多いのは、年初来安値を更新した銘柄を安易に買い、年初来高値を更新した銘柄を安易に空売りしてしまうというものです。
このような逆張り自体は悪くはありませんが、「さすがに、もうこれ以上は下げないだろう」「もうこれ以上は買われないだろう」という価格まで十分に引き付けてから逆張りすることが重要です。
年初来高値を更新した銘柄を買う、年初来安値を更新した銘柄を空売りするという順張り(トレンドフォロー)は、日本の個人投資家はあまり多用しませんが、初心者にはこちらの方がおすすめです。
ただ、年初来高値・年初来安値を更新していたとしても、いつまでそのトレンドが続き、いつトレンドが変わるのかは事前には分かりません。リスク管理・損切りを徹底することが重要です。
年初来高値・年初来安値を使ったトレード戦略と注意点を抑えて、自身のトレード戦略に役立てていきましょう!
紫垣 英昭
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